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童話:もしもマッチ売りの少女がA型だったなら~2021

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 物語:もしもマッチ売りの少女がA型だったなら~2021
  作:おねこ。

 ひどく寒い日でした。
 雪も降っており、周りはすっかり暗くなりもう夜。
 今年、最後の夜でした。
 この寒さと暗闇の中、ひとりのかわいそうな少女が道を歩いておりました。
 頭に何もかぶらず、足に何もはいていません。
 家を出るときには靴をはいていました。
 確かにはいていたんです。
 でも、靴は何の役にも立ちませんでした。
 少女にしてみれば、それはとても大きな靴で、これまで少女のお母さんが履いていたものでした。

 かわいそうなことに道を大急ぎで渡ったとき、少女はその靴の片方をなくしてしまいました。
 2台の馬車が猛スピードで走ってきたからです。
 片方の靴はどこにも見つかりませんでした。
 もう片方は浮浪児が見つけ、走ってそれを持っていってしまいました。
 少女は小さな裸の足で歩いていきました。
 両足は冷たさのためとても赤く、また青くなっておりました。
 少女は古いエプロンの中にたくさんのマッチを入れて一つ手に持っていました。

「マッチはいかがですか~?
 マッチは……」

 寒い寒い雪の中……
 マッチはひとつも売れません…
 お腹は空きました。
 けれど、家に帰るなんて冒険はできません。
 このまま帰ったら、お父さんに殴られてしまいます。
 それに家だって寒いのです。
 大きなひび割れは、藁とボロ切れでふさいでいます。
 隙間風からピューピューと音をたてて吹き込みます。
 少女の小さな両手は冷たさのためにかじかんでいました。

「マッチはいかがですか?
 マッチは……」

 誰一人として、少女の姿を見ることはありません。
 少女は、マッチを道行く男の人の前に差し出しました。
 男の人と目があった少女は、すかさずこう言いました。

「マッチいかがですか?
 マッチは――」

 すると、その男の人は、少女の体を突き飛ばしたのです。

「ガキが邪魔なんだよ!」

 少女は、暫くその場を動けませんでした。
 お腹の辺りがひんやりと冷えているのも忘れボソリと呟きました。
 先程の男の人が通り過ぎるのを確認すると、少女はゆっくりと起き上がりました。

「チッ……
 これ効率が悪すぎ……!」

 少女の中で何かが壊れました。
 少女は舌打ちすると、その場を去りました。
 家に帰ることにしたのです。
 少女を愛してくれたお婆さんはもういません。
 少女の帰りを待ってくれる人なんてもういません。
 いるのは少女が稼いだお金を待っている父だけでした。

「マッチは売れたのか?」

 少女は、父の問いに首を横に振りました。

 ――パチン!

 大きな音が部屋の中に響きました。
 少女は頬を押さえ、父を睨みました。

「何だその目は!」

 ――パチン!

 再び少女の頬は父により叩かれました。
 私のせいじゃない、効率が悪いからなんだ。
 少女は、そう思いながらも父に謝りました。
 そして、与えられた食事は、パンとミルクだけでした。

「稼がざるもの食うべからずだ!
 パンとミルクが与えられるだけでも幸せに思うんだな!」

 少女は、頭を下げてお礼を言いました。




 ――次の日の朝。

 少女はいつもよりも早い時間にマッチを売りに行きました。
 まずは駅に向かいました。
 それは朝の駅の方が、人の数が多いからです。
 どの辺りが一番、人が多いか調査をしているとあることに気づきました。
 タバコの吸殻とマッチの捨て殻が同時に捨てられている場所を見つけたのです。
 そこは喫煙所でした。
 少女は、何かを見つけたような顔をして、手を叩きました。

「ターゲットを喫煙者に絞ればいいんだわ」

 でも、マッチはみんな持っている。
 そこで、少女は考えました。
 タバコを吸う人は、灰皿が置いてある場所でしか吸えません。
 なぜなら、タバコの吸殻でよくボヤが起きるからです。
 最近、立て続けにタバコの吸い殻が原因で、ボヤがありました。
 なので、吸殻を捨てるのは灰皿がある場所と決まったのです。
 そして、少女は考えました。
 灰皿を携帯できたらいいのに……
 でも、そんな道具は持っていません。
 少女は、マッチ箱からマッチを取り出すと少し細工をしてから、タバコを吸っている男の人の近くに行きました。

「あのすみません」

「なんだいお嬢さん?」

 少女は恐る恐るタバコケースを差し出しました。

「あ、マッチなら足りているからいらないよ」

 男の人は手を振りながら、少女を拒絶しました。

「ま、マッチの事じゃなくて……
 吸殻の事でお話が……」

 男の人は、眉毛をピクリと動かした。

「私は、きちんと灰皿の上で吸ってるよ?」

「そうじゃなくて・……
 『どこでもタバコが吸えたらいいのにな』って思ったことありませんか?」

 男の人は、ため息混じりに言いました。

「思うこともあるけど……
 こればかりは、どうする事も出来ないよ」

 男の人は、そう言って苦笑い。

「あの、良かったらコレを使ってください」

 少女は、先程細工したマッチ箱を取り出しました。

「これに、タバコの吸殻を入れてください」

「燃えないのかい?」

「はい、騙されたと思ってどうぞお願いします」

 男の人は、ためしにとその箱の中に吸っていたタバコの吸い殻を入れました。

「え?これ本当に燃えないんだ?
 これは便利だねぇ」

 男は、そう言うと5ドルを少女に渡すと満足げにその場を去りました。
 少女は、これはいける!と思いました
 そして少女は、次々とマッチの箱に細工をして売りに出しました。
 男の人たちは、単純でその箱を手に入れると喜んでその場を経ちました。

  余ったマッチはどうしよう。
  そうだ、タバコの火をつけるときマッチを一番使うのなら……
  タバコ屋に持っていこう!
  少女はそう思うと、すぐにタバコ屋に向かいました。

「おばさんマッチ入りませんか?」

「いやぁ、私はタバコ吸わないんですよ」

「そうじゃなくて……
 タバコとマッチをセットして売るというのはどうでしょう?」

「それはいいわねぇ。
 買うわ、おいくら?」

「一本、5セントです。」

「安いわねぇ。
 マッチはまだまだいっぱいあるの?
 全部買わせていただくわ」

 これが世に出た初めての抱き合わせ販売でした。
 今ではこれをすると捕まる行為ですが、そんな法律などないこの時代とこの少女には全く関係ない話でした。
 今日の収入は1230ドル。
 これで、今日はお父さんに殴られなくてすむ。
 そもそも効率が悪いんだ。
 少女は気づいてしまったのです。
 電球がある今。
 マッチなんて喫煙者意外は、滅多に使わなくなった時代で歩行中の人がタイミングよくマッチがなくなる可能性なんて稀なことに気づいたのです。
 だからターゲットは個人ではなくお店に絞ればいいんだ。
 少女はマッチ職人の父を上手く騙し。
 お店の人に売ることにしました。
 確かに個人に売る値段より下の収益になってしまう……
 だけど「売れないよりましだな」と少女は考えました。
 少女は色んな人に頭を下げ、お店でマッチを取り扱って貰えるようになりました。
 少女の家はほんの少しずつですが、裕福になり裕福になったことで少女の父親は、少女にとても親切にしてくれるようになりました。
 それから、あっと言う間に時間が経ちました。


  ――そして15年後……

「あと一息よ!みんな頑張って!
 この仕事が終われば、みんなでご飯に行きましょう!」

「おー」

 少女はやがて大人になりひとつの会社を立ち上げました。
 元々商才があったのか、少しずつではありますが利益を上げていきました。
 これまで、大変な事も沢山ありました。
 つらく、くじけそうな事もありました。
 現在、少女はマッチ工場の社長を勤めています。
 オリジナルのシガレットケース。
 そして、前からやっていたマッチ売り。
 今は、自分から「マッチを買ってください」と頭を下げることはありません。
 逆に「マッチを下さい」と頭を下げられる。
 それくらい大きな会社になったのです。
 こうして、マッチ売りの少女は、大きな大きなマッチ会社の社長になったのです。
 そして、驚くことにマッチ売りの少女の怠け者な父親は今では立派な発明家になりました。
 火をつけたマッチから映像が現れる技術を見つけたのです。
 技術がないため音は出せませんでしたが、好きな人や家族の写真が現れるだけで当時は凄いものでした。
 その技術は今でも受け継がれ数兆ドルを超える特許技術を得てマッチ売りの少女は未来永劫しあわせに暮らしました。

 めでたしめでたし

 おしまい
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