2 / 23
01 平和を知らない王子
02
しおりを挟む「……あ」
亜金は、今日も創造魔法に失敗しました。
四角い氷を犬の形に変えなければいけないのに亜金が作ったのはキリンでした。
「ああ、亜金。
あなたはなんてセンスが無いのでしょう」
そう言って、創造魔法の先生に怒られました。
そして、今度は剣術の授業。
竹刀を持った数人の男たち。
男たちは容赦なく亜金を殴ろうとします。
亜金は、攻撃をきれいに避けます。
でも、避けるだけでは戦いになりません。
亜金は、疲れ果てすぐに男たちに一発ずつ殴られていきます。
「ああ。亜金。
お前はなんて弱いんだ!」
そう言って、剣術の先生に怒られます。
続いて学問。
「さぁ、3分以内にこの数式を解んだ亜金!」
「はい」
亜金は一生懸命考えます。
でも、文章がなにを言っているのかわかりません。
「はい、時間切れ!
亜金、なんでひとつも解けないんだ?
3分もあれば、お前の兄たちや弟たちは、最低でも10問は解けるんだぞ?」
亜金は、魔術、剣術、学問。
どれをやっても怒られていてばかり。
怒られて悔しくてつらくて毎日毎日泣いていました。
そして、そんな亜金を見かねた王子さまは、亜金に言いました。
「亜金、お前にはなにを教えてもなにも覚えない」
「ごめんなさい、おとうさま」
「残念だが、亜金。
今日でサヨナラだ」
「え?どういうことですか?」
「私はもう決めたのだ。
亜金、お前を追放する」
「追放?」
「さぁ、国から出ていくのだ。
いいか?お前は誰からも愛されることはない。
だから、誰も愛するな。
それが、父親からお前に言える最初で最後のアドバイスだ」
「そんな!
だって今日は――」
王子さまは手に魔力を込め亜金の頭にそっと手を当てました。
亜金の意識は遠くなっていきました。
どうして?
父上、どうしてですか?
だって今日は……
今日は、僕の3歳の誕生日なのに……
亜金は口に出したい思いをぐっと我慢しました。
そして、気づいたときそこには王子さまも先生もいません。
いるのは獣のような耳を持った少女。
お尻には七本の尻尾。
少女は目を細め亜金の方を見ます。
「君は誰?」
亜金の言葉に少女は言いました。
「お前こそ誰だ?」
少女の言葉は冷たく響いていました。
でも、少し恐怖に震えていました。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる