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迷いの森
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(あなた⋯⋯この街に来た時、迷いの森に入ったら二度と出てこれないって考えていましたよね?)
「とりあえずこの部屋には俺しかいないから普通に話さないか」
「わかりました。それでどういうつもりですか? まさか可愛らしい私を迷いの森に連れて行って⋯⋯前からお前のことを独り占めしたいと思っていたんだ。もう逃げられないぞ。ここで俺と二人だけで一生暮らすんだ、ゲヘヘとか猟奇的なことを言うつもりですか」
この駄猫は何を言ってるんだ? 口に出した途端、勝手な妄想を言うのをやめてほしい。
「自分から着いていくって言ったのに理不尽だ。そんなに猟奇的なことが好きなら、リリシアと二人で迷いの森に行くか?」
「ひぃっ! ご、ごめんなさい」
あれ程強気だったルルが、震えて謝罪してきた。
リリシアと二人っきりになるのがどれだけ恐怖なのか気になる所だ。
「とりあえず時間もないから行くぞ」
「わかりました。忙しいですが私も着いていってあげます」
一日十六時間寝ているルルに忙しい言われても⋯⋯
「今何か失礼なことを考えましたか?」
「いや、考えてないです」
考えていることを読まれるのは、本当に厄介だな。とりあえず余計なことは考えるのはやめよう。
ルルは俺の肩に乗り部屋を出ると、そこにはリリシアの姿があった。
「ユート様? どこかに行かれるのですか?」
「あ、ああ。時間が空いたからちょっと散歩にね」
「でしたら私も御一緒してもよろしいですか?」
「えっ?」
リリシアの提案に間抜けな声を出してしまう。危険ではないけど出来れば一人で行きたい。俺は断りの言葉を口にしようとするが⋯⋯
「私、王都以外の場所はほとんど行ったことがありませんので、とても楽しみです」
リリシアが目を輝かせてそのようなセリフを言うため、断りづらい。
(優柔不断な人ですね。男らしくないです)
(断るのに男らしいもらしくないもあるか)
だけどこういう時、どうしても前の時間軸で不幸な人生を過ごしたリリシアのことが頭に思い浮かんでしまう。
出来れば楽しいことを経験させてあげたい。そう思ったら答えは決まっていた。
「街の外に行くつもりだけどいいか?」
「はい!」
リリシアは嬉しそうに返事をする。
(はあ⋯⋯)
そして俺の甘い答えにため息をつくルルであった。
俺達は宿を出て街の北門へと向かう。
「ユート様とお出かけできるのは嬉しいですけど、ザインさんのことが少し心配ですね」
どうやらリリシアはまだザインが仮病だとわかっていないようだ。とても悲しそうな表情をしていた。
その様子をみて罪悪感が芽生えてくる。
「さ、さっきザインの様子を見てきたけど、体調はかなり良くなってきたって言ってたから大丈夫だと思うぞ」
「そうですか。それなら良かったです」
人を騙すのって辛いな。それもリリシアみたいに心が綺麗な子なら尚更だ。
(それなら私にも嘘をつくことが出来ないですね)
(ソウダナ)
俺は心にもないことを思い浮かべていると、ちょうど北門にたどり着いた。そしてそのまま門を出て北に歩きだす。
「そういえばユート様はどちらに行くご予定なのですか? この先は確か迷い森と言われて中に入ると出てこれないとか⋯⋯」
さすがに自国のことだから知っていたか。まあ何も言わずに森に案内するのは無理があるか。
「ちなみにフリーデン王国では、未開の地にあった宝物って誰の物になるんだ?」
「見つけた方の物か、もしくは国の物になりますね」
「もし森で宝物を見つけたら、俺がもらってもいいかな?」
「わかりました。ですが⋯⋯もしかしてこの先に宝物があるのですか!」
「あ、ああ⋯⋯」
リリシアはワクワクした様子で、散歩に行く時以上に目を輝かせている。
「私、宝探しなんて初めてです! この先に何があるのですか? あっ! いえ、言わないで下さい。先に何があるか知ってしまいましたら楽しみが減ってしまいますね」
本当に楽しそうだな。まあ宝探しにテンション上がるのは皆一緒か。
「ユート様、早く参りましょう」
そしてリリシアに急かされながら、俺達は迷いの森の前へと到着する。
さすがは名前負けしない程の広大な森林が拡がっているが、それだけではない。
「これは⋯⋯霧ですか」
「そうだな。ただでさえ森の中では方向を見失いやすいのに、一寸先も見えない霧まで広がっていたら、普通なら誰も入ろうとしないだろう」
ここに入ってしまったら、二度と出ることはできないと言うのも頷ける。
(やはり私とこの王女を迷いの森に閉じ込めるつもりですか!)
ルルがまた妄想を頭の中で考え始めた。
「ユート様⋯⋯この中に入るおつもりですか?」
宝探しでワクワクだったリリシアも、さすがにこの霧を見て不安な表情を浮かべていた。
「大丈夫。俺を信じてくれ」
「わ、わかりました。ユート様を信じます。ですが少し怖いのでルルちゃんを抱っこしてもよろしいでしょうか?」
「いいよ」
(いいよじゃないですよ! もし迷ったらこの王女と運命を共にすることになるじゃないですか! せめてあなたが私を⋯⋯)
ルルはリリシアの手から逃れようとするが、捕まってしまう。
「ルルちゃん、そんなに暴れて怖いのですね。大丈夫⋯⋯私がずっと一緒にいますから」
(それが一番怖いのよ!)
だがルルの心の叫びはリリシアに届くことはなく、俺達は迷いの森に足を踏み入れるのであった。
「とりあえずこの部屋には俺しかいないから普通に話さないか」
「わかりました。それでどういうつもりですか? まさか可愛らしい私を迷いの森に連れて行って⋯⋯前からお前のことを独り占めしたいと思っていたんだ。もう逃げられないぞ。ここで俺と二人だけで一生暮らすんだ、ゲヘヘとか猟奇的なことを言うつもりですか」
この駄猫は何を言ってるんだ? 口に出した途端、勝手な妄想を言うのをやめてほしい。
「自分から着いていくって言ったのに理不尽だ。そんなに猟奇的なことが好きなら、リリシアと二人で迷いの森に行くか?」
「ひぃっ! ご、ごめんなさい」
あれ程強気だったルルが、震えて謝罪してきた。
リリシアと二人っきりになるのがどれだけ恐怖なのか気になる所だ。
「とりあえず時間もないから行くぞ」
「わかりました。忙しいですが私も着いていってあげます」
一日十六時間寝ているルルに忙しい言われても⋯⋯
「今何か失礼なことを考えましたか?」
「いや、考えてないです」
考えていることを読まれるのは、本当に厄介だな。とりあえず余計なことは考えるのはやめよう。
ルルは俺の肩に乗り部屋を出ると、そこにはリリシアの姿があった。
「ユート様? どこかに行かれるのですか?」
「あ、ああ。時間が空いたからちょっと散歩にね」
「でしたら私も御一緒してもよろしいですか?」
「えっ?」
リリシアの提案に間抜けな声を出してしまう。危険ではないけど出来れば一人で行きたい。俺は断りの言葉を口にしようとするが⋯⋯
「私、王都以外の場所はほとんど行ったことがありませんので、とても楽しみです」
リリシアが目を輝かせてそのようなセリフを言うため、断りづらい。
(優柔不断な人ですね。男らしくないです)
(断るのに男らしいもらしくないもあるか)
だけどこういう時、どうしても前の時間軸で不幸な人生を過ごしたリリシアのことが頭に思い浮かんでしまう。
出来れば楽しいことを経験させてあげたい。そう思ったら答えは決まっていた。
「街の外に行くつもりだけどいいか?」
「はい!」
リリシアは嬉しそうに返事をする。
(はあ⋯⋯)
そして俺の甘い答えにため息をつくルルであった。
俺達は宿を出て街の北門へと向かう。
「ユート様とお出かけできるのは嬉しいですけど、ザインさんのことが少し心配ですね」
どうやらリリシアはまだザインが仮病だとわかっていないようだ。とても悲しそうな表情をしていた。
その様子をみて罪悪感が芽生えてくる。
「さ、さっきザインの様子を見てきたけど、体調はかなり良くなってきたって言ってたから大丈夫だと思うぞ」
「そうですか。それなら良かったです」
人を騙すのって辛いな。それもリリシアみたいに心が綺麗な子なら尚更だ。
(それなら私にも嘘をつくことが出来ないですね)
(ソウダナ)
俺は心にもないことを思い浮かべていると、ちょうど北門にたどり着いた。そしてそのまま門を出て北に歩きだす。
「そういえばユート様はどちらに行くご予定なのですか? この先は確か迷い森と言われて中に入ると出てこれないとか⋯⋯」
さすがに自国のことだから知っていたか。まあ何も言わずに森に案内するのは無理があるか。
「ちなみにフリーデン王国では、未開の地にあった宝物って誰の物になるんだ?」
「見つけた方の物か、もしくは国の物になりますね」
「もし森で宝物を見つけたら、俺がもらってもいいかな?」
「わかりました。ですが⋯⋯もしかしてこの先に宝物があるのですか!」
「あ、ああ⋯⋯」
リリシアはワクワクした様子で、散歩に行く時以上に目を輝かせている。
「私、宝探しなんて初めてです! この先に何があるのですか? あっ! いえ、言わないで下さい。先に何があるか知ってしまいましたら楽しみが減ってしまいますね」
本当に楽しそうだな。まあ宝探しにテンション上がるのは皆一緒か。
「ユート様、早く参りましょう」
そしてリリシアに急かされながら、俺達は迷いの森の前へと到着する。
さすがは名前負けしない程の広大な森林が拡がっているが、それだけではない。
「これは⋯⋯霧ですか」
「そうだな。ただでさえ森の中では方向を見失いやすいのに、一寸先も見えない霧まで広がっていたら、普通なら誰も入ろうとしないだろう」
ここに入ってしまったら、二度と出ることはできないと言うのも頷ける。
(やはり私とこの王女を迷いの森に閉じ込めるつもりですか!)
ルルがまた妄想を頭の中で考え始めた。
「ユート様⋯⋯この中に入るおつもりですか?」
宝探しでワクワクだったリリシアも、さすがにこの霧を見て不安な表情を浮かべていた。
「大丈夫。俺を信じてくれ」
「わ、わかりました。ユート様を信じます。ですが少し怖いのでルルちゃんを抱っこしてもよろしいでしょうか?」
「いいよ」
(いいよじゃないですよ! もし迷ったらこの王女と運命を共にすることになるじゃないですか! せめてあなたが私を⋯⋯)
ルルはリリシアの手から逃れようとするが、捕まってしまう。
「ルルちゃん、そんなに暴れて怖いのですね。大丈夫⋯⋯私がずっと一緒にいますから」
(それが一番怖いのよ!)
だがルルの心の叫びはリリシアに届くことはなく、俺達は迷いの森に足を踏み入れるのであった。
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