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Scene06 青春してますか?

139 いちごミルク⑦

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「ただいまー」

萌は、いつもと変わらない感じで挨拶をした。

「おかーさん!」

萌の帰宅に一番先に飛びついたのは長女の桃だった。
ぬいぐるみを下に落として真っ先に萌の胸の中に飛び込んだ。

桃は、幼いなりに萌の状態に気がついていた。
だから、母親の腕から離れようしなかった。

瓜が桃をからかうようにこう言った。

「桃のあまえんぼー」

萌は優しく瓜に言った。

「瓜もおいで…」

「ぼ、僕は男だからそんな事しないもん……」

瓜は声を震わせながらそう言った。

「いいから、おいで」

萌がそう言うと、瓜は涙をこらえながら萌の胸に飛びついた。

瓜は、泣いているのを誤魔化そうと声を出さず鼻で泣いた。
瓜も瓜なりに母親の状態を悟っていた。

三太郎は、その光景を無言で見つめていた。
唇をかみ締め、自分が泣けば、萌に悟られる。
そう心に言い聞かせ黙って見つめていた。

それから、一時間が過ぎた。
すると瓜と桃も落ち着いたのかゆっくりと萌から離れた。

「今日の夜、何が食べたい?
 久しぶりだから、お母さん頑張っちゃうぞー」

「僕オムライスがいい」

「桃もー」

「え?
 そんなので良いの?
 他にほら、お寿司を頼むとかさ。
 なんなら、萌や桃の大好きな焼肉でも!」

萌は目を丸くして、驚いた。

「オムライスがいい!」

いつもおとなしい桃が、強い口調で言った。

「そう。
 じゃ、お母さんオムライスを作るね!」

「うん!」

子供たちは、嬉しそうにうなずいた。
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