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満月の夜
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無事買い物を終え屋敷に戻れば、煌びやかなリボンに彩られた、箱、箱、箱の海。
購入した品物の余の多さに、顔を見合わせて主と二人笑いあった。
少しずつ梱包を解き、部屋を整えていく穏やかな日々が続く。
部屋の小物、装飾品、主の身に着けているドレス、そのほとんどが私が選んだものだ。
「今度は一臣の物を買いに行こう。私に選ばせておくれ。」
何がいいだろうかとつぶやきながら思案顔の主が可愛い。小さな幸せに心が温かくなる。
この世界に飛ばされて初めて見たものは、信じられない程の深い闇夜と、大小ならんだ緋色の二つの満月。
戻れないとストンと飲み込めた。
このまま死ぬのだろうな、体が徐々に冷えていき目の前が暗くなる、心がその時を待つ様に寂寥に凪いだ。
「大丈夫だよ。」暗闇の中、主の声を聞いた。
今日はその二つ月が揃って満月だ。
月の満ち欠けで変身する訳では無いが、気分が高揚するのは確かだ。
そんな夜は完全獣化の四つ足で山を駆け巡る。
駆けながらも考えるのは、主の事ばかり。
もうそろそろ主が次の贄を必要とする時期だ。
妖精姫の如く儚く美しい小さな女性になってしまった主。
今は私だけに向けられているあの微笑で、贄の男どもを誘うのか?
あの柔らかな体に他の男が触れるのか?
これから次の変体までずっと?
女の贄を誘うのを傍観していた時には考えられない程の苦い思いがふつふつと湧いてくる。
その場を影の中から黙って見ていろと?
嫌だ、嫌だ、耐えられない、眩暈がする。
行き場の無いこの暗い思いが悋気なのか。
勢いのまま主の寝室まで駆ける。
寝台の中で、顔だけをこちらに向け泉の様な澄んだ眼が開かれた。
あまりにも静かで自然な覚醒。
この方は、本当は寝る必要も無いのかもしれない。
「キュウ。キュウウ。クーン。」
四つ足完全獣体では言葉が話せない、ベットに飛び乗り、横たわる主の体の上に伏せ頭を擦り付ける。
「おやおや、どうしたんだい。甘えた声をだして。森で何かあったのかい?」
主が優しい手つきで頭を撫でてくれる。
もどかしさのあまり人型に戻る、裸のまま主を組み敷いている状態だ。
小さな主を抱きしめ、鼻先にそっと口づけを落とす。
「主、番になって下さい。」一言が精一杯だ。
主は少し驚いた表情を浮かべたが、柔らかく微笑んで、鼻先と額に口づけを返してくれた。
「主、主っ。」
私は噛みつく様に夢中で口内を味わい、舌を絡めた。
柔らかな唇、なんて甘いんだ。
このまま贄として食われても構わない。
主の一部になるならそれも幸いだ。
「ふっ・・。んんっ・・はんっ。」
息が続かないのか、私の体の下で主が小さく身じろぎする。
張り詰めた男根を撫でる様に膝が掠め、その小さな刺激で、私はまさかの暴発をした。
「ぐっうっ!」
主のお気に入り淡いグリーンの夜着に白濁をまき散らしてしまった。
―さぁっ― 己が血の気の引く音は、こんなに大きく、はっきりと聞こえるものなのか。
呆然とした表情で、腹の白濁を見ている主。
か細い指が私の子種をすくう。
あぁ、俯いて表情が見えなくなった。
怒っているのか、それとも呆れているのか。
「あっ主・・申し訳・。」
息を飲み、慌てて体を離した。
購入した品物の余の多さに、顔を見合わせて主と二人笑いあった。
少しずつ梱包を解き、部屋を整えていく穏やかな日々が続く。
部屋の小物、装飾品、主の身に着けているドレス、そのほとんどが私が選んだものだ。
「今度は一臣の物を買いに行こう。私に選ばせておくれ。」
何がいいだろうかとつぶやきながら思案顔の主が可愛い。小さな幸せに心が温かくなる。
この世界に飛ばされて初めて見たものは、信じられない程の深い闇夜と、大小ならんだ緋色の二つの満月。
戻れないとストンと飲み込めた。
このまま死ぬのだろうな、体が徐々に冷えていき目の前が暗くなる、心がその時を待つ様に寂寥に凪いだ。
「大丈夫だよ。」暗闇の中、主の声を聞いた。
今日はその二つ月が揃って満月だ。
月の満ち欠けで変身する訳では無いが、気分が高揚するのは確かだ。
そんな夜は完全獣化の四つ足で山を駆け巡る。
駆けながらも考えるのは、主の事ばかり。
もうそろそろ主が次の贄を必要とする時期だ。
妖精姫の如く儚く美しい小さな女性になってしまった主。
今は私だけに向けられているあの微笑で、贄の男どもを誘うのか?
あの柔らかな体に他の男が触れるのか?
これから次の変体までずっと?
女の贄を誘うのを傍観していた時には考えられない程の苦い思いがふつふつと湧いてくる。
その場を影の中から黙って見ていろと?
嫌だ、嫌だ、耐えられない、眩暈がする。
行き場の無いこの暗い思いが悋気なのか。
勢いのまま主の寝室まで駆ける。
寝台の中で、顔だけをこちらに向け泉の様な澄んだ眼が開かれた。
あまりにも静かで自然な覚醒。
この方は、本当は寝る必要も無いのかもしれない。
「キュウ。キュウウ。クーン。」
四つ足完全獣体では言葉が話せない、ベットに飛び乗り、横たわる主の体の上に伏せ頭を擦り付ける。
「おやおや、どうしたんだい。甘えた声をだして。森で何かあったのかい?」
主が優しい手つきで頭を撫でてくれる。
もどかしさのあまり人型に戻る、裸のまま主を組み敷いている状態だ。
小さな主を抱きしめ、鼻先にそっと口づけを落とす。
「主、番になって下さい。」一言が精一杯だ。
主は少し驚いた表情を浮かべたが、柔らかく微笑んで、鼻先と額に口づけを返してくれた。
「主、主っ。」
私は噛みつく様に夢中で口内を味わい、舌を絡めた。
柔らかな唇、なんて甘いんだ。
このまま贄として食われても構わない。
主の一部になるならそれも幸いだ。
「ふっ・・。んんっ・・はんっ。」
息が続かないのか、私の体の下で主が小さく身じろぎする。
張り詰めた男根を撫でる様に膝が掠め、その小さな刺激で、私はまさかの暴発をした。
「ぐっうっ!」
主のお気に入り淡いグリーンの夜着に白濁をまき散らしてしまった。
―さぁっ― 己が血の気の引く音は、こんなに大きく、はっきりと聞こえるものなのか。
呆然とした表情で、腹の白濁を見ている主。
か細い指が私の子種をすくう。
あぁ、俯いて表情が見えなくなった。
怒っているのか、それとも呆れているのか。
「あっ主・・申し訳・。」
息を飲み、慌てて体を離した。
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