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「今野さん、これお水。」
「あ~倉科さ~ん。どうしたんれすか?」
「今野さん、だいぶ酔ってるみたいだから、お水飲んで。あとちょっとでお店を出る時間だから、酔いを醒まさないと。」
「酔ってないれすよ~。コップはそこに置いといてくらさい。お手洗い行ってきます~。」
「あ、今野さんっ、一緒に行くから。」
私は慌ててコップをテーブルに置いて、周りのみんなに声をかけてから今野さんを追いかけてお手洗いに向かった。
今野さんは鏡の前に立っており、化粧直しをしながら鏡越しに私の方に視線をうつした。
「倉科さんもメイクですか?」
「いや、今野さんがもしトイレで倒れたら大変だと思って…。」
「倉科さん。言っておきますけど、この後片岡さんに送って貰う予定なんで、余計な事しないで下さいね。」
「え…?余計な事って?」
「ほら、例えば『私結構力あるから今野さんの事送って行きますよ。』とか言ったりして、片岡さんと帰るのを邪魔するとか?」
「でも、……」
反論しようとしたものの、今野さんの表情は素面としか思えない程、冷静そのものだった。
「もし邪魔するなら、私、倉科さんの事許さないですから。」
普段の今野さんと同じ人とは思えない位の鋭い目付きできっぱりと私にそう言うと、正面の鏡に視線を移して、メイク直しへと戻った。
「わかったわ。酔っていないなら安心したわ。先に席に戻るわね。」
「倉科さん?わかってると思うけど、私は今酔ってるから、片岡さんに送って貰うつもりですから。みんなに今野さんは酔ってなかったなんて言わないで下さいね。」
「…うん、わかってる。言わない。」
私に「もう行け」と言わんばかりに、顔でドアの方を指した。
そのままメイクを続けている今野さんを残して、私は席へと向かった。
(体調は戻ったけど、なんだかモヤモヤするなぁ。)
私は、ああ見えて片岡が優しい男だとわかっているので、今野さんの嘘の演技で家まで送らさせられるのを黙って見ているのは酷い事のように感じて、憂鬱になってきてしまった。
「あ~倉科さ~ん。どうしたんれすか?」
「今野さん、だいぶ酔ってるみたいだから、お水飲んで。あとちょっとでお店を出る時間だから、酔いを醒まさないと。」
「酔ってないれすよ~。コップはそこに置いといてくらさい。お手洗い行ってきます~。」
「あ、今野さんっ、一緒に行くから。」
私は慌ててコップをテーブルに置いて、周りのみんなに声をかけてから今野さんを追いかけてお手洗いに向かった。
今野さんは鏡の前に立っており、化粧直しをしながら鏡越しに私の方に視線をうつした。
「倉科さんもメイクですか?」
「いや、今野さんがもしトイレで倒れたら大変だと思って…。」
「倉科さん。言っておきますけど、この後片岡さんに送って貰う予定なんで、余計な事しないで下さいね。」
「え…?余計な事って?」
「ほら、例えば『私結構力あるから今野さんの事送って行きますよ。』とか言ったりして、片岡さんと帰るのを邪魔するとか?」
「でも、……」
反論しようとしたものの、今野さんの表情は素面としか思えない程、冷静そのものだった。
「もし邪魔するなら、私、倉科さんの事許さないですから。」
普段の今野さんと同じ人とは思えない位の鋭い目付きできっぱりと私にそう言うと、正面の鏡に視線を移して、メイク直しへと戻った。
「わかったわ。酔っていないなら安心したわ。先に席に戻るわね。」
「倉科さん?わかってると思うけど、私は今酔ってるから、片岡さんに送って貰うつもりですから。みんなに今野さんは酔ってなかったなんて言わないで下さいね。」
「…うん、わかってる。言わない。」
私に「もう行け」と言わんばかりに、顔でドアの方を指した。
そのままメイクを続けている今野さんを残して、私は席へと向かった。
(体調は戻ったけど、なんだかモヤモヤするなぁ。)
私は、ああ見えて片岡が優しい男だとわかっているので、今野さんの嘘の演技で家まで送らさせられるのを黙って見ているのは酷い事のように感じて、憂鬱になってきてしまった。
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