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第二章 家族

初めての家族団らん

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まぁやんが苑香さんのお店でアルバイトを始めてから半年が経過した。
元々真面目な性格なまぁやんは、ズル休みなどすることなく、しっかり働いていた。
働きながら、苑香さんから飲食業のノウハウを学び、知識をつけていった。

「なぁ、康二?今日の夜暇か?」
龍弥が学校から帰ってきた康二に聞いた。
「うん。なんも予定ないけど…どうしたの?」
「たまには外で飯食おうぜ!奢るから!」
「ほんと!行くいく!あっ!でも恋が…」
「もち!恋も一緒だよ!じゃあ行くべ!」
「ちなみにどこに行くの?」
「いいから、いいから」
そういって龍弥は外へ出て行った。
「お兄ちゃん!おかえりなさーい」
恋が康二に駆け寄ってきた。
「おー恋!ただいま!いい子してたか?」
「うん!」
「そうだ!今日な、夜ご飯外に食べに行くぞ」
「ほんとぉー?」
「あぁ!龍弥と一緒にな」
「龍兄!やったー!」
恋はキャッキャと喜んでかけずり回った。
「ねぇねぇ、何食べるの?」
「まだわかんないんだ。楽しみにしてなさい」
「はーい!」
恋は同年代の子たちのところに走って行った。
康二はみさき先生に夜外出の許可をもらいに行った。
「みさき先生、今日僕と龍弥と恋、夜外出します」
「あら、そうかい。じゃあ晩ご飯はいらないのかい?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
「はい!わかったよ!あまり遅くなるんでないよ」
「はい!」

そして夕方17時を回った。
「康二ぃ!恋!いくぞー!」
「はぁーい!」
恋はまぁやんが買ってくれた新しい洋服を着ていた。
「おっ!恋!お洒落しちゃって!」
「えへへ」
「じゃあ!いくか!」
3人は学園を後にした。
「なぁ、龍弥。どこに行くんだ?」
「まぁまぁ。楽しみにしてろって」
相変わらず龍弥は場所を明かさなかった。
15分くらいバスに乗って、バスを降りてから3分くらい歩いたところ、1軒の洋食屋さんに着いた。
「ここだ!」
龍弥が入って行った。続けて康二と恋も入る。
「いらっしゃいませ!」
「え!」
「あー!」
目の前には、ビシッとお洒落な制服に身を包んだまぁやんがいた。
「まぁ兄だぁー!」
恋が笑顔満点でまぁやんに歩み寄った。
「おぉー恋!よくきたな!」
「まぁ兄かっくいいー」
まぁやんは上を白いワイシャツに黒いベスト。下は黒いパンツにサロンを巻いていた。
「カッコいいか!そっかー」
まぁやんは恋の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「では、お席にご案内致します」
まぁやんは3人を席まで誘導した。
「お席、こちらになります。ごゆっくりお過ごしください」
まぁやんも半年でみるみる成長して、今やいっぱしのホールスタッフへとなっていた。
「なぁ、龍弥。あれ、ほんとにまぁやんか?」
唖然とした康二が龍弥に尋ねた。
「くっくくく…そう思うだろ?やっぱ俺の目に狂いはなかったな」
「確か、龍弥がまぁやんに薦めたんだよな。飲食業があってるんじゃないかって」
「龍兄!すごーい」
「我ながらあそこまで順応するとは思っってなかったけどなぁ」
3人は他の席で接客しているまぁやんを眺めていた。
料理を運ぶ姿、立ち振る舞い、おすすめを聞かれた時の対応、お客様への気配り…
全てが、今までのまぁやんとは別人であった。
「お待たせ致しました。こちらメニューでございます」
苑香さんが3人のテーブルについた。
「苑香さん、あいつすごい変貌ぶりだね」
龍弥が苑香さんに耳打ちした。
「まぁやんさん、すごい熱心に学んでましたよ。開店前に早く来て、テーブルサービスの練習もしてたし。何か仕事が楽しいって言ってくれた時は私も嬉しかったですよ!」
「へー!あっ!そうだ!苑香さん紹介します。同じ学園の康二と恋です。俺とまぁやんの弟と妹みたいなもんです」
「はじめまして。柏木苑香です」
「はじめまして。康二と言います。こっちは妹の恋です。恋、あいさつは?」
「はじめまして。恋です」
「まぁ!あなたが恋ちゃん!話しは聞いてるよ!可愛いぃー」
「そのかおねぇちゃんもキレイだね」
「まぁ!お上手!」
『はははははっ』
3人は料理を注文して、雑談していた。
なんかこんな時間を過ごすのも初めてだ。
普段は学園の中で過ごしていたから、外でこのように食事をしながら団欒するのって大人になった気分だった。
「お待たせしました」
まぁやんが料理を運んでくれた。
「すごい!まぁ兄!お皿何枚もってるの?」
「4枚だよ。これも練習したもんなー」
「へー!」
まぁやんは飲食業のホール術、特に西洋料理のレストランを学んだ。
苑香さんに指導してもらったり、自ら本を買って読んだりした。
「あいつ、一度ハマるととことん追求するタイプだから、今がちょうどスポンジみたいに吸収しているところだな」
幼い頃から見てきた龍弥だからこそ、彼の適性を見抜き、導くことができた。
苑香さんがまぁやんを呼び、
「今日はもう予約も無いし、落ち着いたから上がっていいよ」
「でもまだ締め作業も…」
「今日は、家族水入らずでしょ?あっちのテーブルで食事していきなさい」
「苑香さん…」
苑香さんはやっぱりプロである。相手の心情や求めていることを瞬時に理解して行動に移す。
「ありがとうございます!」
まぁやんは3人の席に向かった。
「おお!お疲れ!座れよ!」
まぁやんのグラスにもワインが注がれた。
「じゃ!改めて。家族に!」
『家族に!』
少しの間だが、初めての4人家族での食事であった。
血は繋がってはいないが、彼らの結束は血の結束よりも強固なものであった。
「まぁ兄?家族ってね、結婚できないんだよ」
「ぶ!恋、どこでそんなこと」
「学校!わたし、まぁ兄のお嫁さんになりたいのー」
「ぶ!ははははは!」
「なんで笑うのー!」
「ごめん!ごめん!恋、大きくなったらな!」
まぁやんは恋の髪の毛をくしゃくしゃって撫でた。
恋はこれが大好きであった。

それから数日後の事であった。
まぁやんが苑香さんに呼ばれた。
お店に行くと、苑香さんと雷斗がいた。
「よっ!お疲れ!」
「おっ!雷斗」
「まぁやん、お疲れ様」
「苑香さん、お疲れ様です」
雷斗は苑香とまぁやんを見て
「すっかり上司と部下って感じだな。驚いたよ」
「いや…やっぱ自然とそうなるしょ?ここのオーナーなんだから」
「私は…普通通りでも良かったんだけど…」
「いやいや!無理っす!」
まぁやんは手を振りながら答えた。
「そうそう!今日呼んだのはね…まぁやん、会社に面接受けてみない?」
「へっ!?」
「実はね、この間私の知人で、会社やってる人がいてね、まぁやんの仕事ぶりをみて興味が湧いたって!本人がその気なら是非面接受けてみないかって」
「……」
「どうだ!まぁやん!チャンスじゃねぇか?」
「…是非、チャレンジさせてほしい!」
「よし!それでこそまぁやんだ!」
「わかった!じゃあ早速話通しておくね」
「お願いします!」
まぁやんは自らの道をどんどん歩んでいった。
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