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Scene02 そんなこんなで卒業式

16 名前もない花

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名前もない花には名前をつけましょう。

恋次は歌う。

本日の視聴者数は15人。

実は無名の恋次からしてみれば凄いこと。

卒業式の夜にひとりYou Tubeで歌う。

なんなら泣いてもいい。

でも、泣いても何も変わらない。
今ここで涙を流しても誰も気づかない。
恋次にはそれを知っている。
知っているけど涙があふれる。

そんな世界。
そんな空気。
そんな世間。

失恋していないのに失恋した気分になる恋次なのであった。

ところで名前もない花に名前をつけれるのか。

花の種類は世界で20万種類以上あると言われている。
一説によると30万種類ともいわれている。

そんな世界で名前もない花を見つけることなどできるのか。

なかなか難しいだろう。

そんなとき思ってしまう。

世界で自分を見つけて貰える確率とは……

ちっぽけで小さいミジンコのような存在。

見つけてもらう側でもあり見つける側でもある。

でも、誰にも見てもらえない人生なんて寂しすぎる。

それも人生。
それが人生。
それが世界なのだ。
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