いけめんほいほい

Scene05 かなしみよこんにちわ

115 盲進

「小太郎くんも悪いのぅ」

しゃも爺が謝る。

「いやしゃも爺は悪くないですよ。
　今回に至っては水面さんは被害者で百道くんは友達を助けようとしただけだし。
　恋次くんは連続婦女暴行犯の逮捕の協力者ですし」

小太郎が笑う。

「そうだな。
　恋次くんは褒められるべきだ」

しゃも爺は言う。

「釜戸くんのお父さんもお母さんも来ないの？」

水面が尋ねる。

「来ないと思うよ。
　息子の僕にすらいつ戻るかわからない状態だし。
　連絡すらつかないよ」

恋次は寂しそうに言った。

「そっか」

「阿母さんのご両親は？」

「来ないよ。
　ウチも似たようなもん」

「そっか」

しんみりとした空気になる。
すると水面が言う。

「私も釜戸くんのこと恋次くんって呼んでいい？」

「え？あ、うん」

恋次は照れながら言う。

「やった」

水面が小さく喜ぶ。

「じゃ、僕も阿母さんのことは……」

「ぜひ、水面でお願いします！」

「え？いいの？」

「うん！私、この名字のせいでお母さんって聞こえるので嫌なの」

「そ、そっか……」

恋次は少し照れる。
水面も照れる。

「よろしくな！恋次！」

百道が笑う。

「おう、百道もよろしくね！」

「ああ！」

百道も笑う。
そして水面がじっと恋次を見る。

「水面さんもよろしくね！」

「うん！恋次くんよろしく！」

「さて……もう深夜の1時をすぎる……
　水面さんは、婦警が送っていくので恋次くんは僕が送るよ」

「げ、もうそんな時間かー」

「百道はこのあとは盲進文だな！」

「なんだよ。盲進って？」

しゃも爺のことばに百道が尋ねる。

「あとさき考えずにひたすら進むこと……ですか？」

小太郎が答える。

「そうじゃ。
　百道はなんだかんだ考えて考えて考えて悩んで。
　その間に時間がすぎることがあるからのぅ！
　今日みたいに友を助けるために進んだ気持ちを忘れないように。
　日記をつけるのだ」

「マジか……」

百道は少しだけへこんだ。