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王様に呼ばれました

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―僕はこの世界に戻って来た―
ひょんな事から知りあった、田中さんと鈴木さんの精霊判定で、その事が確定し、僕の心の曇りは少し晴れた。

直ぐにでも、狼の村へ出向こうと意気込む田中さん達だったが、結果先延ばしになった。理由は、まだ手の離せない仕事を抱えたロベリアがごねたから。

「私には、保護者としての責任があります。私抜きなんてありえません。夜空との初お出かけ、ずるいです。」

いや、最後のセリフが本音でしょう。

とは言え、何故転移したのか?そもそも原因が分からない。
不安要素は残ったままだから、図書館通いはまだ続けるつもり。
今日は図書館じゃなく、お茶会に行くんだけどね。

最初は、おっかなびっくりだったこの暗い転移陣の部屋の雰囲気にも、すっかり慣れてきた。

今日の訪問の衣装は、黒地に銀糸で草花の小さい刺繍が施されていて、ワンポイントは花芯につけられた青いラピスラズリ。
松明の灯りを受けてキラりと光る。
袖はゆったり広がって、指先が少ーし見えるこれが譲れない絶妙な長さなんだって。

そう、総じて可愛いがあふれた衣装だ。

ラダさんから贈られた衣装なんだけどこの繊細さ、当然お値段はるんだろうなー。
金額の事を考えると、ハシビロコウみたいな表情になっちゃうよ。
皆には与えて貰ってばかりで、何か返せないだろうか?

「シキさん、ヒガさん。今日もよろしくお願いします。」

今日も騎士服がかっこいい二人だ。

「夜空様、今日も可愛いですね。いつも言ってるけど、俺らにさん付けはいらないよ。」

ヒガさんが、目線を合わせる様にかがんで、ニヒッと笑う。

「僕はかっこいいを目指したいんですがね。お世話になっているんだし、こればかりはゆずれませんね。我儘と思って、いい加減諦めて下さい。」

僕もニヒっと笑い返す。
そのやり取りを見ているシキさん、王城に来るたびに繰り返されるルーティンだ。

謙虚な日本人気質の僕としては、そんな偉そうになんて振舞えない、無理いわないで。

「夜空様。今日はお茶会に向かう前に、王に御目通り願います。」

王様に会うのは、初謁見以来だね。

「わかりました。何でしょうね?」

シキさんとヒガさんに案内されながら、王様の元へ向かう。
不自然に遠回りしているみたいだけど、王様の安全を考えてだろうね。
まぁ、狼の方向感覚と嗅覚を持ってる僕にはあんまり意味ないけど、とは言えるはずも無く、ここはおのぼりさんよろしく、ついでに王城見学出来るので、問題無し。

すれ違う騎士さんや、文官さん達に、何故か初めてのお使いの子供を愛でる様な温かい目でみられるのが解せぬ、ぐぬぬ。

案内された部屋は、前と違ってこじんまりした、機能的な部屋だった。
政務室ってやつかな?
おう、机の上の山積み書類、テンプレだぁ。

「ひさしいな、黒。息災か?」

「はい、王様こんにちは。ご無沙汰しております。図書館の使用許可に護衛騎士つけていただいたお礼もまだでした。感謝しています。」

「お、おぅ、そうか。」

えー何。
素直にお礼言っただけなのに、意外そうな顔は、僕そんなに尊大な印象があったのかな?
あ、いや違うな。
ロベリアにいつもきつく当たられてるから、構えてたんだ。
すいません王様、うちの父がプレッシャーかけまくって。

「今日は、賢者の義務についてだ。そなたが古今東西の古文書を、苦も無く読み解いていると報告が上がってきている。」

僕の動向は逐一あがってるのか、まぁそりゃそうか、城内でウロウロしてるしなー。
うーん、この間の藪の中のお茶会も報告したのかしら?

「魔導書の解読に尽力せよ、それを持って黒の義務とする。まずは、隣国の魔導士が訪れる、かの国から持参した遺物をひも解け。日程などは追って沙汰する。」

なるほど。語学チートのお仕事ですか。

「承りました。楽しそうなお仕事、ありがとうございます。喜んで協力させていただきます。」

だから、なんでそこで動揺するの。
そして、ニマニマしない王様。
口元隠れてないですよ。
ロベリア、いつもどんな失礼な対応してるのさ、戻ったら聞いてみよう。


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