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第四章 事件

救いの手

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恋たち6人は澤たちに襲われそうになっていた。
美紀は羽交い締めにされて、ブラウスを破られた。
恋も床に転がされて、上に澤が馬乗りになって殴られた。
(もうだめだ…わたし…ここで終わるんだ…)
「おい!お前ら乱暴にしすぎるなよ!早くビデオ持って来いよ」
恋たちが襲われてるところをビデオで撮影しようとしていた。
「やだー!やめてよー!お願い!助けてー!」
美紀が叫んだ。
「ウルセェな!」
『バシッ』
美紀は殴られるとぐったりした。
「美紀!」
わたしは澤に向かって噛み付いた!
「痛ててて!」
必死に足掻いていたその時、遠くの方から声が聞こえた。
「テメェ!なんだよ!」
「うるせぇ!どけぇ!」
『ドガン!バゴン!』
大きな音が響き渡った。
「なんだ?」
城田が立ち上がって出入口のほうを見た。
『ドガン!ドガン!ドガン!』
ドアから大きな音が聞こえた瞬間、
『バゴーン』
ドアが蹴破られた。
そしてそこにはまぁやんと龍弥のふたりがいた。
「まぁ兄!龍兄!」
恋は叫んだ!
「恋!大丈夫か?!」
龍弥も叫んだ!
そしてまぁやんはゆっくり奥まで入ってきて、城田の目の前にあった古びたソファにどかっと座った。
龍弥はその後ろに立っている。
「あんたかい?城田ってチンピラはぁ?」
城田は呆然と立ち尽くしていた。
龍弥もまぁやんの隣に座った。
「おい!聞いてんだよ!答えろよ!」
龍弥は目の前のテーブルを蹴りながら威圧した。
「あ…あぁ。俺が城田だ…」
「俺の大事な家族たちが…随分お世話になったようだな」
「…あんたら…誰だよ…」
「聞こえなかったのかよ?こいつらの家族のモンだよ。引き取りに来るのは当然だろ?あぁ?」
さっきまで、騒がしかった部屋が一気に鎮まりかえった。
「して?どうすんの?これ?どうやって決着つける?」
すると城田はオロオロとし出した。
「いや…その…こいつらに100万の損失を受けたから…」
「100万ねぇ。したら家族が責任とらんとな!」
そういうと、まぁやんは懐から財布を出して、中から札束を出して机に叩きつけた。
「100だよ。こいつらがあんたらに与えた損失、これでペイだよなぁ」
「あ…はい…」
「じゃあ次に、このガキどもが、こいつらにした暴行の責任に移ろうか。さて、どうケジメつけるんだ?」
まぁやんは恋たちのほうを見て、城田に詰め寄った。
「く…くそ…」
城田が呟いたのを、龍弥は聞き逃さなかった。
「おい!くそってなんだよ!答えろよ!」
「なぁ城田さんよ。あんた柏木のところのやつだろ?あいつ元気かよ?」
「へ?」
「この事、あいつは当然知ってるんだよね?なら俺はあいつとナシつけなきゃいけないな」
城田は震えていた。
「おい!柏木に電話しろよ!今ここで。話つけるから」
すると城田は急に土下座をし出した。
「すんません!この通り!許してください!柏木さんには言わないでください!」
まぁやんはタバコに火をつけながら、
「そうはいかないよ。ここまで揉めたんだ。こっちは引けないところまできてるんだよ」
このやりとりに痺れを切らした澤が、大きな声で
「城田さん!もうこんなやつらやっちゃいましょうよ!」
澤たちがまぁやんを取り囲もうとした時、城田が
「ウルセェ!やめろ!」
と叫んだ。
そしてまぁやんのほうに再度土下座の格好して
「今日のところは…このお金もいりませんので、どうか今日のところは…」と何度も頭を下げた。
「わかったよ!今日はこいつらを引き取りに来ただけだ。また後ほどな」
そういってまぁやんは恋のところに来た。
恋は澤に馬乗りにされたままだった。
「…おい!ガキ!そいつ離せよ…」
まぁやんがそういうと、澤は
「なんだぁ?テメェ!イキってん…」
次の瞬間、まぁやんの後回し蹴りが、澤の側頭部にヒットした。
『バシ!』
澤は崩れる様に失神した。
「クズが!」
それを見た周りの連中は一斉に恋たちを解放した。
まぁやんは恋にスーツのジャケットをかけてあげて
「遅くなってすまんな!もう大丈夫だ!帰ろう!」
恋はまぁやんに抱きついた。
「まぁ兄!怖かった…怖かったよー!」
龍弥は美紀を介抱した。
「歩けるか?」
美紀の足はガタガタ震えていた。
「他のみんなは歩けるか?」
『はい!大丈夫です』
「よっしゃ!行くか!」
龍弥は美紀をお姫様抱っこして、まぁやんは恋をおんぶして、倉庫事務所を後にした。

外には車が止まっていた。
「よし!これに乗れ!まずは手当が必要だから、興正学園に行くぞ!」
まぁやんは運転席に乗り込んで、龍弥は助手席で関口さんに電話していた。
☎︎「関口さん、無事全員助かったよ。今からそっち行くから、準備よろしくね」
☎︎「はぁ~…よかったぁ~わかりました。お待ちしてます」
龍弥は電話を切ると、恋たちに
「そこにおにぎりとお茶あるから、食っていいぞ!」
みんな、泣きながらおにぎりを頬張った。
血の味がするおにぎりだったけど、恋はおにぎりを食べながら、自分が犯した過ちを悔いた。
「まぁ兄、ごめんなさい…わたし…」
そういうとまぁやんは運転しながら
「もういいよ。今は落ち着くまでゆっくりしてろ?」
「うん…」
車内はしばらく沈黙が続いた。
恋たちは極度の緊張から解放されたからか、6人とも眠りに落ちた。
寝顔を見ながら、龍弥はクスっと笑った。
「なぁまぁやんよ、お前あの時ブチギレてただろ?」
「ん?何のことだ?」
「ぷっ!とぼけんじゃねぇよ。あんなお前見たの初めてだからさぁ。しかし最後の回し蹴りはスゲー角度ではいったな?」
「俺自身、びっくりしてるわ!ははは」
そんな話をしながら車を走らせて、1時間ほどで学園に着いた。
「おーい!着いたぞー!」
「ん…あぁ…寝ちゃってた…」
「よーし降りろぉー」
恋たち6人が車から降りると、関口さんが走ってきた。
「恋ちゃん!」
関口さんは恋を見つけるとぎゅっと抱きしめた。
「佳奈さん…今まで…ごめんなさい」
恋は涙を流して謝罪した。
「バカね!そんなことより大丈夫?怪我してない?」
「ちょっと口を切ったぐらい…」
「見せて!手当しないと!他のみんなも、早く入って!」
恋たちは学園の中へ入っていった。
「龍、あいつらを見ててくれるか?」
「おう!お前は?」
「雷斗とケリつけてくるから」
「わかった」
まぁやんは車に乗り込み走り去った。



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