上 下
4 / 47

お父さんができました

しおりを挟む
ここは、20の領地からなる国で、名前はクリアゼ。
その内の一つ、周囲の山々を含め、許可の無い者の侵入はできない不可侵の森の中、ロベリアはたった一人きりで住んでいる。

「馬鹿の依頼がない限りは、のんびりと薬草を作り、月に数回街や村に出向いて、薬師として薬を卸したりして生活をしているね。この山々は私の薬草園みたいなものだから、荒らされない様、人が立ち入り出来ない様にしてあります。夜空もそのうち採集に一緒に行きましょう。
街の方は、安心して同行できる環境を整えてからだね。もう少し待っていなさい。」

生活用品の買い出しには、国中の色んな場所に転移陣を用意してあるので、不便ないようだ。
実際、僕の身の周りの物も、翌日には大量に用意された。
甘やかしすぎです、ロベリア。
僕が生活に慣れたら、いろんな所に同行させてもらえるらしい、異世界の街、楽しみだな。

山で気ままに狩りをしたり、時々ロベリアに向こうの甘味を作って大喜びされたりしながら、少しづつこちらの世界を学ぶ日々。
向こうとこちらの常識や世界観の違いを話あうのも楽しい。
明らかに知らない言語に筈なのに、こちらの世界で、会話、読み書きに困る事はなかったのには助かった。
これがチート・・ってやつかな。
独りきりになった時、思わず言ってしまった。

「・・・ステータスオープン・・。」

結果、何も出ませんでした、本気で恥ずかしかったです・・。

剣と、魔法、精霊に魔獣、中世の様な世界観。
ここで暮らす種族は大まかに3種。

人族。
寿命は長寿の人で130才、基本的な成人男性の身長が平均は2m前
後、僕のいた人の世よりはるかに大きい体型だ。
これじゃあ、いよいよ子ども扱いされても仕方ないかも、と自分を慰める。

獣人族。
人族とかわらない体形で、なおかつ獣の身体能力を合わせ持っている人達。
人族との婚姻も多く、純血の獣人は少なくなっている。
俗に言う獣耳、尻尾は、必ずしもある訳ではなく、ましてや、僕の様に完全獣化など出来る人はいない。
そうか、いないのか・・・。

龍種族。
ロベリア曰く、絶滅危惧種。
龍種の上位種には、まれに龍化できる者が現れる。
巨大な魔力と長寿が特徴で、子が出来る事が極端に難しい。
其の為か、子供や小さい物に対して庇護欲が強い。
かわいい物にめっぽう弱いって事・・・んんっ?
それって・・・とロベリアを見つめると、苦笑いをされた。

「そう、私は龍種だよ。この地に存在する賢者と呼ばれる者は、だいたい龍種だね。ただただ長く生きているのだけで、身に着けた知識なのに、賢者と呼ばれるのには、今だに慣れないよ。」

「ロベリアは、他の賢者にお知り合いがいるのですか?」

「いるよ。親友の一人が『蒼』の賢者とよばれているね。ひさしく会っていないけど・・。夜空も紹介した事だし、便りをだしてみようかな。以前のねぐらから移動していなければいいけど。ふふふっ、彼も夜空に会ったら喜ぶだろうね。」

ロベリアは薬の調合をする傍ら、僕の勉強をみてくれている。

「質問があったら、どうぞ。」

「・・僕に会った時に驚いていましたが、この世界には、黒に特別な意味はありますか?」

「黒持ちは巨大な魔力を有する。が、その強すぎる魔力の為、体がもたないとされている。赤子の内に流れたり、生まれる事が出来たとしても、体に欠損があったり、魔力によって、なにかしら体を蝕まれ生まれてくるので幼児の内に亡くなる。生きて成長できた子を見たことはあるが、その子は髪の一房が黒だったね。魔導士になって、どこかの国のお抱えになったはずだ。」

「じゃあ、僕みたいな黒って・・・。」

「いないねー。」

「そうですか。僕の場合、生活魔法が使える程度なんですが。」

そう、僕はあっさりと生活魔法が使えたのだ。
洗浄魔法と収納魔法が使えた時は感動した。
地味な魔法でも、狩りの時には大変重宝している。
ロベリアの山は、雪深くなると聞いてから、少しづつ狩り貯めているところ。
割と楽に狩りやすい魔獣に、豚や牛っぽい味がいるのでホクホクだ。

「黒は、この世界の理だよ。君の魔力は強い、私に引けを取らないと思う。第一、生活魔法といっても、夜空は無詠唱で使っているじゃないか。息をする様に自然に使いこなせている自体、あり得ないからね。」

あれ?そうだったっけ?

「この間も、治癒魔法で自分の擦り傷を完治させたのを知っているよ。人化もしかり、無自覚で、他にも色々規格外の事やらかしてるから。
お願いだから、どこかで攻撃魔法なんて試したりしない様に。」

・・試そうと思ってたのに、釘差されちゃったよ。
いや、魔法が使えるなら考えるでしょう、やっぱり青少年のロマンだし。

ロベリアは作業の手をとめて僕の対面の椅子に座った。

「・・そこでだ、夜空。私の養子にならないかい?まだ君の存在は知られていないし、これからの安全を図る為には良い方法だと思うのだが。賢者の身内、ましてや庇護欲の塊の龍種の愛し子に、ちょっかいをかけるなんて、自殺行為以外何物でもないからね。ふふっ。」

ロベリア・・悪い顔になってますよ・・。

「養子・・ロベリアと僕が家族・・。ありがとう、お父さん?」

あ、ロベリアが悶絶してる・・。

「夜空っ、も、もう一度。」

「えーと。お父さん。」

「・・もう死んでもいいですね。」

「いや!生きて!」

お父さん呼びは破壊力がありすぎるの封印しましょう、とロベリアに真面目な顔で諭された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!

のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、 ハサンと名を変えて異世界で 聖騎士として生きることを決める。 ここでの世界では 感謝の力が有効と知る。 魔王スマターを倒せ! 不動明王へと化身せよ! 聖騎士ハサン伝説の伝承! 略称は「しなおじ」! 年内書籍化予定!

この世界で唯一『スキル合成』の能力を持っていた件

なかの
ファンタジー
異世界に転生した僕。 そこで与えられたのは、この世界ただ一人だけが持つ、ユニークスキル『スキル合成 - シンセサイズ』だった。 このユニークスキルを武器にこの世界を無双していく。 【web累計100万PV突破!】 著/イラスト なかの

南洋王国冒険綺譚・ジャスミンの島の物語

猫村まぬる
ファンタジー
海外出張からの帰りに事故に遭い、気づいた時にはどことも知れない南の島で幽閉されていた南洋海(ミナミ ヒロミ)は、年上の少年たち相手にも決してひるまない、誇り高き少女剣士と出会う。現代文明の及ばないこの島は、いったい何なのか。たった一人の肉親である妹・茉莉のいる日本へ帰るため、道筋の見えない冒険の旅が始まる。 (全32章です)

異世界修学旅行で人狼になりました。

ていぞう
ファンタジー
修学旅行中の飛行機が不時着。 かろうじて生きながらえた学生達。 遭難場所の海岸で夜空を見上げれば、そこには二つの月が。 ここはどこだろう? 異世界に漂着した主人公は、とあることをきっかけに、人狼へと変化を遂げる。 魔法の力に目覚め、仲間を増やし自らの国を作り上げる。 はたして主人公は帰ることができるのだろうか? はるか遠くの地球へ。

Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~

神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!! 皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました! ありがとうございます! VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。 山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・? それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい! 毎週土曜日更新(偶に休み)

僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。 ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。 『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』 『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』 そんな感じ。 『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。 隔週日曜日に更新予定。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

お妃さま誕生物語

すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。 小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。

処理中です...