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Scene03 大好き
30 ぱんぱかぱ~ん
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そして、時は戻る……
梨麻のスマホが唸る。
番号は非通知。
梨麻は、なんの躊躇いもなく電話に出る。
「はい」
名字は名乗らない。
最低限の警戒だ。
「舟橋梨麻さんの携帯で間違いないですか?」
「そうっすけど。
貴女は?」
「玲奈の名前は、そうですね……
ナイトメアとでも名乗っておきましょうか」
女性は、そう言って笑った。
しかし、梨麻はその電話に不快感しか感じなかった。
「イタズラなら切りますよ?」
「切らないでください。
貴女に耳寄りな情報があるのです」
「耳寄りの情報?」
梨麻は、首を傾げた。
「貴方の大切なものはなーんだ?
ヒント、もう亡くなっているもの」
梨麻には、なんのことかさっぱりだった。
梨麻が電話を切ろうとしたその時。
玲奈は、言葉を続ける。
「エルフってご存知ですか?」
「エルフってクローン兵の?」
クローン兵。
それは、優秀な人のクローンを作り戦争の道具に使われる存在だ。
「そうです。
貴方は、選ばれたのです」
玲奈の言葉に梨麻は、ますます混乱する。
「エルフは、クローン兵だけが商売じゃないのです。
貴方の大事な人を生き返らせることができるのです」
梨麻は、噂で聞いていた。
恋人や家族など、亡くなった人のクローンを作り代わりに可愛がる人がいることを……
そして、黒い噂もある。
アイドルのクローンや片思い中の人のクローンを作り愛するだけに作られる存在もいることを。
それは、もちろん許されないことだった。
しかし、お手軽にクローンが作れるようになったこの世界。
そういう存在の流れは、闇に葬られてきた。
エルフは、マーメイドとは異なり遺伝子技術に優れている。
クローンは、寿命が短いと言われていたのは昔の話。
今は、成長具合から寿命まで自在に調整できる。
脳さえ損傷しなければクローンの技術でいつでも再生できる。
極端な話、被験体の髪の毛1本さえあればクローンのクローンが作成できる。
そんな世界になってしまった。
人間のクローンを作ることも簡単になったが、その一部である臓器を作ることは少し難しいが以前に比べれば楽になった。
臓器のためにクローン人間を作ることは違法なのだが。
臓器だけを作ることは、誰にも禁止されていない。
禁止する理由もないからだ。
エルフは、医療方面でもかなり貢献している。
救われた人も多い。
それ故、エルフがやっている行動に批判する人はいるものの大きな声で反対出来るものはいない。
エルフは、気まぐれな会社でもあることも有名で、年に一度だけ精巧なクローンを作っている。
死ぬ前の髪の毛1本の提供で、その存在の記憶を元通りに蘇らせれることができる。
蘇るといえば、語弊があるかもしれない。
蘇ったとしてもクローンはクローンなのだ。
梨麻は、そんなことわかっていた。
でも、心の中では割り切れない。
「なにをすればいいんですか?」
梨麻の声が震える。
玲奈が、その声のトーンを聞いて嬉しそうに言った。
「契約……しますか?」
「はい」
契約は前払い。
もう、あとには戻れない。
それでも梨麻は前に進みたかった。
奈々が亡くなってから人間とセックスをすることができなくなった。
どんな美女に迫られても、セックスしないためゲイだと噂されることもあった。
それでもよかった。
そうでもよかった。
自分がほんの少しでも許されるのなら……
また、奈々のあの言葉が聴けるのなら……
「お兄ちゃん大好きだよ」
その言葉をもういちど聞きたくて……
梨麻は悪魔に魂を売ったのだ。
梨麻のスマホが唸る。
番号は非通知。
梨麻は、なんの躊躇いもなく電話に出る。
「はい」
名字は名乗らない。
最低限の警戒だ。
「舟橋梨麻さんの携帯で間違いないですか?」
「そうっすけど。
貴女は?」
「玲奈の名前は、そうですね……
ナイトメアとでも名乗っておきましょうか」
女性は、そう言って笑った。
しかし、梨麻はその電話に不快感しか感じなかった。
「イタズラなら切りますよ?」
「切らないでください。
貴女に耳寄りな情報があるのです」
「耳寄りの情報?」
梨麻は、首を傾げた。
「貴方の大切なものはなーんだ?
ヒント、もう亡くなっているもの」
梨麻には、なんのことかさっぱりだった。
梨麻が電話を切ろうとしたその時。
玲奈は、言葉を続ける。
「エルフってご存知ですか?」
「エルフってクローン兵の?」
クローン兵。
それは、優秀な人のクローンを作り戦争の道具に使われる存在だ。
「そうです。
貴方は、選ばれたのです」
玲奈の言葉に梨麻は、ますます混乱する。
「エルフは、クローン兵だけが商売じゃないのです。
貴方の大事な人を生き返らせることができるのです」
梨麻は、噂で聞いていた。
恋人や家族など、亡くなった人のクローンを作り代わりに可愛がる人がいることを……
そして、黒い噂もある。
アイドルのクローンや片思い中の人のクローンを作り愛するだけに作られる存在もいることを。
それは、もちろん許されないことだった。
しかし、お手軽にクローンが作れるようになったこの世界。
そういう存在の流れは、闇に葬られてきた。
エルフは、マーメイドとは異なり遺伝子技術に優れている。
クローンは、寿命が短いと言われていたのは昔の話。
今は、成長具合から寿命まで自在に調整できる。
脳さえ損傷しなければクローンの技術でいつでも再生できる。
極端な話、被験体の髪の毛1本さえあればクローンのクローンが作成できる。
そんな世界になってしまった。
人間のクローンを作ることも簡単になったが、その一部である臓器を作ることは少し難しいが以前に比べれば楽になった。
臓器のためにクローン人間を作ることは違法なのだが。
臓器だけを作ることは、誰にも禁止されていない。
禁止する理由もないからだ。
エルフは、医療方面でもかなり貢献している。
救われた人も多い。
それ故、エルフがやっている行動に批判する人はいるものの大きな声で反対出来るものはいない。
エルフは、気まぐれな会社でもあることも有名で、年に一度だけ精巧なクローンを作っている。
死ぬ前の髪の毛1本の提供で、その存在の記憶を元通りに蘇らせれることができる。
蘇るといえば、語弊があるかもしれない。
蘇ったとしてもクローンはクローンなのだ。
梨麻は、そんなことわかっていた。
でも、心の中では割り切れない。
「なにをすればいいんですか?」
梨麻の声が震える。
玲奈が、その声のトーンを聞いて嬉しそうに言った。
「契約……しますか?」
「はい」
契約は前払い。
もう、あとには戻れない。
それでも梨麻は前に進みたかった。
奈々が亡くなってから人間とセックスをすることができなくなった。
どんな美女に迫られても、セックスしないためゲイだと噂されることもあった。
それでもよかった。
そうでもよかった。
自分がほんの少しでも許されるのなら……
また、奈々のあの言葉が聴けるのなら……
「お兄ちゃん大好きだよ」
その言葉をもういちど聞きたくて……
梨麻は悪魔に魂を売ったのだ。
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