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序章

5話 会って5秒で気が合う

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【今日の学習】
花咲家三姉妹
長女(異常) 次女(正常?) 三女(天使)
————————————————————
「なんでお、お、男が……」

 またもやこの反応。

 花咲家には三姉妹がいるらしい。
 そう伝えてくれた花織さんは母さんと一緒に夕食の買い物へと行った。

「あら、おかえり朱莉あかり。こちら、旦那様」

 どうやら花咲家の人間はこのワードだけで察するらしい。旦那様はもう無視している。

「八神碧月です」

「やがみ、あつき?……あつき…あつき……って、あぁ!アツか!」

 俺を指差しそう叫ぶ女の子。
 どうやらこの子とも面識があるようだ。全く覚えていないが。

「朱莉、旦那様は記憶喪失なの」

「えっ、嘘っ!?」

「嘘ですよ!?桜果さん、嘘をつかないでください!」

 全く桜果さんは……。

「記憶喪失じゃなくて……えーと、えーと、時差ぼけ?」

「同じもんでしょ。アタシは朱莉あかり。呼び捨ていいから」

 容姿は柔らかみのある黄色のサイドテールに赤い瞳。美少女である。
 そして首にはシルバーのネックレスをしているが服の中に入っており、どんなデザインか分からない。
 そして朱莉さんの他にもう一人いた。

「うゆ?」

 首を傾げている可愛らしい女の子がいた。
 容姿は白銀のミニツインテールにエメラルドの瞳。向日葵をモチーフとしたピン留めをつけている。

「ああ、この子は向葵ひなた。小学1年生」

「ひなた、6歳なの~♪」

「ちなみに語尾にたまに『なの~♪』がつくのが特徴。どう?可愛いでしょ?」

「可愛い超えて最強」

 何その神オプ。ラブコメの幼女キャラかよ。

「初めてまして、俺は八神碧月だよ」

 向葵ちゃんの前にしゃがみ、視線を合わせる。

「やかみ、あつき?んー…?」

 悩んでいる様子の向葵ちゃんだったが、何かひらめたようだ。
 そして俺のところにトコトコと来て、服をクイクイと引っ張った。

「えーとね」

「ん?」

「にぃになのー♪」

 にぱーと笑うその笑顔に思わず頬のニヤニヤが止まらない。
 そして視線をずらして上で見守る朱莉にこう提案することにした。

「なぁ、妹くれよ」

「嫌」

 ですよねー。

「にぃに、ひなたねー」

「ん~?」

「しょうらいは、にぃにとけっこんするの~♪」

「うん、いいよ」

 もちろん即答でOK。
 こんな可愛い子と結婚できるんだ。将来は美少女確定だし、歳の差なんて関係なく付き合ってやる。

「あら、旦那様。私との約束はお忘れでして?」

「嘘です冗談ですごめんなさい」

 後ろからドス黒いオーラを放つ桜果さんの方にサッと身体を向け、頭を下げる。つまり土下座したのである。

 ん?よくよく考えれば約束なんてしたか?

 そんな俺を見てか朱莉は「これから賑やかになりそうだねー」と笑っていた。

「じゃあ今日の晩御飯は腕によりをかけないとねっ。ほら向葵、いくよ」

「ばいばい、にぃに~♪」

 朱莉に手を引かれ向葵ちゃんは行ってしまった。
 
 というか、朱莉がご飯を作るのか?

 ◆                    ◆                ◆

「か、か、か、格好良すぎるでしょ~~~!」

 部屋に戻った朱莉は床にヘタリと座るなり、両手で頬を覆い、興奮を抑えきれないでいた。

「アタシちゃんと喋れたかな?変じゃなかったかな?」

 首にかけているネックレスを取り出しながらそう呟く朱莉。

「アツから貰ったこのジャスミンのネックレス、大事にして良かった……」

 シルバーのジャスミンを見つめながらそう呟く朱莉。

 朱莉の莉とはジャスミンを意味する。このネックレスは幼少期に碧月があげた物たのだが、当の本人は覚えていない。

「アツ……アツ……アツ……」

 ネックレスを大事そうに抱きしめ、想い人の名前をひたすら連語する朱莉。

「アツの顔、アツの身体、アツの声、アツの香り、アツのアツのアツの…。ああ、アツの全部がすきぃ……♡。いっそのこと、食べちゃいたい♡もうアタシを食べてぇ……♡」
 
 もうお分かりだろう。
 花咲朱莉もまた、八神碧月のことか大大好きなのである。



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