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狼の村へ

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アイちゃんとのお茶会から数日後、狼の村に行く事になりました。
ラダさんはお留守番するって。

今日の衣装はノースリーブタイプ。
基本の黒地に、裾部分から胸元にかけて流水が舞い上がる意匠が、濃い青から水色のグラデーションの刺繍で表現されて、すっきり涼し気な一着。
ロベリアとラダさんも満足気だ。
田中さんと鈴木さんも「見事じゃのう」と小さなお手手で拍手をくれる。

毎度毎度見事なお衣装なんですけど、冷や汗しかでてこないってば・・。

「あのね・・いつも思ってるんだけど、僕の衣装代って、相当かかってるんじゃないの?」

二人が顔を見合わせ、きょとんとする。

「服自体はそうでも無いですよ。刺繍はラダに任せますし。本人も楽しんでやってますから、値段の事など気にする必要はありません。」

ちょっと待って、ラダさんの刺繍なの?
この間のお花のやつも?
細工物が得意って聞いてたけど、こんな事も出来ちゃうの?女子力高!
こっわ、一点物!値段付けられないじゃん!

『よく似合ってる。着て貰えて嬉しい。』

大きな手で頭をポンポンされる。
ぐぬぬ、こんな嬉しそうな顔されたら何にも言えないよ。

「すごい凝って綺麗な刺繍だね、いつもありがとうラダさん。・・まさかと思うけど、僕の衣装の為に徹夜とか無理な作業とかやってないよね?」

すっと目をそらした、これは黒だな。
ダメですよーラダさーん。
もう!今日留守番してる間にしっかり睡眠とってよね。

ラダさんは、誤魔化す様に仕上げにとベールを被せてくれた。

なんか、鎌倉時代の女性の装束みたいだね。
あれは虫よけだったかな?

笠の縁にベールがぐるっとが付いていて、所々シャラシャラとなる飾りがついている。
よく見たら、ベールの裾にも目立たない色で流水の刺繍がさり気なく刺してある、ラダさんに手抜きという言葉は無いんだろうね、凝りまくっている。
このベール、こっちからは見えるけど、相手側からはシルエット程度しかわからない、良く出来てるなぁ。

これも、龍種族の子供の古典的な衣装なんだって。
よくよく聞いたら、溺愛する子供を他人にジロジロ見られるのが嫌、ってのがこの装束の本当の理由らしい(笑)
どんだけ過保護なの龍種族。

「『黒』の御触れはまだ行き渡ってませんから、いらぬ騒ぎを避ける様、用心に越したことはありませんからね。後、重ね掛けで防御の陣もいくつか組んでありますから。」

「・・『翠』のこれはちと、えげつなくないか?」

じっと見ていた田中さんが不穏な発言をする。
え?どんな陣しいたの?過剰防衛はダメだよ。

「これぐらい当然です。竜種族の子供とわかって手をだす者には、それ相応に応じないと。」

ロベリアだから、どーして殺す気満々なのさ。
面倒ごとに巻き込まれる前提の話なの?
狼の村ってそんなに物騒の所なの。

「ふーむ、龍は子煩悩だからのぅ。致し方無いか。坊、愛されとると思って諦めよ。」

だから何を?不安しかないんですが。

僕の多大な不安を余所に、保護者同伴の初めてのお出かけに出発するのでした。

主な目的は3つ。

1・湖に住む精霊さんに会って情報収集
2・ポーションをギルドに納めるに行く
3・古参の狼族の人に会う約束を取り付ける

ロベリアが手の離せない仕事って、この村に納めるポーション作りの事でした。
狼の村の近くにダンジョン!があって、わりと大きい冒険者ギルド!もあるんだって!
わぁ、ファンタジー!

田中さん達が来た時は、依頼を受けたばかりで、納める数が揃ってなかったから、置いてけぼりされるとかなり焦ったらしい。
半泣きのロベリアを見かねて、僕もお手伝いして仕上げたんだ。

「泣かなくても置いて行かないよ。僕もロベリアと一緒にお出かけしたかったんだから。」

「夜空はいい子ですね!」

と抱きつかれ頬ずりされ、何故かラダさんも参加し頬ずりされて、二人に挟まれすごく恥ずかしかった。


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