～マーメイド～

Scene07 赤月よりも青きもの

90 パンチ女子

もしも自分に子供が産まれていたらこの子と同じくらいだったのではないか。
そう思うとマスティマの目に涙が浮かんだ。

「泣きたいのはこっちなの！」

自由が地団駄を踏む。

「自由、どうしたの？」

十三が心配する。

「パパは世界で一番弱いの！」

「えー」

十三は口をとがらせる。

「だってパパ！
　カニさんにじゃんけん負けるもん！」

自由は言葉を続ける。

「マジか……」

ハイジが驚く。

「まぁ、それはおいておいて。
　紫さんは、僕が預かるよ。
　学校には行ってもらう」

十三の言葉に紫の表情が曇る。

「どうしても？」

「大丈夫、いじめられないよ。
　中高一貫校で、僕の勤め先だよ」

「なら安心だ」

ハイジが笑う。

「俺もいるしな」

「誰？」

突然現れた男に壱は警戒する。

「俺の名前は桜庭百道！」

「あ、中学生のボクシングチャンピオンだ」

裕也が思い出したように言う。

「パパなんて百道のパンチで一撃なの！」

「今日はどうしてそんなに僕のことをデスるんだい？」

「知らないの！
　胸に手を当てて聞いてみるの！」

じゃ失礼して……

十三は自由の胸に手を当てようとする。
自由は十三にパンチした。