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19 建国祭の夜会
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王城へ続く馬車の列はゆっくりと進んで行く。建国祭にはお父様も合流し、家族4人で馬車に揺られていた。
着飾った私とローズの姿を見て、お父様もお母様も本当に喜んでくれた。プラチナムのご婦人が当日のヘアメイクもしてくださったのだ。靴も足にしっくりと馴染み、宝飾品は髪飾りから首飾り、耳飾りと、全てドレスに合わせて華々しくも、色合いが合っているのでしつこくない。
大輪の2つの華が咲いたようだと、お洒落に疎い私でも鏡に並んでうつった私とローズを見て感嘆したものだ。
レイは後で来ると言っていた。私たちは会場の前で姉妹2人で手を繋ぎ、お父様がお母様をエスコートした後ろから入場する。
話題のサリバン辺境伯家の登場に、会場の視線が一点に集まる。私とローズは顔を見合わせて微笑み合うと、お父様とお母様が階段を降りられた後、その姿を会場中に見せつけた。
大輪の百合の花である私と、大輪の薔薇であるローズ。私はどこまでも透き通るようでありながら、ローズはどこまでも華々しく。それでいて2人並べばお互いを高め合うような美しさだと、今日の仕上がりを見て思った。そして、会場のどこにも私とローズと同じデザインのドレスの方は見当たらない。
下手をしたら悪目立ちしかねないが、注がれているのは好奇心と称賛の視線だったように思う。
私たちは少し遅れて階段を降り、お父様とお母様と共に国王陛下たちの前へと挨拶をしに向かった。
「建国記念日、おめでとうございます陛下。近頃は我が家が色々と騒がせてしまい、申し訳ございませんでした」
跪き、お父様が代表して陛下に謝る。鈴を転がすように笑ったのは王妃様だった。
「サリバン辺境伯、過ちは誰にでもあります。ローズ? 貴女はとても美しいわ。そして、強くなった。もう騙されることは無いと信じていますよ」
「ご期待に添えるよう、恥ずかしくない淑女になります」
「よい、よい。……色事とは、男が己を律せねばならぬ事。そして女が、男を律する事。我も妻には頭が……」
「陛下?」
「オホン。……今日はひと騒動ある事は、モリガン侯爵から聞いている。それまでゆるりと過ごすように」
「ありがとうございます。それでは、失礼致します」
国王陛下も王妃様には頭が上がらないようだった。お母様はその場に椅子が用意され、皇太后様と王妃様と歓談に興じていらっしゃる。
お父様と一緒に会場へ降りた私とローズは、陛下の言うひと騒動が起こるまで、お父様の側でお酒と料理を楽しみながらその時を待っていた。すべての貴族が揃うまでダンスの時間は始まらないが、早くも私たちに踊りを申し込みたさそうな人たちがさりげなく近づいてきていた。
ローズの悪評は、一先ずの封じ込めに成功しているようである。何よりこのドレスだ。私たちを引き立てながらも下手な男は近寄って来れない。プラチナムの腕は一流の域を超えている。ご婦人が言っていた通り、ドレスが私たちを守ってくれているのを感じる。
やがてすべての貴族諸侯が揃い、陛下が建国祭の始まりを宣言した。
「おやおや、サリバン辺境伯殿ではありませんか。よくまぁこんな華々しい席に顔を出せたものですね」
ねっとりと絡みつくような嫌味を言ってきたのは、隣の領……サリバン辺境伯領によって隣国から守られた大穀倉地帯を持つ、ラトビア侯爵だった。
着飾った私とローズの姿を見て、お父様もお母様も本当に喜んでくれた。プラチナムのご婦人が当日のヘアメイクもしてくださったのだ。靴も足にしっくりと馴染み、宝飾品は髪飾りから首飾り、耳飾りと、全てドレスに合わせて華々しくも、色合いが合っているのでしつこくない。
大輪の2つの華が咲いたようだと、お洒落に疎い私でも鏡に並んでうつった私とローズを見て感嘆したものだ。
レイは後で来ると言っていた。私たちは会場の前で姉妹2人で手を繋ぎ、お父様がお母様をエスコートした後ろから入場する。
話題のサリバン辺境伯家の登場に、会場の視線が一点に集まる。私とローズは顔を見合わせて微笑み合うと、お父様とお母様が階段を降りられた後、その姿を会場中に見せつけた。
大輪の百合の花である私と、大輪の薔薇であるローズ。私はどこまでも透き通るようでありながら、ローズはどこまでも華々しく。それでいて2人並べばお互いを高め合うような美しさだと、今日の仕上がりを見て思った。そして、会場のどこにも私とローズと同じデザインのドレスの方は見当たらない。
下手をしたら悪目立ちしかねないが、注がれているのは好奇心と称賛の視線だったように思う。
私たちは少し遅れて階段を降り、お父様とお母様と共に国王陛下たちの前へと挨拶をしに向かった。
「建国記念日、おめでとうございます陛下。近頃は我が家が色々と騒がせてしまい、申し訳ございませんでした」
跪き、お父様が代表して陛下に謝る。鈴を転がすように笑ったのは王妃様だった。
「サリバン辺境伯、過ちは誰にでもあります。ローズ? 貴女はとても美しいわ。そして、強くなった。もう騙されることは無いと信じていますよ」
「ご期待に添えるよう、恥ずかしくない淑女になります」
「よい、よい。……色事とは、男が己を律せねばならぬ事。そして女が、男を律する事。我も妻には頭が……」
「陛下?」
「オホン。……今日はひと騒動ある事は、モリガン侯爵から聞いている。それまでゆるりと過ごすように」
「ありがとうございます。それでは、失礼致します」
国王陛下も王妃様には頭が上がらないようだった。お母様はその場に椅子が用意され、皇太后様と王妃様と歓談に興じていらっしゃる。
お父様と一緒に会場へ降りた私とローズは、陛下の言うひと騒動が起こるまで、お父様の側でお酒と料理を楽しみながらその時を待っていた。すべての貴族が揃うまでダンスの時間は始まらないが、早くも私たちに踊りを申し込みたさそうな人たちがさりげなく近づいてきていた。
ローズの悪評は、一先ずの封じ込めに成功しているようである。何よりこのドレスだ。私たちを引き立てながらも下手な男は近寄って来れない。プラチナムの腕は一流の域を超えている。ご婦人が言っていた通り、ドレスが私たちを守ってくれているのを感じる。
やがてすべての貴族諸侯が揃い、陛下が建国祭の始まりを宣言した。
「おやおや、サリバン辺境伯殿ではありませんか。よくまぁこんな華々しい席に顔を出せたものですね」
ねっとりと絡みつくような嫌味を言ってきたのは、隣の領……サリバン辺境伯領によって隣国から守られた大穀倉地帯を持つ、ラトビア侯爵だった。
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