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Scene.03 うたうよころび

64 宴会の準備

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「広い……」

一は絶句した。

「お食事は18時半に宴会席でありますので、それまでにいらしてくださいね」

女将がそう言うと十三が答える。

「ありがとうございます」

「いえいえ、楽しみにしてますね」

「はい」

十三がそう言って親指を立ててグッドポーズをする。
女将は軽く頭を下げてからその場をあとにする。

「あの……女将さん。
 楽しみって言ってませんでしたか?」

「そうだよ。
 宴会場で歌ってもらうんだよ?」

「え?」

百道と一が固まる。

「あれ?海夜さんから聞いてなかった?」

「聞いてないです」

「あらら」

すると女子組が現れる。

「斎藤くん!今、海夜さんから聞いたんだけど……!!」

「うん、僕たち歌うみたいだね」

「どうしましょう?
 楽器持ってきてないですよ?」

蜜柑が慌てる。

「楽器ならあるよ?」

十三がケロッとした顔で言う。

「もしかして先生。
 異次元ポケットとか開発しました?」

葉月が冗談でそういった。

「え?なんで知っているの?」

十三が驚く。

「えー!!」

みさきも驚く。

「冗談だよ。
 楽器はあらかじめ旅館の人に用意してもらってるんだ」

「え?」

一は戸惑う。
楽器は自分用に仕上げるものだ。

「チューニングする時間はあるよ。
 ほらこっちに来て」

一たちは十三に案内されるまま楽器室に向かった。

「滅茶楽器あるね……」

葉月が驚く。

「自分にあった楽器を選ぶといいよ。
 と言っても宴会用なのでそんなに緊張しなくていいからね」

十三がそう言うと小さく笑った。

それぞれ自分の持っている楽器に近いものを見つけると会議を始める。

「そういえば百道くん、得意な楽器とかあったりする?」

一が改めて尋ねる。

「俺はこれだ」

百道がそう言って電子サックスを鞄から取り出す。

「え?電子サックス?」

「おうよ!じいちゃんが楽器のひとつやふたつ出来たほうがいいって言っててな。
 弦楽器とかだとチューニング難しいだろ?
 コイツならチューニングは比較的簡単だと思ってな。
 音量も調整できて俺のお気に入りだ」

百道はそう言って小さく笑った。

「でさ、歌はどうする?」

葉月がそう言うとみさきが言う。

「宴会ですし既存の曲を歌うのはどうでしょう?」

「そうね……
 ちょっと女将さんにお客さんの年齢層を聞いてきます」

峰子がそう言って楽器室を出た。

「あ、私も付いていきます!」

蜜柑も追うように部屋を出た。

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