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第一章
兄妹から始まる非日常
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カランと乾いた音を立てて剣が床に落ちる。
「は………?どういう意味なんですか…?」
「どうもこうもないわよ。あなたは来る世界を間違えたのよ。何が原因かはわからないけど。」
「つまり… えっと… 魔王がいるのはこの世界じゃないってことですか?」
「ピンポーン。そんな世界で魔王討伐とか自慢げに話してるあなたはどう見られてたでしょうか?そう、ただの変人です。」
シノは驚きのあまり口を大きく開けて固まっている。それを見た神はやれやれといった感じでため息をつく。
「だから言ってたんだよ、魔王なんていないって。まぁ…その…なんだ、ドンマイ。」
「そうだ!今すぐに私を本来行くはずだった世界に送ってください!まだ間に合いますよね?」
「えっと… もう代わりの勇者を送っちゃったわ。あなたの妹ね。」
「じゃあ私はこの先どうすればいいんですか!勇者になって村中がお祝いしてくれたのに!何も果たさないで帰れるわけないじゃないですか!」
号泣しながらわめく彼女の姿はまるで子供のようだ。
「そこでひとつ提案があるのです。シノにはこのままこの世界に残ってもらって別なお仕事をしてもらう。あなた達2人はそうね… こっちの世界を代表した監視役ってところね。」
「えっ!! 俺達まで巻き込まれんの? あんたらの事情なのに?やだよそんなの。」
「僕は別にいいですよ。その監視役として何をすればいいんですか?」
「シノから聞いたでしょう?いろいろと特殊能力があるって。それらはちょっと便利なものから人間程度ならあっという間に消し飛ばすものまであるわ。」
「そんなのを監視するとかマジでやなんだけど。何回死ねばいいんだよ。」
「お願いします龍一くん!私だって戻れないんですよ!ここは人助けだと思って、ね!? 私に出来ることなら何でもしてあげますよ?」
「チェンジで。」
「なんでそういうこと言うんですかー!!」
「まぁ神からの直々の命令だし拒否権はないと思いなさい?いざという時のために私と直接つながるホットライン用意してあげるから。」
「ところで、そもそもシノさんはこの世界で何をすればいいんですか?戦争でも解決しに行くんですか?」
そう、そのセリフを待ってましたとばかりに神はこほんと咳払いをする。
「勇者シノよ。汝にはこれより我への信仰心の欠片である御霊をあちゅめ…集めてもらう。」
「噛むな、三文芝居にもほどがあるぞ神のくせに。」
「うるさいわね!まぁ、とにかくシノには私への信仰を集めてもらうわ。要するに新興宗教の開祖ね。私こっちじゃ全く知られてないから。」
「でも信仰なんてどうやれば… それにそんな目に見えないもの集めてどう証明すればいいんでしょうか。」
「そこでこの手袋の出番よ!私への信仰心に満ち溢れた人間をこの手袋を着けた手で触れればその信仰心を具現化することが出来るわ!まぁノルマは私の独断と偏見で決まるんだけどね。」
「つまり私はこっちの世界に無期限流刑なわけですね。よーく理解しました。」
「こんな危ないのにずっと居座られても困る。クーリングオフ制度はないのか。」
「はいはいごちゃごちゃ言わないの。あ、そういえばシノは今日泊まる家も無いんだったわね。んーっと、じゃあそこの…龍一君だっけ?あなたの双子の妹っていう設定にするから仲良くしてあげてね。学校にも通ってることにするわ。」
「おいちょっと待て。そんなの認めないしそもそも無理がありすぎるだろ。」
「私だってこんな人でなしの妹なんて嫌ですよ。せめて姉がいいです。」
「あなた達の好みなんて知ったこっちゃないわ。それに私を誰だと思ってるわけ?都合のいいように現実を書き換えておくわ。それで行きましょ!けってーい!」
神がそう言い終わると、急にあたりが騒がしくなる。人々が動いている。時間停止が解けたようだ。
「おい!まだ解くな…っていねぇし。」
そこにはもう神の姿はない。
「これで君たちは兄妹になったわけだね。退屈な日常も終わりそうだよ。」
「お前他人事みたいに言ってんじゃねぇぞ?監視役の仕事全部お前に丸投げしてやる。」
「私はいったいどうなるのでしょうか…」
シノの嘆きは人々の話し声に掻き消えるほどかぼそかった。
「は………?どういう意味なんですか…?」
「どうもこうもないわよ。あなたは来る世界を間違えたのよ。何が原因かはわからないけど。」
「つまり… えっと… 魔王がいるのはこの世界じゃないってことですか?」
「ピンポーン。そんな世界で魔王討伐とか自慢げに話してるあなたはどう見られてたでしょうか?そう、ただの変人です。」
シノは驚きのあまり口を大きく開けて固まっている。それを見た神はやれやれといった感じでため息をつく。
「だから言ってたんだよ、魔王なんていないって。まぁ…その…なんだ、ドンマイ。」
「そうだ!今すぐに私を本来行くはずだった世界に送ってください!まだ間に合いますよね?」
「えっと… もう代わりの勇者を送っちゃったわ。あなたの妹ね。」
「じゃあ私はこの先どうすればいいんですか!勇者になって村中がお祝いしてくれたのに!何も果たさないで帰れるわけないじゃないですか!」
号泣しながらわめく彼女の姿はまるで子供のようだ。
「そこでひとつ提案があるのです。シノにはこのままこの世界に残ってもらって別なお仕事をしてもらう。あなた達2人はそうね… こっちの世界を代表した監視役ってところね。」
「えっ!! 俺達まで巻き込まれんの? あんたらの事情なのに?やだよそんなの。」
「僕は別にいいですよ。その監視役として何をすればいいんですか?」
「シノから聞いたでしょう?いろいろと特殊能力があるって。それらはちょっと便利なものから人間程度ならあっという間に消し飛ばすものまであるわ。」
「そんなのを監視するとかマジでやなんだけど。何回死ねばいいんだよ。」
「お願いします龍一くん!私だって戻れないんですよ!ここは人助けだと思って、ね!? 私に出来ることなら何でもしてあげますよ?」
「チェンジで。」
「なんでそういうこと言うんですかー!!」
「まぁ神からの直々の命令だし拒否権はないと思いなさい?いざという時のために私と直接つながるホットライン用意してあげるから。」
「ところで、そもそもシノさんはこの世界で何をすればいいんですか?戦争でも解決しに行くんですか?」
そう、そのセリフを待ってましたとばかりに神はこほんと咳払いをする。
「勇者シノよ。汝にはこれより我への信仰心の欠片である御霊をあちゅめ…集めてもらう。」
「噛むな、三文芝居にもほどがあるぞ神のくせに。」
「うるさいわね!まぁ、とにかくシノには私への信仰を集めてもらうわ。要するに新興宗教の開祖ね。私こっちじゃ全く知られてないから。」
「でも信仰なんてどうやれば… それにそんな目に見えないもの集めてどう証明すればいいんでしょうか。」
「そこでこの手袋の出番よ!私への信仰心に満ち溢れた人間をこの手袋を着けた手で触れればその信仰心を具現化することが出来るわ!まぁノルマは私の独断と偏見で決まるんだけどね。」
「つまり私はこっちの世界に無期限流刑なわけですね。よーく理解しました。」
「こんな危ないのにずっと居座られても困る。クーリングオフ制度はないのか。」
「はいはいごちゃごちゃ言わないの。あ、そういえばシノは今日泊まる家も無いんだったわね。んーっと、じゃあそこの…龍一君だっけ?あなたの双子の妹っていう設定にするから仲良くしてあげてね。学校にも通ってることにするわ。」
「おいちょっと待て。そんなの認めないしそもそも無理がありすぎるだろ。」
「私だってこんな人でなしの妹なんて嫌ですよ。せめて姉がいいです。」
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神がそう言い終わると、急にあたりが騒がしくなる。人々が動いている。時間停止が解けたようだ。
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そこにはもう神の姿はない。
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