芋洗THE係長の事件簿

はらぺこおねこ。

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01 その男係長!

その男係長その2

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 王次は、深雪を警察署の生活安全課に案内した。
「玉藻ちゃん。この人の話を聞いてあげて」
 王次が、そう言ってメガネをかけた女性に声をかける。
 彼女の名前は、多摩月 玉藻(たまづき たまも)。
 大阪府平仮名警察生活安全課で、刑事をやっている。
「あ、王次さんこんばんは。なにかあったのですか?」
「うん。まぁね……とりあえず話を聞いてあげてよ。
 僕は、そろそろ帰らないと桜が目を覚ます」
「桜?」
 深雪が、そう言って首を傾げる。
「うん。
 僕には娘がいるんです」
「そうなんですか?」
 深雪が少し驚く。
「うん。
 じゃ、玉藻ちゃん後のことをよろしく!」
「はい……」
 玉藻がニッコリと微笑むと深雪が王次に声をかける。
「あの……!」
「うん?なんでしょう?」
 王次が、小さく笑うと深雪が照れ笑いを浮かべる。
「おやすみなさい」
 すると王次はゆっくりと頷くと言葉を返した。
「うん。
 おやすみなさい」
 王次は、そう言って手を振ると深雪も手を振り返した。
 そして、深雪が遺体となって発見されたのは、それから三日後のことだった。
 深雪は、全裸で橋の下に捨てられていた。
 深雪の体内にあった体液からある男のデータが一致した。
 その男の名前は、橘 勤。
 連続婦女暴行事件の容疑者で身元がわかっているものの逮捕できないでいた。
 王次は後悔していた。
 あの時、自分が橘を強引にでも逮捕していれば深雪は死ななくて済んだのっではないかと……
 王次は、その日いつもよりも早く出社した。
 しかし、強行犯係には先客がいた。
「……亜金君か、今日も早いね」
 先客の名前は、詩空 亜金(しそら あきん)。
 強行犯係に派遣でやって来た青年である。
 亜金は、王次に気づくと軽く挨拶をした。
「あ、芋洗係長おはようございます」
「ああ、亜金君おはよう」
王次は、元気なさげに笑った。
「なにかありました?」
亜金が、王次に尋ねる。
王次は、元気なさげに答える。
「うん。深雪さんのことをね……ちょっと考えていた」
「えっと連続婦女暴行殺人事件で亡くなられた川名深雪さんですか?」
「うん。僕があの時、きちんと橘を逮捕していればってね……
 考えても仕方がないのだけどね」
「そうですね……
 でも、死ぬ人間はどんな道を歩んでも死ぬわ」
 そう言って暗めの女性が現われる。
 この暗めの女性の名前は、蔵氏安 心(くらしあん こころ)。
 蔵氏安総理大臣の娘でもある。
「心ちゃん?」
 王次が、弱々しい目で心の方を見る。
「人は必ず死ぬ。その日生き延びても何らかの形ですぐ死ぬわ。
 人ってそう言う生き物なの……」
「そうかもしれないね」
 王次は心の言葉の意味はわかるが、納得はできないでいた。
 王次は、小さなため息をついた。
「そんなため息をしていたら幸せが逃げちまうぞ」
 そう言って中年の男が現われる。
「和久さん」
 男の名前は、和久 三蔵(わく さんぞう)。
 強行犯係の父親的存在だ。
 みんなから和久さんと親しまれている。
「今日の10時から、今回の事件の会議らしい。
 王次に心!あと亜金!
 しっかりと聞けよ!」
「あれ?どうして俺もその中に入っているんですか?
 俺は、派遣なのに……」
「お前は特別枠だ。俺も最初は警察に派遣なんてと思ったが……
 亜金を見ているといいもんだと思っている。
 亜金の超能力の不食はいい。俺の腰痛も直してくれんかいのう?」
「俺の能力は、不食です。不幸を食べる、それしか能力がないんですよ……」
「お前のその能力で助かった命も結構あると思うぞ?」
「あ、ありがとうございます。でも、本当に俺なんかが行ってもいいんですか?」
「どちらにせよ、お前のところに刑事どもは来るだろう?なら、一緒だと署長がお前を任命した」
「そ、そうですか……」
「それまでお前らは捜査に必要な書類を作成しておけ!」
 和久がそう言うと王次たちは返事をした。
 そして書類の作成に手を付けた。
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