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おさんぽ

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それからも何度か図書館に通って調べているけど、これと言って収穫はない。
今日は、気分転換に獣化して遠駆にでかける事にした。

「気を付けていってらっしゃい。」

『はい。ロロの実も終わる頃なので、見つけたら摘んできますね。』

ロベリアとラダさんに頭を撫でてもらって出発。
そうそう、ラダさんは寝床を引き払って、一緒に住むことになりました。
ロベリアからは薬草の事、ラダさんからは魔道具の事などを教わっている。
城の図書館にはちょくちょく行くけど、街にはまだ出かけた事は無い。

トップスピードで山の中を駆ける。
今日は狩りをするより、思い切り体を動かしたい気分だ。
木々をぬけ、倒木を飛び越え、独り駆ける、ただ駆ける。
季節が秋に近づいていて、山々も色付き始めている。
一気に、領地の端の大岩まで駆け抜けていた。
最近のお気に入りの場所だ。
高台にある大岩の根本には、小さな石で組まれた簡単な作りの祠と、湧き水がわいていて(これがまた美味い)眼下にはいくつもの村々が遠くに見える。
この祠を見つけた時は、落ち葉に埋もれていた。
お世話する人がいない、忘れられた祠なのかもしれない。
それから訪れる度に、祠の上の落ち葉を簡単に払い、湧き水をかけて清め、こちらの作法が分からないけど、手を合わせる様になった。

誰もいないからって、裸じゃあんまりかとシャツだけ身に着ける。
岩の上に登ればさえぎる物はないもない、一面の空。
青く高い空に、一羽の鳥が飛んでいるのが見える。
ん-?ドラゴンっぽいので、ワイバーンかもしれないけど・・。
小豆もどきで作ったアンパン一号君(まだまだ改良の余地あり)と緑茶を取り出して一服しながら、ぼんやりと考える。

こっちに来て、ロベリアに拾われて、息子にしてもらって、ラダさんと二人して大事にしてもらっている。
お城では、姫様と愉快な侍女ズと友達?になれそう。ヒガさんシキさんは護衛騎士で友達とは、ちょっと違うかもしれないけど・・いい人だ。
まさかの魔法も使える様になって、あきらめていた本もいつでも読める。
こうやって好きな時に獣化して、行動も自由って、なんて恵まれた環境。
うーん、こんなにいい事だらけで、ちょっと不安になるよ。

向こうでもこの世界でも、自分が異物だって気持ちがどこか拭えない。
転移の切っ掛けもつかめないし、この世界からも弾かれて、また違う世界に飛ばされたりしないだろうかと、漠然とした不安が影の様につきまとう。

・・ふとある歌を思い出して、口遊んでみる。
某アニメで、龍の女の子が独り歌っていた曲だ。
澄んだ物悲しい歌で、いつまでも耳に残って、何度も聞いて覚えた。
この歌を知っているのも、この世界では僕一人きりなんだ。
はぁ、いかん。
こんなに気持ちのいい青空なのに、気分転換どころか逆に落ち込んできた。
考えすぎはいけないね、思考がループしちゃうよ、ふう。

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