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08 イツワリのカガクシャ

73 僕が守る

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 世界は暖かく。
 そして冷たい。

 それはセロが4歳のころ。

 セロの屋敷にヒーローの群れがやってきた。

「わぁー!
 お父さん、お母さん!
 有名なヒーローがこんなに沢山来たよ!」

 幼いセロは、無邪気に騒ぐ。

「ガキか?どうする?」

 目をキラキラと輝かせるセロ。

 しかし、ヒーローはそんなセロの身体を蹴り飛ばす。

「殺しとけ」

 セロは、自分に何が起きたかわかっていない。
 ただ痛い。
 それだけだった。

 セロが起き上がったとき。
 セロの父親と母親の胸に穴が空いていた。

「え?なにしているの?」

「なんだ?死ななかったのか?」

 ヒーローがセロに向かってそういった。

「え?え?え?」

 セロには何が起きたかわからない。

「……お逃げください」

 オトネの父親がそういってセロの前に立つ。

「え?お父さんとお母さんは?」

「もう亡くなっています」

 オトネの母親がそういうとオトネに指示を出す。

「オトネ、坊ちゃまを安全な場所へ!」

「お母様!お父様!オトネに任せるのです!」

 オトネがセロの手を引っ張る。

「でも!」

 セロが駄々をこねる。

「こういうときどうすればいいかわかるか?」

 ヒーローがセロめがけて銃弾を放つ。

「オトネの方が強いですます!」

 オトネが腕から音が鳴り響き。
 その銃弾を弾き飛ばした。

「だが俺はお前よりも強い」

 ヒーローがそういってオトネにもう一撃、銃弾を放った。
 オトネの父親の胸に穴が開く。

「貴方!」

 オトネの母親が父親の側に駆け寄る。

「目的はオトネって女と聞いている。
 どっちがオトネだ?」

 ヒーローは無慈悲だった。

 セロには何が起きているかわからない。

「私がオトネですます」

 オトネがそういった。

「そうか。
 お前がいうことを聞くのならその坊っちゃんと母ちゃんは助けてやるぞ?」

 ヒーローがそういってオトネの母親の胸に手を当てる。

「オトネ逃げなさい!」

 オトネの母親がそういってヒーローの身体を抱きしめる。
 しかし、ヒーローはその母親の胸に穴を開け。
 そして殺した。

「まぁ、時間の無駄だったな」

「そりゃそうだろう」

 ヒーローが自分に自問自答してセロにつめよる。

 するとひとりのセーラー服を着た少女が現れた。
 そして、数秒でそのヒーローを倒した。

「貴方は誰ですますの?」

 オトネが尋ねる。

「私の名前は清空。
 お前らの師匠になる女さ」

 清空がうなずくとセロの方を見る。

「なにが起きているのですか?」

 セロの問に清空がいった。

「……とりあえず私はこれから主の保護者だ」

「説明してください」

 セロが目に涙を浮かべながらそういった。

「私のせいですます」

「え?」

 オトネの言葉にセロがいう。

「オトネのせいじゃないさ」

「……どういうこと?」

 セロがオトネの方を見る。

「オトネが音の旋律者になったから……」

「旋律者?」

「音を奏でるものですます」

 セロには何が何だか分からない。

「セロ。
 主には力があるだろう?螺子の力」

 清空がそういうとセロがうなずく。

「はい」

「旋律者。それはメロディを奏でる者。
 それは、力を授けるもの。
 すなわちこのヒーローたちが欲しがる力なのさ」

「力を授ける?」

 セロには何も思い浮かばない。
 何もわからない。

「ああ。
 旋律者を集めれば集めるほど能力者が増える。
 奴らは、その能力者を増やすコマが欲しいのさ」

「奴ら?」

「全ての国の王さま……といえばわかるかのぅ?」

「オトネが狙われているの?」

「ああ」

 清空が表情を変えることなくそういった。

「だったら僕がオトネを護る」

「え?」

 清空が思わぬ回答に驚く。

「……護るんだ」

 セロがそういって涙を拭った。
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