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第一章
旧敵から始まる非日常
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次の日の朝、シノがカメラと手紙を置いておいた場所には現像した写真が置いてあった。
「龍一くん!ちゃんと読んでくれましたか!?」
シノはまだ寝ている龍一に飛びかかる。
「いってぇ!何すんだてめぇ!」
「現像したってことはちゃんと手紙にも気づいてくれたんですよね!?」
「はぁ?手紙?何のことだよ。」
「あれー、おかしいですねー。ちゃんとカメラと一緒に置いておいたんですけどね…」
「カメラはパソコンのところに置いてあるからちゃんと持っていけよ。」
龍一はそう言って部屋を出た。
「見てください!昨日私が自分で撮ったんですよ!なかなか綺麗じゃないですか!?」
「おーすごいねー。僕も写真はよくわかんないけど綺麗だと思うよー。」
学校では京一郎がシノに写真について感想を述べさせられていた。
「よぉー。お前ら朝から仲いいなー。」
ガムをくちゃくちゃ噛みながら金髪ピアスの男が3人のもとへやってくる。
「何しにきたんだよ、横井。」
シノは龍一が自分には一度も見せたことのない表情をしているのに気づいた。
(あの人は誰ですか?)
胸騒ぎがして京一郎に耳打ちしてみる。
(あいつは横井 彰。見たまんまのやつだよ。)
(でも加藤くんも見た目チャラチャラしてますよ?龍一くんと仲いいじゃないですか。)
(加藤はただのバカだけどあいつはそんなんじゃないんだよ。昔ちょっと龍一といろいろあってね。)
その一方で、龍一と横井の間には険悪なムードが漂っている。
「何しにもなにも、遊びに来ただけじゃねえかよ。わりぃか?」
「俺のとこに遊びに来たなんてよく言えるな。早くどっかいけよ。」
「俺は京一郎くんのとこに遊びに来たのー。ねー、京一郎くん?」
「…もうすぐ授業が始まりますよ。早く帰ったらどうですか?」
「へいへい。シスコンとクソ真面目の近くになんかいたくねぇよ。こっちから願い下げだわ。」
そう言うと横井はまた別のクラスメイトのところにちょっかいをかけにいった。
「あいつ他のクラスのくせにわざわざここまで来やがって…」
「龍一くん、あの人と何があったんですか?」
「別に何もねぇよ。」
結局京一郎も口を閉ざしてしまったため、シノはそれ以上何もわからなかった。
昼休みになり、3人は屋上のハゲのところに来ていた。
「よぉハゲ、昨日の今日でなんだが、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ。」
「誰がハゲだ!」
怒鳴りながらも中空に姿が現れる。
「私にはちゃんとアルベルト=ルクサールという名があるのだぞ!」
「はいはいわかったよ。で、聞きたいことっていうのはだな…」
「小僧!ちゃんと話を聞かんか!いいか、私の生まれたルクサール家はそれはそれは古い歴史があってな…」
シノは《インベントリ》から剣を取り出すとアルベルトの首筋に突きつける。
「もう長話は結構ですから私達の質問に答えてくれません?」
はい、とおとなしくなったアルベルトに龍一が質問する。
「お前ここで悪さしてたよな?他にも罪人が流されてきたりしてるのか?」
「あーいくつか噂を聞いた事があるぞ。えーっと、何だったかな…」
シノが思い出さないと首をはねるぞと言わんばかりに剣を傾ける。
「わー!落ち着け!そうだ!正門の真正面に像があるだろ!?初代校長とかいう人物の。その辺りで私と同じ質の気配を感じたからきっと何かいるぞ。」
「情報提供ありがとさん。」
「んじゃ、また加藤に聞きに行くか。」
「そうだね。その手の話に詳しい知り合いなんて他にいないし。」
噂をすればなんとやら、ちょうどよく加藤が通りかかる。
「おい加藤、ちょっと聞きたいことがあるんだけど今いいか?」
「おーいいぞ。なんだ?」
「実は正門のところにある初代校長の像のところに幽霊が出るって噂を聞いてな。お前何か知ってることないか?」
「お!それならついこの間聞いたぞ。あー名前なんだったかな、うちのクラスの学級委員長。そいつが話してるのが聞こえてきてな。その幽霊の話をしてたぞ。」
「まじか!サンキュー。」
「また幽霊退治か?」
「まぁそんなところだ。じゃあ3組の学級委員長に話聞いてくるわ。」
そんなわけでやって来たのは2年3組。写真部部長の飯星もこのクラスだったので、呼んでもらうことにした。
飯星と一緒にやってきたのは少し気の強そうな、髪を長く伸ばした女の子だった。
「あなた達が幽霊を探してる人達?」
「ああ。詳しいことを知ってるなら教えてほしいんだ。」
「別にいいけど、なんでそんなもの聞きたいの?」
この返答で3人は言葉に詰まってしまう。そこで機転を利かせたのは意外なことにシノだった。
「実は私達写真部で、今回の特集として学校にまつわる噂を調べようと思いまして。」
「あら、あなた達そんな面白そうなこと調べることにしたの?写真、期待してるわね。」
飯星の変な期待を背負ってしまった龍一とシノだがそのおかげで納得した学級委員長は話し出す。
「そういうことなら教えてあげるわ。そうね、私が見たのは3月の半ば、終業式の前くらいだったわね。部活が終わって帰ろうと思ったんだけど、その日に限ってみんな用事があるらしくて私一人で帰ることになったの。で、正門を出ようとした時、何かに肩を叩かれてね、振り向いたら若い男の人が立ってたの。でもその人、胸には矢が何本も突き刺さってて、とても生きてられるような状態じゃなかったわ。」
「部活終わりってことは7時くらいだよな。で、叩かれた後何かあったのか?」
「バレー部は片付けもあるから7時半は過ぎてたと思うわ。それで振り返ったらそんなのがいたから怖くて声も出せなくて… でもその幽霊が言ってきたのは(君一人?暇ならぼくと遊ばない?)っていうナンパみたいなやつで。なんか一気に怖くなくなっちゃったから一発殴って逃げてきたの。」
その話が終わった時、飯星を含めた4人はなんとも言えないビミョーな表情をしていた。
「龍一くん!ちゃんと読んでくれましたか!?」
シノはまだ寝ている龍一に飛びかかる。
「いってぇ!何すんだてめぇ!」
「現像したってことはちゃんと手紙にも気づいてくれたんですよね!?」
「はぁ?手紙?何のことだよ。」
「あれー、おかしいですねー。ちゃんとカメラと一緒に置いておいたんですけどね…」
「カメラはパソコンのところに置いてあるからちゃんと持っていけよ。」
龍一はそう言って部屋を出た。
「見てください!昨日私が自分で撮ったんですよ!なかなか綺麗じゃないですか!?」
「おーすごいねー。僕も写真はよくわかんないけど綺麗だと思うよー。」
学校では京一郎がシノに写真について感想を述べさせられていた。
「よぉー。お前ら朝から仲いいなー。」
ガムをくちゃくちゃ噛みながら金髪ピアスの男が3人のもとへやってくる。
「何しにきたんだよ、横井。」
シノは龍一が自分には一度も見せたことのない表情をしているのに気づいた。
(あの人は誰ですか?)
胸騒ぎがして京一郎に耳打ちしてみる。
(あいつは横井 彰。見たまんまのやつだよ。)
(でも加藤くんも見た目チャラチャラしてますよ?龍一くんと仲いいじゃないですか。)
(加藤はただのバカだけどあいつはそんなんじゃないんだよ。昔ちょっと龍一といろいろあってね。)
その一方で、龍一と横井の間には険悪なムードが漂っている。
「何しにもなにも、遊びに来ただけじゃねえかよ。わりぃか?」
「俺のとこに遊びに来たなんてよく言えるな。早くどっかいけよ。」
「俺は京一郎くんのとこに遊びに来たのー。ねー、京一郎くん?」
「…もうすぐ授業が始まりますよ。早く帰ったらどうですか?」
「へいへい。シスコンとクソ真面目の近くになんかいたくねぇよ。こっちから願い下げだわ。」
そう言うと横井はまた別のクラスメイトのところにちょっかいをかけにいった。
「あいつ他のクラスのくせにわざわざここまで来やがって…」
「龍一くん、あの人と何があったんですか?」
「別に何もねぇよ。」
結局京一郎も口を閉ざしてしまったため、シノはそれ以上何もわからなかった。
昼休みになり、3人は屋上のハゲのところに来ていた。
「よぉハゲ、昨日の今日でなんだが、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ。」
「誰がハゲだ!」
怒鳴りながらも中空に姿が現れる。
「私にはちゃんとアルベルト=ルクサールという名があるのだぞ!」
「はいはいわかったよ。で、聞きたいことっていうのはだな…」
「小僧!ちゃんと話を聞かんか!いいか、私の生まれたルクサール家はそれはそれは古い歴史があってな…」
シノは《インベントリ》から剣を取り出すとアルベルトの首筋に突きつける。
「もう長話は結構ですから私達の質問に答えてくれません?」
はい、とおとなしくなったアルベルトに龍一が質問する。
「お前ここで悪さしてたよな?他にも罪人が流されてきたりしてるのか?」
「あーいくつか噂を聞いた事があるぞ。えーっと、何だったかな…」
シノが思い出さないと首をはねるぞと言わんばかりに剣を傾ける。
「わー!落ち着け!そうだ!正門の真正面に像があるだろ!?初代校長とかいう人物の。その辺りで私と同じ質の気配を感じたからきっと何かいるぞ。」
「情報提供ありがとさん。」
「んじゃ、また加藤に聞きに行くか。」
「そうだね。その手の話に詳しい知り合いなんて他にいないし。」
噂をすればなんとやら、ちょうどよく加藤が通りかかる。
「おい加藤、ちょっと聞きたいことがあるんだけど今いいか?」
「おーいいぞ。なんだ?」
「実は正門のところにある初代校長の像のところに幽霊が出るって噂を聞いてな。お前何か知ってることないか?」
「お!それならついこの間聞いたぞ。あー名前なんだったかな、うちのクラスの学級委員長。そいつが話してるのが聞こえてきてな。その幽霊の話をしてたぞ。」
「まじか!サンキュー。」
「また幽霊退治か?」
「まぁそんなところだ。じゃあ3組の学級委員長に話聞いてくるわ。」
そんなわけでやって来たのは2年3組。写真部部長の飯星もこのクラスだったので、呼んでもらうことにした。
飯星と一緒にやってきたのは少し気の強そうな、髪を長く伸ばした女の子だった。
「あなた達が幽霊を探してる人達?」
「ああ。詳しいことを知ってるなら教えてほしいんだ。」
「別にいいけど、なんでそんなもの聞きたいの?」
この返答で3人は言葉に詰まってしまう。そこで機転を利かせたのは意外なことにシノだった。
「実は私達写真部で、今回の特集として学校にまつわる噂を調べようと思いまして。」
「あら、あなた達そんな面白そうなこと調べることにしたの?写真、期待してるわね。」
飯星の変な期待を背負ってしまった龍一とシノだがそのおかげで納得した学級委員長は話し出す。
「そういうことなら教えてあげるわ。そうね、私が見たのは3月の半ば、終業式の前くらいだったわね。部活が終わって帰ろうと思ったんだけど、その日に限ってみんな用事があるらしくて私一人で帰ることになったの。で、正門を出ようとした時、何かに肩を叩かれてね、振り向いたら若い男の人が立ってたの。でもその人、胸には矢が何本も突き刺さってて、とても生きてられるような状態じゃなかったわ。」
「部活終わりってことは7時くらいだよな。で、叩かれた後何かあったのか?」
「バレー部は片付けもあるから7時半は過ぎてたと思うわ。それで振り返ったらそんなのがいたから怖くて声も出せなくて… でもその幽霊が言ってきたのは(君一人?暇ならぼくと遊ばない?)っていうナンパみたいなやつで。なんか一気に怖くなくなっちゃったから一発殴って逃げてきたの。」
その話が終わった時、飯星を含めた4人はなんとも言えないビミョーな表情をしていた。
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