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Scene03 麦わら帽子はまだ早い

63 麦わらの少女

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「……さぁ、ホームルームはじめるよ」

十三がそう言って教室に入ってくる。

「先生、一時間目はなんですかー?」

生徒の一人がボケる。

なので十三もボケる。

「一時間目は水泳だよ」

「えー
 ツッコんでくださいよ」

生徒が凹む。

「僕は今、大人の厳しさを教えているんだ。
 いいかい?ボケたからと言ってツッコんでもらえるとは限らないんだ。
 世の中ボケたらボケ返されることのが多い。
 それどころか気づかれないことも多い。
 覚えておいて。
 この世にはボケても返してくれない大人の方が多いんだ。
 これが先生の最初の授業だよ」

「いや、なんの授業だよ」

百道が小さく笑う。

「こうやってツッコミを入れてくれる百道くんが先生にしてみればありがたいよ」

クラスは百道に拍手を送った。

そんな世界。
そんな世界に遅れて入ってきた少女。

少女は麦わら帽子をかぶっている。

「遅刻?」

「遅刻じゃないです」

少女は顔を隠す。

「えっと君は誰?」

「さぁ、誰でしょう」

「まぁ、いいや出席を取るね」

「……え?無視」

「川本真琴さん」

「え?」

麦わら帽子の少女が十三を見る。

「返事がないね。
 じゃ、欠席と――」

「欠席じゃないよ!
 ここにいるよ」

少女はそう言って麦わら帽子を脱いだ。
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