9 / 29
序章
8話 梨月ちゃんは言いました「お兄ちゃんのバカ……っ」と
しおりを挟む
【今回の学習】
やっぱり兄妹っていいよね
—————————————————————
翌日の夕方。
俺は今、妹の梨月の前で正座をしている。
「………」
見上げると、梨月は頬を膨らませ、怒っている様子だ。
昨日、梨月は友達の家に泊まっていたらしく帰って来なかった。
母さんがサプライズとして俺が帰ってきたことを梨月に知らせていなかったので、リビングで梨月に会ったところ、無言の圧で正座を促され今の状況に至る。
「………」
相変わらず何も発さず、ただ俺を見下ろしている。
梨月も大きくなったなぁ……。
灰みがかった青緑色のポニーテールに俺と同じ青色の瞳。
そして、昔から付けている黒のうさ耳シュシュ。
これは確か、小さい頃に誕生日プレゼントとして渡したものだ。未だに大切にしてくれてるなんてありがたい。
「お兄ちゃん、聞いてるんですか?」
「待て。お前、何も言ってなかっただろ?」
さっきから黙って見下ろしていただけじゃないか。
「お前じゃない。梨月」
「はい、梨月さん……」
「………」
「梨月……」
5年も会わない間にこんなにも成長してるなんてなぁ……。
昔は「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と言って、後をついてきたものだ。
すると、梨月は「はぁ……」とため息をつき、ようやく話し始めた。
「……この5年間、連絡もよこさないで」
うっ……
「家族が大変な時に、1人だけ安全なところに居て」
うっ……
「お兄ちゃんは私たち家族のことが嫌いなんですか?」
「いえ、大好きです」
母さんも梨月も大好きです。
俺が即答したのがよほど嬉しかったのか、「そ、そうですか……えへへ」と顔を赤らめて喜んでいる。
可愛い妹だな。
「こほっん……。とにかく、本当に心配したんですよ?お兄ちゃんが突然、おじいちゃんの家で修行するって出発したすぐ後に、男性がいなくなる事件が多発して……」
「もしかしたら、お兄ちゃんもいなくなってるんじゃないかと思って……っ」
段々と梨月の声が震えてきた。
「毎日、毎日不安で……。このうさ耳のシュシュをギュッと握りしめて祈ることしかできなくて……」
そこまで言うと、梨月は口を閉ざした。
「本当にすまなかったと思っている」
俺は床に頭をつけ、精一杯の謝罪をする。正座だけじゃ足りない。
「う、うぅ……お兄ちゃんのバカ……っ」
バカと言われても仕方ない。連絡を取れば、すぐに駆けつけることだってできたのに……。
「……顔を上げて下さい」
顔をあげると、涙をいっぱい溜めている梨月の姿があった。
溢れる涙を拭い、気持ちを落ち着かせている。
「ギュッと抱きしめてください」
「……正座しなくていい?」
「……やっぱりしててください。私が上に乗るので」
そう言い、俺の膝の上に座って、首に手をまわしてギュッと抱きついてきた。
「お母さんがいない時、家でいつも1人でした……」
俺の首元にうずくまり、震える声でそう言われる。
梨月がこんなにも泣くなんて……よっぽど寂しかったんだろうな。
「梨月、安心しろ。お兄ちゃんはもう、何処にも行かないから」
そう言い、サラサラの髪を優しく撫でる。
すると、首元でうずくまっている梨月がピクッと動いた。
「ほんと……ですか?」
「ああ。家に帰っても絶対いるし、これからご飯も一緒に食べれる」
俺は自分の事にいっぱいになり過ぎて大切な妹との時間を過ごせてなかった。
これからは兄妹の時間をたくさん作らないとな。
「構ってくれないと私、寂しくて死んじゃいますからね?」
「それは困るな。じゃあ毎日構ってあげないとな」
笑いかけると梨月は最高に可愛い笑顔を返してくれた。
「今日は添い寝してくれないと許さないですからね?」
首をコテンと傾げて言う姿は、自分の妹ながらに可愛いと思えてしまう。
「おうよ。毎日でもしてやる」
「ふふっ、じゃあ毎日お願いします」
ギューと俺に抱きつき、上機嫌になった梨月。
やっぱり兄妹っていいよな……。
やっぱり兄妹っていいよね
—————————————————————
翌日の夕方。
俺は今、妹の梨月の前で正座をしている。
「………」
見上げると、梨月は頬を膨らませ、怒っている様子だ。
昨日、梨月は友達の家に泊まっていたらしく帰って来なかった。
母さんがサプライズとして俺が帰ってきたことを梨月に知らせていなかったので、リビングで梨月に会ったところ、無言の圧で正座を促され今の状況に至る。
「………」
相変わらず何も発さず、ただ俺を見下ろしている。
梨月も大きくなったなぁ……。
灰みがかった青緑色のポニーテールに俺と同じ青色の瞳。
そして、昔から付けている黒のうさ耳シュシュ。
これは確か、小さい頃に誕生日プレゼントとして渡したものだ。未だに大切にしてくれてるなんてありがたい。
「お兄ちゃん、聞いてるんですか?」
「待て。お前、何も言ってなかっただろ?」
さっきから黙って見下ろしていただけじゃないか。
「お前じゃない。梨月」
「はい、梨月さん……」
「………」
「梨月……」
5年も会わない間にこんなにも成長してるなんてなぁ……。
昔は「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と言って、後をついてきたものだ。
すると、梨月は「はぁ……」とため息をつき、ようやく話し始めた。
「……この5年間、連絡もよこさないで」
うっ……
「家族が大変な時に、1人だけ安全なところに居て」
うっ……
「お兄ちゃんは私たち家族のことが嫌いなんですか?」
「いえ、大好きです」
母さんも梨月も大好きです。
俺が即答したのがよほど嬉しかったのか、「そ、そうですか……えへへ」と顔を赤らめて喜んでいる。
可愛い妹だな。
「こほっん……。とにかく、本当に心配したんですよ?お兄ちゃんが突然、おじいちゃんの家で修行するって出発したすぐ後に、男性がいなくなる事件が多発して……」
「もしかしたら、お兄ちゃんもいなくなってるんじゃないかと思って……っ」
段々と梨月の声が震えてきた。
「毎日、毎日不安で……。このうさ耳のシュシュをギュッと握りしめて祈ることしかできなくて……」
そこまで言うと、梨月は口を閉ざした。
「本当にすまなかったと思っている」
俺は床に頭をつけ、精一杯の謝罪をする。正座だけじゃ足りない。
「う、うぅ……お兄ちゃんのバカ……っ」
バカと言われても仕方ない。連絡を取れば、すぐに駆けつけることだってできたのに……。
「……顔を上げて下さい」
顔をあげると、涙をいっぱい溜めている梨月の姿があった。
溢れる涙を拭い、気持ちを落ち着かせている。
「ギュッと抱きしめてください」
「……正座しなくていい?」
「……やっぱりしててください。私が上に乗るので」
そう言い、俺の膝の上に座って、首に手をまわしてギュッと抱きついてきた。
「お母さんがいない時、家でいつも1人でした……」
俺の首元にうずくまり、震える声でそう言われる。
梨月がこんなにも泣くなんて……よっぽど寂しかったんだろうな。
「梨月、安心しろ。お兄ちゃんはもう、何処にも行かないから」
そう言い、サラサラの髪を優しく撫でる。
すると、首元でうずくまっている梨月がピクッと動いた。
「ほんと……ですか?」
「ああ。家に帰っても絶対いるし、これからご飯も一緒に食べれる」
俺は自分の事にいっぱいになり過ぎて大切な妹との時間を過ごせてなかった。
これからは兄妹の時間をたくさん作らないとな。
「構ってくれないと私、寂しくて死んじゃいますからね?」
「それは困るな。じゃあ毎日構ってあげないとな」
笑いかけると梨月は最高に可愛い笑顔を返してくれた。
「今日は添い寝してくれないと許さないですからね?」
首をコテンと傾げて言う姿は、自分の妹ながらに可愛いと思えてしまう。
「おうよ。毎日でもしてやる」
「ふふっ、じゃあ毎日お願いします」
ギューと俺に抱きつき、上機嫌になった梨月。
やっぱり兄妹っていいよな……。
11
お気に入りに追加
251
あなたにおすすめの小説
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る
イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。
《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。
彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。
だが、彼が次に目覚めた時。
そこは十三歳の自分だった。
処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。
これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。
男がほとんどいない世界に転生したんですけど…………どうすればいいですか?
かえるの歌🐸
恋愛
部活帰りに事故で死んでしまった主人公。
主人公は神様に転生させてもらうことになった。そして転生してみたらなんとそこは男が1度は想像したことがあるだろう圧倒的ハーレムな世界だった。
ここでの男女比は狂っている。
そんなおかしな世界で主人公は部活のやりすぎでしていなかった青春をこの世界でしていこうと決意する。次々に現れるヒロイン達や怪しい人、頭のおかしい人など色んな人達に主人公は振り回させながらも純粋に恋を楽しんだり、学校生活を楽しんでいく。
この話はその転生した世界で主人公がどう生きていくかのお話です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この作品はカクヨムや小説家になろうで連載している物の改訂版です。
投稿は書き終わったらすぐに投稿するので不定期です。
必ず1週間に1回は投稿したいとは思ってはいます。
1話約3000文字以上くらいで書いています。
誤字脱字や表現が子供っぽいことが多々あると思います。それでも良ければ読んでくださるとありがたいです。
チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています
もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。
使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる