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図書館にて

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なかなか転移に関する事柄が表にでてこない。
条件として霧は全く関係ないのだろうか?
うーん探す本のアプロ―チを変えてみるか?

遠い目をしてなにやら思案されている。
目的があって、文献をお探しのようだが、多数の複雑な古代語を読み解けるとは、賢者の名は伊達では無いという事か。
めぼしい本を見繕い席へ戻ろうとする途中、すん、と鼻を嗅いで怪訝な表情を浮かべ立ち止まる。

「夜空様、どうなされました?」

「ううーん?」また匂いを嗅いでいる様な仕草だ。

やおら、床に近い棚の奥から埋もれた本をつかみ出すと、私やヒガに持たせる事はせず、夜空様自らが司書の元まで運ぶ。

「この本は、毒がしみ込ませてあります。毒自体は古い物なので、効力は切れているようですが、念の為しかるべき処理をお願いします。」

司書達がぎょっと、本を受け取ろうと伸ばした手を、思わず引っ込めた。
これには、私とヒガも蒼白になる、何の為の護衛騎士か。

「危ない事やめて夜空様。俺ら護衛だから。」

さすがのヒガも真面目な表情だ。

「そっか、二人に言えばよかったのか。ごめんなさい。」

大昔、特定の人物を狙った物だったのかもね?と夜空様。
獣人たる私やヒガが気づかないほどの、微量な毒の匂いを感じとるなど、これも『黒』様の明かされていない能力の一つなのだろうか?
匂い?まさか、悪意の残滓を感じておられるのか?
あぁ、今日も魔導士どもが五月蠅いだろうな。

今日は、気が削がれたのか、いつもよりずいぶんと早い時間に読書を切り上げられた。

「今日は、お二人と一緒に食べようと思って、軽食を作ってきたんです。どこか木陰のある良い場所を教えて下さい。」

なんと、夜空様のお作りになった軽食を振る舞っていただけるとは。
しかし、これはまずいな。
この事が団長達や他の騎士共に知られたら、盛大に拗ねられそうだ、どうする・・。

「ふふん。俺にまかせなって。とっておきの場所あるから。」

こういう時のヒガは頼りになる。おそらくサボりで使われる場所なのだろう。

ヒガに連れられた場所には驚いた。
まさかこの様な所にあるとは。いつも何処に消えているのかと思えば・・。
夜空様が「いいですね。秘密基地みたいです。」と目を輝かせて喜んでいるので、仕方ないこの件は不問としよう。


最近、向こうの食べ物を再現するべく、思いつくまま試行錯誤している。
出来はまだまだの天然酵母パンや、果物のジャム、ベーコンにローストビーフ、もちろん定番のマヨネーズも。
ピーナッツに似たロロの実で作ってみたピーナツバターもどきは、甘い物好きのロベリアに好評だ。
今日は、パンに切込みを入れて、具を挟んだ簡単な総菜パンをつくってきた。
マヨネーズを使った卵たっぷりのタルタル、ローストビーフもどき、ジャムの3種類の他、付け合わせに塩の効いた皮付きフライドポテト。
ジャンクなものは、やっぱり無性に食べたくなるものだ。

山でお茶っぽい木をみつけたので、緑茶もつくってみた。
思ったよりいい出来でうれしい、今度紅茶やウーロン茶にしてみよう。
パンには合わないかもしれないが、色がきれいなので緑茶をいれてきた。
ふふふん、収納魔法さいこー。

二人とも体力勝負の騎士さんだから、多めに作ってきたけど足りるかな?

「この二つはオカズが挟んである食事パンで、こちらは甘く似た果実が挟んであるお菓子の様なパンです。お好みでどうぞ。」

「「いただきます。」」

ヒガさんはやっぱりローストビーフからいったね。
シキさんは、甘い物からだね。

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