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序章
オメガ性
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この世界の人類には、男女に付け加えてα、β、Ωという性別がある。
全人口のおよそ9割がβ。
βの特徴は、その体に宿る種族によって様々な獣の特徴。
耳や尻尾はもとより、体の各部位に毛並みと呼ばれる体毛の濃い場所が点在したり、種族によっては鱗、個人差は大きいが鋭く強靭な爪や牙などを持つ。
はるか過去の時代では亜人族と呼ばれたが、現在、彼らこそが一般的な人類だった。
βの性は通常の男女とまったく変わりない。
次にα。
人口の残り一割未満のうちおよそ半数と言われる確率で生まれてくる、βよりもより強く獣の特徴を身に宿して生まれてくる者。
αの特徴は何といっても全身を毛並みに覆われたその姿で、それは人というより二足歩行する獣、獣人と言って差し支えない。
そして例外なく、αは強靭な肉体と聡明な知性、先天的に高い魔力適性を持っていた。
故に、αの誕生は一族の栄誉であり、かつては吉兆の象徴や、現代でも辺境ではそうと生まれただけでコミュニティの指導者に抜擢されることすらあるという。
生まれながらの勝ち組、言ってしまえばそんな存在だ。
αもまた通常の男女と同じ性を持つが、例外として、相手がΩである場合に限り、男女性とは関係なくΩを受胎させることができるという特徴がある。
最後にΩ。
αと同程度に生まれてくるとされる先祖返りの姿を持つ者。
その体は獣の特徴と呼べる鱗も毛並みもまったく無いむき出しの肌となっていて、尻尾すら無く、耳、爪、牙など、全てが貧弱に映る。
見えるだけでなく、身体能力も一般的なβより総じて低い。
故に、労働力としては一般人以下であり、何かと下に見られたり、特に田舎や治安の悪い土地に行くほど不遇な扱いを受けることが多かった。
Ωは男も女も通常は生殖能力を持たない。
唯一例外として、αを相手に関係を持った場合のみ男女関係なく懐妊するという特殊な性別だった。
Ωが冷遇されやすい理由はもう一つある。
それは俗に『運命の番』と呼ばれる不思議な縁の存在だ。
生まれながらの勝ち組であるαは、稀にただ一人のΩに対して極めて強い情愛を示すことがある。
そうして結ばれたαとΩは、その後何が起ころうとも、その身が朽ちるまで運命を共にするという。
αは生まれながらの勝ち組である。
当然、βの中にもその恩恵にあやかり、その血筋を取り込もうとする者は数知れない。
しかし、一度運命の番と契りを交わしてしまったαとΩは、以後お互いにその相手としか心を結ぶことができなくなってしまう。
番となった二人がどんなにお互いを思い幸せだったとしても、いや、番としての繋がりが他の何にも代えられないほど強いからこそ、αの恩恵にすがろうとする数多のβからしてみれば、運命の番など邪魔者以外の何者でもないのだ。
無力で子も作れない無能のくせに、ふらりと現れてαの心を攫って行く。
そんなやっかみがΩという性別全体に降りかかり、誰が口にしたわけでもないが、その弱々しい姿で誘惑し相手をたぶらかす泥棒猫。
そんなイメージが広く定着してしまっている。
それがΩという性別だった。
全人口のおよそ9割がβ。
βの特徴は、その体に宿る種族によって様々な獣の特徴。
耳や尻尾はもとより、体の各部位に毛並みと呼ばれる体毛の濃い場所が点在したり、種族によっては鱗、個人差は大きいが鋭く強靭な爪や牙などを持つ。
はるか過去の時代では亜人族と呼ばれたが、現在、彼らこそが一般的な人類だった。
βの性は通常の男女とまったく変わりない。
次にα。
人口の残り一割未満のうちおよそ半数と言われる確率で生まれてくる、βよりもより強く獣の特徴を身に宿して生まれてくる者。
αの特徴は何といっても全身を毛並みに覆われたその姿で、それは人というより二足歩行する獣、獣人と言って差し支えない。
そして例外なく、αは強靭な肉体と聡明な知性、先天的に高い魔力適性を持っていた。
故に、αの誕生は一族の栄誉であり、かつては吉兆の象徴や、現代でも辺境ではそうと生まれただけでコミュニティの指導者に抜擢されることすらあるという。
生まれながらの勝ち組、言ってしまえばそんな存在だ。
αもまた通常の男女と同じ性を持つが、例外として、相手がΩである場合に限り、男女性とは関係なくΩを受胎させることができるという特徴がある。
最後にΩ。
αと同程度に生まれてくるとされる先祖返りの姿を持つ者。
その体は獣の特徴と呼べる鱗も毛並みもまったく無いむき出しの肌となっていて、尻尾すら無く、耳、爪、牙など、全てが貧弱に映る。
見えるだけでなく、身体能力も一般的なβより総じて低い。
故に、労働力としては一般人以下であり、何かと下に見られたり、特に田舎や治安の悪い土地に行くほど不遇な扱いを受けることが多かった。
Ωは男も女も通常は生殖能力を持たない。
唯一例外として、αを相手に関係を持った場合のみ男女関係なく懐妊するという特殊な性別だった。
Ωが冷遇されやすい理由はもう一つある。
それは俗に『運命の番』と呼ばれる不思議な縁の存在だ。
生まれながらの勝ち組であるαは、稀にただ一人のΩに対して極めて強い情愛を示すことがある。
そうして結ばれたαとΩは、その後何が起ころうとも、その身が朽ちるまで運命を共にするという。
αは生まれながらの勝ち組である。
当然、βの中にもその恩恵にあやかり、その血筋を取り込もうとする者は数知れない。
しかし、一度運命の番と契りを交わしてしまったαとΩは、以後お互いにその相手としか心を結ぶことができなくなってしまう。
番となった二人がどんなにお互いを思い幸せだったとしても、いや、番としての繋がりが他の何にも代えられないほど強いからこそ、αの恩恵にすがろうとする数多のβからしてみれば、運命の番など邪魔者以外の何者でもないのだ。
無力で子も作れない無能のくせに、ふらりと現れてαの心を攫って行く。
そんなやっかみがΩという性別全体に降りかかり、誰が口にしたわけでもないが、その弱々しい姿で誘惑し相手をたぶらかす泥棒猫。
そんなイメージが広く定着してしまっている。
それがΩという性別だった。
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