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Scene05 クレープ時々晴れ 

45 デスます死ましょ

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「デスゲー♪デスゲー♪デスってけー♪」

人気アイドルのハイジが歌う。
静かに歌っては大きな声を出して。
あーでもない、こーでもないと頭を悩ませる。

「おーおーおー!悩んでるな青年!」

20代半ばの女性がそう声を掛ける。

「ユキか……
 お前から声を掛けるなんて珍しいな!」

「うん。
 ちょっと声をかけたくなったんだー」

「そうか……で?なんかようか?」

ハイジがそういって優しく笑う。

「あの子たち死んじゃったよ」

「ああ。死んだな」

「ケイに殺されたんだって。
 しあわせだね」

「そうだな……じいさんに殺されるんじゃなかったのはよかったよ」

「うん」

ケイはそっと傘を広げた。

「なんかやっかいな子が警察署に入ったよ」

「みたいだな。
 じいさんたちは、アイツをテオスに入れたがっているな」

「うん、私は反対なんだ。
 だってこの子には親がいて友だちがいる。
 戸籍がなかったあの子たちとは違う」

「まぁ、アイツも俺ら側の人間だろうよ。
 アイツらの報告を聞く限りの情報になるが、人間に対して恨みを持っている感じだ」

「そうだね。
 酷いいじめを受けていたみたいだし。
 素質はあると思う」

「ちゃっちいが能力もある。
 相手の感情を自在に操る能力だな。
 チンピラ相手に使っていたのを目撃したやつがいる」

「殺気を操るとかそんな能力じゃなかったの?」

「アイツはアイツの能力に恐怖している。
 その気になればハーレムを作れるのにな。
 それをしない、できないのではなくしないんだ」

ハイジはそう言って空を見上げる。

「そうだね。
 ああ。私惚れさせられたらどうしよう?」

「気をつけろよ。
 でも、今のところ能力を使って人を操るってことはしていないみたいだな」

「お利口さんなんだね」

ユキが笑う。

「まぁ、そこが俺らとアイツの差だな」

「あー、私もクレープ食べたいなー」

ユキが口を尖らせる。

「コンビニで買ってきてやろうか?」

「えー?いいの?」

「ああ、そんくらいいくらでも奢ってやるよ」

「本当に?」

「ああ」

「後悔するよ?」

「クレープでか?」

「うん」

「どんとこい!」

「じゃ、数億個お願いする」

「はい?一生かけても食いきれないだろ?」

「うん、世界で植えて苦しむ人全てにあげるの」

「そうか」

「じゃ、約束だよ」

「任せろ」

ハイジは笑うと拳を握った。
ユキはその拳に自分の拳を当てた。

「はい、約束」

そして、ユキも笑った。
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