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第五章 愛情

愛し方の違い

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美紀の家に龍弥が到着した。
「美紀ぃ~ただいま~」
「龍ちん!おかえり」
美紀は龍弥に晩御飯を振る舞った。
「美紀の飯はやっぱうめぇや!」
「うふふ。そう?そう言って貰えると嬉しいね」
食事を終えて、ふたりでお茶を飲みながら、美紀は先程の話を切り出した。
「龍ちん、実はね…相談したいことがあるの…」
「何!出来たのか?」
「はぁ?何が?」
「何がって…赤ちゃん…」
「アホ龍め!そんな話じゃない!」
美紀は近くにあった雑誌を龍弥に向けて投げつけた。
「ぶっ!だって深刻な顔するから…」
「実はね、恋の事なんだ」
「あぁ、この間の…んで?」
「私がそのまことってやつからの連絡を無視しろって恋に言ったの。そして恋はその通り無視し続けたんだ」
「ふむ」
「相当しつこかったみたいなんだけど、そのうち連絡は止まったの。そしたら今日、恋が学校帰りに誰かに尾行されてたっぽいの」
「何?そいつか?」
「まだわからない。けどタイミング的に考えると可能性は大だよね」
「んーまぁ、確かにな。そんなら、そいつ締めればいいって事だね。任せておけよ」
「んもう!龍ちんはすぐそっちにもってく。暴力だと、逆上したら今度は恋に被害出るでしょ?」
「んー。たしかになー」
「ねぇ、何かいい方法ないかな?」
「暴力がダメなら精神的に追い込むくらいかな」
「精神的?」
「あぁ、明日そいつのところ、一緒に行くか?」
「え!明日!?」
「早い方がいいだろ?俺に任せておけよ」
「大丈夫かな?龍ちんに任せて…」
「こういうのは、まぁやんが得意なんだけどな。でもあいつのやり方を間近で見続けてたんだ」
「じゃあ…明日行こう」
美紀は一抹の不安はあるものの、自信たっぷりな龍弥を信じてみることにした。
「よし!話は終わったろ!ほれ」
龍弥は美紀をお姫様抱っこした。
「きゃっ!ちょっと!龍ちん」
「2週間、お前に逢えないのってこんなに辛いんだなって思ったよ。逢いたかったぜ。美紀…」
「龍ちん…」
ふたりはそのままキスをして、龍弥は美紀をベッドルームに連れて行った。
「やっぱ、俺には美紀が必要だな。愛してるよ」
「うん…私も…龍ちん…愛してる」
ふたりはその夜、ゆったりと愛し合った。

翌日…
龍弥と美紀は、まこと達のバンドが練習しているスタジオを訪れた。
まことの写真を恋からもらっていたので、龍弥がカウンターにいた店主っぽい年配の男性に聞き込みをした。
「なぁ、ちょっとよ?こいつ見たことねぇか?」
「なんなんですか?あんた達は?」
「いやー俺らこいつを探してるんだよ」
「そんな事、こちらには関係ないね。帰ってくれ!」
店主は手でシッシっというジェスチャーをした。
すると龍弥は店主のネクタイを引っ張って
「なぁ、何もタダでとは言ってないだろ?」
そう言って龍弥は店主の胸ポケットに一万円札を数枚スッと入れた。
「どう?こいつ、見たことある?」
龍弥が満面の笑みで聞いた。
「今…スタジオにいるよ」
「そっか!サンキュー」
「じゃあ、外で待ってよう」
龍弥と美紀はお店の前で待つことにした。
「ねぇ?龍ちん、昨日言ってたまぁやんさんから学んだ事って今の?」
「いや…あれは俺オリジナル」
「はぁ~やっぱり。まぁやんさんならもっとスマートにできたはずだもん」
「あいつはもっとえげつないぞ…あいつがやってたら、今ごろ傷害事件ものだね」
「また…すぐそうやって…」
「おっ!来たぞ」
まことがバンドメンバーと一緒に出てきた。
「行くぞ!」
龍弥が走って跡を追った。
「ちょっと、いいか?」
「え?誰ですか?あなた」
「まことってやついる?」
「ぼ…僕ですけど…」
「ちょいツラ貸してくれっか?」
「おい!ちょっと待てよ」
バンドメンバーの一人が龍弥の服を掴んだ。
龍弥はすかさず、それを払い除け、逆に相手の襟元を掴んで持ち上げた。
「わりいな…こっちもあとがねぇんだ…あぁ!わかんだろ?お前らは散れや」
貫禄ある龍弥の一言で、バンドメンバーはまことを置いて逃げ出した。
「あ!おい!ちょ…」
「よし!これでOK!あんたがまことってやつか」
そして隠れていた美紀も出てきた。
「あ!あんたは…恋の…」
「そうだよ!恋のダチだよ。こっちは恋の兄貴の一人で龍弥っていうの」
「なぁ…あんた…恋とは終わってんだ。つきまとうのやめておけよ」
「つきまとうなんて…それにまだ終わってないよ!僕らはまだ付き合ってるんだ」
「恋はね、あんたに無理矢理やられそうになって傷ついたの!だから恋はもうあなたと別れるって言ってるの」
「恋ちゃんがそんな事言う訳がないよ。恋ちゃんは俺のこと好きだって言ってくれたんだから」
「そのあとにあんたが乱暴したんでしょうが!それなのにまだつきまとうわけ?」
「乱暴?あれは合意の上だよ。恋ちゃんだって誘ってきたんだから!」
その瞬間、美紀の平手打ちがまことにヒットした!
「バヂーン」
「あんたね…言っちゃいけない事言ったよ。私は許さない…絶対に許さない…」
「美紀!落ち着けって!」
龍弥が美紀を制止した。
叩かれたまことは頬を押さえながら呆然としている。
「…美紀…車に戻ってろ…」
龍弥の雰囲気が一瞬で変わった。
「でも…」
「いいから…戻ってろよ」
美紀はゾクっとした。この感じ、前に美紀たちが拉致された時に助けに来てくれた…あの時の空気感だった。
「わかった…」
龍弥は車の鍵を美紀に渡した。
「よう!小僧!俺とサシで話そうや…」
「え…なん…で?」
「テメェが理解不能だからだよ。じっくりわからせてやるから…あっちで話そうぜ」
龍弥はガッチリとまことと肩を組んで話さなかった。
「いや…離して…」
「だから言ってんじゃん、話してやるって」
「いや…そっちじゃなく」
龍弥はまことを連れて、公園に入っていった。

「なぁ、お前は恋のことが好きなんか?」
「は…はい…」
「だったらよ、好きなやつ困らせてどうすんだよ?」
「……」
「言っとくけどな、あいつの兄貴ってな、俺以外に2人いるんだ。そいつな。恋がヤクザに捕まった時も単身で突っ込んでいく核弾頭みたいなやつでよ。恋のためならなんでもするやつだからよ…そいつに結果報告しないといけないんだよ」
「か…核弾頭…」
「お前がここで、スパッと恋の事を忘れて、二度と近寄らないって誓えるなら、俺がうまく言ってやる」
「……」
「恋のことが好きなら、ちゃんとキッパリお別れするのも、愛なんだぞ。男が欲望丸出しだと、ぜってぇにモテないぞ」
「はい…」
「お前…童貞か?」
「!」
「やっぱり…女の子の扱いが下手な訳だ」
「すみません…」
「あんな!いいか!女の子は優しく接するんだ。お前が恋の立場だったらどうよ!はぁはぁ言って、強引に来る男だったらどうよ!キモいだろ!」
「確かに…」
徐々に龍弥のペースに嵌ってきたまこと。
「お前、携帯貸せ!」
龍弥はまことの携帯を奪い取った。
そして、恋の連絡先を消去して、龍弥自身の連絡先を入れた。
「恋のことはキッパリ諦めろ!そのかわり、お前にちゃんと俺がレクチャーしてやるから、ちゃんと童貞卒業させてやるから」
「はい!」
「ただし、今度恋をつけまわす事してみろよ!俺がタダじゃおかないからな!」
「はい!」
「よし!いけ!後日電話すっから」
「はい!失礼します」
まことは走って去っていった。
龍弥はタバコを取り出して、火をつけた。
「ふぅ~…まっ!我ながら上出来かな?」
龍弥は一服した後に、美紀の待つ車に戻った。

「美紀!終わったぞ!」
「えぇ!どうなったの?」
「あいつに恋の事を諦めさせた。未練たらたらだったから、諭してやったよ」
「もう跡をつけるみたいなことしないかな?」
「大丈夫だべ!あいつの携帯から恋の連絡先消したからな!あいつから恋に連絡行くことはないだろう」
「そっか…龍ちん、ありがとう」
美紀は龍弥に抱きついた。
「おいおい!俺の妹でもあるしな!」
「うん…さすが私の彼氏って感じ!」
「じゃあ…お礼は家に帰ってたっぷりとな」
「スケベ!」
「わはははは!」
この出来事から、恋とまことの関係は整理できた。
恋は龍弥にも感謝をして、ふたりに貯金を切り崩して温泉旅行をプレゼントした。
恋の心は未だにまぁやんを引きずっているが、これからいい恋愛が出来るように、恋愛について勉強していくのであった。
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