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07 エトセトラ
66 サラリーマン
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「妻も子どももいないおっさんさ。
バット(武器)を持たないおっさんは。
マントを持たないおっさんさ。
空は飛べないおっさんさ。
なのにクビはすぐとぶのよ、おっさんは。
かなしみのおっさん」
そう歌う男がいる。
【お金】という文化が発達した世界で産まれた存在。
かつて男には家族がいた。
しかし、ベルゼブブという名の王の存在が現れ……
全てを奪っていった。
男には、妻も子もいない。
ベルゼブブに殺された。
復讐を誓った。
敵討ちを誓った。
しかし、誓うだけではなにも産まれない。
復讐をしたところで家族は戻ってこない。
なぜならそれが、死なのだから。
そしてなにより……
そしてなにより……
男には凶悪と戦う力がない。
だから歌うしかない。
「妻も子どももいらいおっさんさ
バット(武器)も持てないおっさんが。
マントを持たないおっさんは。
空は飛べないおっさんよ
なのにクビはすぐとぶおっさんじゃ。
絶望のおっさん」
「よう」
そういって近づいてきたモノがいた。
それは社長だ。
「社長?」
「24時間働く力は欲しくないか?」
「24時間ですか?」
「ああ、永久に働ける力だ。
私にはそれをお前に授ける力がある」
「社畜ですか?」
「そうだなある意味社畜だな。
会社のために働くのではない。
社会のために働くんだ」
「社会?なんのために……でしょうか?」
「ベルゼブブを倒すためにだ」
「え?」
「秘薬がひとつできたんだ」
社長は、そういってカプセルを1錠手のひらに乗せた。
「これは?」
「これは、最強の剣を作ろうとしてできたものさ。
これで、第二のファルシオンでも作る予定だった。
この秘薬を飲めば、ファルシオンと同程度の力こそは得れないが。
目の前の悪を倒すくらいの力は得れる。
だが、失敗すると死ぬ」
男は小さく笑う。
「いいですよ。
死ぬのもいい。
死んでもいい。
失ったものはたくさんある。
これから失うものがないのなら……
僕は!!」
男は、社長から秘薬を受け取るとそれを口の中に入れた。
そして、ゴクリと音を立てて飲み込んだ。
男の胸から溢れる感情。
憎しみでもない、苦しみでもない。
優しさでもない、愛でもない。
それは、まさに太陽。
天が平等に照らす温もり……
「おお、これは……」
社長の胸が熱くなり涙があふれる。
「この暖かい感情これは」
「まさに太陽、まさに炎」
歌が溢れる。
歌が溢れる。
「妻も子どももいないサラリーマン。
バットを持たないサラリーマン。
マントを持たないサラリーマン。
空を飛べないサラリーマン」
男の心があふれる。
涙があふれる。
「お前の名前は、サラリーマンだ!
サラりとやってきて人々を救う男!
それがサラリーマンだ!」
社長は、そう言って叫ぶ。
サラリーマンが誕生した瞬間だ。
バット(武器)を持たないおっさんは。
マントを持たないおっさんさ。
空は飛べないおっさんさ。
なのにクビはすぐとぶのよ、おっさんは。
かなしみのおっさん」
そう歌う男がいる。
【お金】という文化が発達した世界で産まれた存在。
かつて男には家族がいた。
しかし、ベルゼブブという名の王の存在が現れ……
全てを奪っていった。
男には、妻も子もいない。
ベルゼブブに殺された。
復讐を誓った。
敵討ちを誓った。
しかし、誓うだけではなにも産まれない。
復讐をしたところで家族は戻ってこない。
なぜならそれが、死なのだから。
そしてなにより……
そしてなにより……
男には凶悪と戦う力がない。
だから歌うしかない。
「妻も子どももいらいおっさんさ
バット(武器)も持てないおっさんが。
マントを持たないおっさんは。
空は飛べないおっさんよ
なのにクビはすぐとぶおっさんじゃ。
絶望のおっさん」
「よう」
そういって近づいてきたモノがいた。
それは社長だ。
「社長?」
「24時間働く力は欲しくないか?」
「24時間ですか?」
「ああ、永久に働ける力だ。
私にはそれをお前に授ける力がある」
「社畜ですか?」
「そうだなある意味社畜だな。
会社のために働くのではない。
社会のために働くんだ」
「社会?なんのために……でしょうか?」
「ベルゼブブを倒すためにだ」
「え?」
「秘薬がひとつできたんだ」
社長は、そういってカプセルを1錠手のひらに乗せた。
「これは?」
「これは、最強の剣を作ろうとしてできたものさ。
これで、第二のファルシオンでも作る予定だった。
この秘薬を飲めば、ファルシオンと同程度の力こそは得れないが。
目の前の悪を倒すくらいの力は得れる。
だが、失敗すると死ぬ」
男は小さく笑う。
「いいですよ。
死ぬのもいい。
死んでもいい。
失ったものはたくさんある。
これから失うものがないのなら……
僕は!!」
男は、社長から秘薬を受け取るとそれを口の中に入れた。
そして、ゴクリと音を立てて飲み込んだ。
男の胸から溢れる感情。
憎しみでもない、苦しみでもない。
優しさでもない、愛でもない。
それは、まさに太陽。
天が平等に照らす温もり……
「おお、これは……」
社長の胸が熱くなり涙があふれる。
「この暖かい感情これは」
「まさに太陽、まさに炎」
歌が溢れる。
歌が溢れる。
「妻も子どももいないサラリーマン。
バットを持たないサラリーマン。
マントを持たないサラリーマン。
空を飛べないサラリーマン」
男の心があふれる。
涙があふれる。
「お前の名前は、サラリーマンだ!
サラりとやってきて人々を救う男!
それがサラリーマンだ!」
社長は、そう言って叫ぶ。
サラリーマンが誕生した瞬間だ。
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