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保護者が増えました

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どこをどう帰ってきたか、さっぱり覚えていない。
気が付いたら屋敷の玄関先に、ぽつんと佇んでいたらしい。
らしいってのは、後でロベリアに聞いたから。
我ながら、かなり動揺してたんだろうなー。

僕の様子がおかしい事に気が付いた、ロベリアとラダさんが大慌てで出迎えてくれた。

「夜空どうしたんですか?何かあったんですか?」

「あー・・。えっと・・。ただいま。」

二人の顔を見たらホッとしている自分に気がついた。
その表情をみた二人の反応の速さったら。
ラダさんには、滑るような動きで子供抱きされソファーまで運ばれ、すかさずにひざ掛けを、ロベリアによって、目の前にはホットミルクとクッキーが置かれる。
相変わらずの過保護の連携コンボである。

そうして自分達用の御茶と、どう見ても、おもちゃサイズのカップに入ったお茶をテーブルに置いて(こんなの何処からでてきたの?)僕の対面にロベリアとラダさんが座る。

「さて。で、そちらの精霊殿のお名前をお伺いしても?」

ロベリア達の目線は僕の肩に。
そう田中さんと鈴木さんである。
煌めく様な笑顔なのに目は笑ってない、だめだよー。
何これ?
まるで「娘さんを下さい」って実家にきた彼氏への、両親の圧迫面接の様な状況。

「翠と蒼の賢者殿、お初にお目にかかる。わしは土のタナカ、こっちは風のスズキじゃ、春告げ岩で、坊に甘味を馳走になっての。お礼に、ちと相談にのった流れで、心配でついてきただけじゃ。そう睨むでない。我ら害意はないぞ。なー坊よ。」

「・・よぞら、かわいい、しんぱい・・。」

肩に立ち上がった精霊さん達に、左右から小さいおててで、頭をなでられる。
それを見たロベリア達が口元をバッと抑えた。
プルプル肩が震えて、若干耳が赤い。
そうですか、身悶えするほどかわいいんですね。
殺伐とした空気が和むんなら、えぇ、いくらでも身売りしますよ僕は。

仕切り直し。

「と、まぁ、坊は、この小さい心を痛めていたのじゃ。何故、界渡りしてしまったのか、原因はわからん。だが、坊の欠けた世界が、坊が戻る事で元に修復されたと言う事じゃ、だから、もうあちらに飛ばされる心配は無いと思うがのー。」

僕の欠けた世界ですか、田中さん詩人だね。
カッコイイですが、クッキーを口いっぱいに頬張って、もきゅもきゅ食べながらなので、ちょっと残念な感じになってますよ。
口元についたかけらを、拭いましょうね。

そうかー、僕は戻ってきたのかー。
ここに居てもいいよ、って言われたみたいで、なんか胸がじんわり暖かくなる。
思わず口元が緩んできちゃう。

「・・・いやはや、こんなかわいい坊が行方知らずとは。親はどれだけ泣き暮らしているかわからんぞ。気の毒な事じゃ。わしは今、孫をかわいがるじじぃの気持が痛いほどわかったぞ。」

「・・そうね・・・。」

「ええ、夜空がそんな事態になったらと思うと・・恐ろしい。私なら闇落ちしているかもしれません。」

「・・・・・・。」

いや、そんな怖い事言わないで。
ラダさんも、そこで大きくうなずいて同意しない。

「獣化できる先祖返り、その上双黒とあっては、何かしら話に上がってもおかしくないはずじゃ。狼の村には、昔馴染みもおる事じゃし、久しぶりに訪ねてみようかの。坊の親の事などなんぞ、何かわかるやもしれんぞ。」

本当の親か・・・。
会えたらどうしたらいいんだろう?
僕はどうしたい?
この生活はどうなるの?


「夜空。大丈夫ですよ。その時になったら、その時です。相談して最良を見つけましょう。あなたは自由なのですよ。何物にも捉われない『黒』の賢者であり、私の自慢の息子である事には変わりないのですから。」

ロベリアは、僕の前に膝をついて、静かに微笑ながらそっと両手を包んでくれた。

この世界でロベリアに拾ってもらって本当に感謝しなくちゃ。

「お父さん、ありがとう。」

「ぐっっ!!・・油断していたので効きますね!」

ふふ、ロベリア崩れ落ちちゃった。
こんな素敵なのに、残念さんだね。

「じいじとばぁばもおるぞー。」

あ、ばぁば呼ばわりされた鈴木さんから、するどいこぶしが繰り出され、完璧に脇腹にめりこんだ。
あらら、田中さんも崩れ落ちちゃった。

『・・私も家族だと思っている・・。』

ひょいとラダさんのひざにのせられ、大きな手でなでられる、大型犬に包まれる様な抜群の安定感。

立ち直れないロベリアと田中さんに苦笑いしながら、僕は、優しい家族達に囲まれる幸せをかみしめていた。


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