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Scene03 コインロッカーと女の子

26 戸惑うということ

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鈍い音が響く。
2度響く。

大輔がその音に気づく。
身元がない存在が隠れる場所なんて多くない。
大輔は、あの古民家に目をつけていた。
古民家の前で耳を押さえて小さく震えている由香を見つけた。

「由香ちゃん?」

由香が大輔の声に気づく。

「大輔さん?」

「大丈夫だった?」

「私は大丈夫だけどお兄さんが……お兄さんが殺されちゃう!」

「え?」

「あの家にいる人!悪い人じゃないの!
 だから、大輔さん助けてあげて!」

りのあたちが少し遅れてやってくる。

「ちょっと早いよー」

そして大輔は言う。

「あの古民家の中に行ってきます!
 由香ちゃんをよろしくね!」

大輔は再びその古民家の中へと入った。

「え?」

「俺は大輔を追う」

羅輝がそう言って楽空を連れて古民家の中へと入った。

「……糞が」

大輔の気配に気づいた男の声が響く。。

「アンタは……」

大輔は大輔は言葉を失った。
腹部から大量の血を流している男の姿が目に入ったからだ。

「ガキはどうなった?」

「ガキ?」

「ちっちゃいガキだ。
 俺が誘拐した……」

「由香ちゃんのこと?大丈夫だよ」

大輔がそういうと男は小さく笑った。

「ならよかった」

「教えてくれないか?」

「ん?」

「親ってものは子どもがかわいくないのか?」

「え?」

「あのガキが言ってた。
 自分が、可愛くないから捨てられたんだと」

「そんなこと……」

大輔は言葉に詰まる。

「教えてくれ。親ってのは子どもは可愛くないのか?」

「それは……」

親にも色んな種類がいる。
普通は可愛いと思うだろう。
でも、そうじゃない親もいる。
だから迷う。
でも、ここは……

「親はみんな――」

そういいかけたとき。
男は既に息絶えていた。
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