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古文書を読もう

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「こっ、この件は一旦持ち帰って検討させて頂きます!」

苦し紛れに口から出ちゃった。
うぁああん!どこのビジネスマンだよ。

「・・こちらこそ、性急すぎた様です。改めて釣書をお送りいたします。良いお返事を御待ちしております。」

ケネスさん、名残惜しそうに指撫でないでもらえますか。
大人の色気が駄々洩れで、こっちの心臓が持ちません!

「つっ、釣書の届先はクリアゼの宰相気付でっ、お願いします!」

お願いだから、ロベリアに直接提出に行かないでよ。
これで取り合えず戦争回避だ!

そこのみんな!「良くやった!」って顔してるけど、この後全員居残りで、ロベリア対策会議に強制参加してもらうからね!覚えといてよ、もう!


そこ頃の、話題の主ロベリアは屋敷で薬草の仕分けをしていた手を止めていた。
眉間には、くっきりと深い谷間の様な皺が刻まれている。

「・・何か不愉快な気配がする。さて?なんだろうね・・ふふっ?」

黒いオーラ全開で微笑んでいた。


そもそも僕は、翻訳の助っ人の来ただけなのに求婚されちゃうとか、何なのこの事態、ありえないでしょう。
思わず騎士団長の後ろに隠れちゃう。
あの皆、あんまりこっちを見ないでもらいたいな・・。
顔が赤いの収まらないし・・。

侍従さんが「こちらを」と冷たいお絞りをそっと差し出してくれました。
そして僕だけアイスティー・・出来る侍従さん、ありがとう。
御髭のおじいちゃん魔導士長に、孫を見つめる目で頭を撫でられながら所定の席につく様促された、むぅ。


「では、昨今の被害報告から・・。」

近年、クリアゼとシーアの国境で黒いスライムの被害が度々報告されている。

通常のスライムなら、核を破壊すればその場で消滅するのだが、このスライムは核破壊後、体膜が消滅せず残り、土地に染み込み、その地を穢すのだという。

穢された土地の木々は立ち枯れ、草木の生えない不毛の土地になる。
聖職者の浄化でも、効果的に祓えず、元に戻すのにかなりの回数の浄化が必要。

今の所被害はシーア側に多いが、クリアゼでも徐々に増えている。
出没回数が確実に増加していて、何処から現れているかも不明。
このままだと人身への被害も懸念され、騎士団の警邏も強化、対応に当たっている。

シーアは『黒狂い』と言われるだけあって、『黒』に関する書物も多く、その中の古文書に類似する魔物の被害の記述が見つかった。
しかし記述された年代はバラバラ、そんな長きに渡り、定期的の現れる魔物がいるものか?

クリアゼ側の蔵書の中のから、関連していると思われる書籍、古文書と合わせ、年代や内容のすり合わせを行うのが、この会合の目的なんだって。

僕は、皆の議論を端っこの席で聞きながら、渡された双方の資料の翻訳をもくもくとこなし、書き起こしていく。
ほんとだ、年代に開きがあるけど同じ魔物としか思えないね。
えーと、次の古文書はこれか・・。

不意に視線を感じて、顔をあげればケネスさんと、バッチリ目が合って微笑まれた。

「夜空殿は優秀でいらっしゃる。」

ぼひゅん!
治まった顔がまた赤くなっちゃった。
真面目に取り組んでるんだから、求婚の事なんか考えない!考えない!責務に集中するの!

侍従さんから、本日2本目の冷えたお絞りと、氷菓子を渡されました・・うぅ居たたまれないよう・・。
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