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Scene07 殺さない殺し屋

66 探しもの

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サイレンが鳴り響く。
唸る声。
怒涛の声。
いろんな声が混じる。
ゆっくりとゆっくりと入ってくる。

「ジルくん!」

誰かがジルの体を揺すっている。
ジルにはその声が誰のものかすぐにわかった。

「よう……先生」

ジルは青ざめる顔の中、皮肉っぽくそういった。

「意識は戻ったね?
 止血はしたよ。あとは救急車が来るのを待つだけだよ」

「亜金は?」

「わからない。
 見つからないんだ。
 君を刺したのは亜金くん?」

「違う。女だ。薬がどうのこうのっていって亜金を連れて行った」

「そっか……守れなくてごめん」

十三が申し訳無さそうに謝った。

「気にするな、俺はまだ死んじゃいねぇ」

「十三さん。
 救急車が来ますよ」

大輔がそういうと十三がうなずく。

「ありがとう」

鳴り響くサイレン。
ジルはその音に安心したかのように眠った。

「ジルくん?」

十三がジルの顔を心配そうに見る。

「ちょっと失礼」

大輔がそういってジルに触れる。

「生きろ」

ただひとことそういった。

「ん?なにをしたの?」

「そんな大したことはしてないです」

大輔は小さく笑うとジルの顔色が良くなる。

「そっか」

「救急隊の人たちこっちです」

海夜が隊員たちを誘導して連れてくる。
そしてジルは運ばれていった。

「さて状況を報告してもらえますか?」

将門がそういって現れ真剣な目で十三の方を見た。

「こちらも状況がわからない状態です。
 ジルくんの話だと亜金くんもさらわれたみたいですし」

「朝倉議員の娘さんもさらわれました。
 こちらも厄介ですね。
 亜金くんのことを調べたのですが……
 6歳の頃に身元を詩空孤児院に預けられています。
 孤児院の前は研究所で育てられているそうです」

羅輝が資料を見ながらそういった。

「研究所?」

十三が首を傾げる。

「はい、テオスの研究所ですね」

「そんなのすぐにわかるもんなんですか?」

大輔の質問に羅輝が答える。

「ああ、それも問題だな。
 あっさりとここまで情報が出た。
 こういう場合考えれるのがひとつある。
 つまり『亜金くんに関して隠したい情報がある』ってことだ」

「そうだね。
 でも、その情報は後にしよう。
 早く亜金くんと東さんを見つけないと。
 なんで誘拐したかはわからないけど……」

十三は小さくうなずいた。
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