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姉より優れた弟は存在しないのか

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 俺はちひろのドロップキックを食らって意識を失い、プールの藻屑となる所だったが、何とか目覚めることができ、三途の川を渡らずに済んだ。

「いててて⋯⋯ちひろの奴マジで死ぬ所だったぞ」

 ちひろに蹴られた右頬が痛い。いつもなら報復してやりたい所だが、俺もラッキーなものが見れたのでそこまで復讐心に狩られることはなかった。
 それにちひろは俺を蹴り殺したことで満足したのか、はたまた恥ずかしいものを見られたせいなのか、既にプールから離れており、姿が見えない。

「それにしても日差しが熱いな」

 プールの中にいても水で浸かっていない肩や首が太陽の光によってヒリヒリと焼け焦げていくのがわかった。

 とりあえず俺は日焼け止めを塗るため、水の中から上がることにする。そしてプールサイドへと移動するとコト姉がこちらに手を伸ばし、プールから上がるためのサポートをしてくれた。

「もう⋯⋯ちひろちゃんをいじめちゃダメだよ」

 コト姉は先程の俺とちひろのやり取りを見ていたのか、少し怒った表情で嗜めてくる。

「いやいや、ちひろが俺の心を弄んだのが悪いんだよ」
「でも、リウトちゃんちひろちゃんをいじめている時すごく良い顔してたよ」
「そんなことは⋯⋯」

 ないとは言えないな。ラッキースケベもあったし悪い時間ではなかったことは間違いない。

「別にいいけどね。でもちひろちゃんとだけ楽しそうにしていてお姉ちゃんちょっと寂しかったなあ」
「別に楽しかった訳じゃないし、コト姉をほっといた訳でもないよ」

 コト姉が悲しそうな声を出すので思わず言い訳をしてしまう。

「それじゃあこれからはお姉ちゃんのターンね」
「まあ別にいいけど⋯⋯」

 俺はコト姉に手を引かれ、プールサイドのはじの方へと移動させられる。そして到着した場所は、先程ちひろに連れて来られたマットが床にしかれている場所だった。

 何だかデジャブだな。

「リウトちゃん少し待っててね」

 そう言うとコト姉はプールから離れ、どこかへ行ってしまう。
 そして1~2分程経つとコト姉は戻ってきて、何かを手に持っていた。

「お待たせ~、日差しが強いからお姉ちゃんがリウトちゃんに日焼け止めを塗って上げるね~」

 確かにこの日差しはやばい。日焼け止めを塗らないと明日は赤くなって痛いおもいをすることになりそうだ。

「お願いしようかな」
「それじゃあリウトちゃんマットに寝っ転がって~」

 俺はコト姉の言うとおり、マットの上にうつ伏せになる。

 日焼け止めなんてほとんど塗ったことがないから少しドキドキするな。
 この時の俺は、先程ちひろが渡してきたスプレー缶の日焼け止めを塗られると思っていたので、特に身構えずに待っていた。

「うわ!」

 すると突然冷たい何かを背中に塗られたので思わず驚きの声を上げてしまう。
 そして冷たいものはどんどん広がり、これがローションタイプの日焼け止めだと気づく。

「満遍なく塗って上げるからじっとしててね」
「う、うん」

 コト姉は言葉通り肩、腕、腰、脚と丁寧にローションを広げていく。
 白いすべすべした手が俺の至る所を触り、何だか変な気分になってくる。

 落ち着くんだ⋯⋯このまま下半身をおっきしたらコト姉に嫌われてしまうぞ。いや、もしかしたらコト姉は逆に喜ぶかもしれないが。
 と、とにかく余計なことは考えず気持ちを落ち着かせるぞ。
 コト姉は俺の姉、コト姉は俺の姉、コト姉は俺の姉。

 俺はコト姉とは血が繋がった家族だと思い込むため、心の中で何度も繰り返し、このある意味天国の時間をやり過ごす。

「あっ! ちょっと背中で塗れてない所があったからもう一回塗るね」

 コト姉はそう言うとまた肩から足までもう一度日焼け止めを塗り始める。
 それはちょっとじゃないだろと思ったが、今は心を落ち着かせるのに精一杯で、俺は余計な言葉を発することが出来なかった。

 そして日焼け止めが上から下まで隙間なく塗られ、終わったと思ったが⋯⋯。

「今度は前を塗るから立って」
「いや、前は自分で塗るからいいよ」
「せっかくだからこのままやっちゃうね」

 しかしコト姉は俺の静止を聞かず、身体の前の方も日焼け止めを塗り始めてしまう。
 それにしても距離がちか! この姉は俺と血が繋がっていないことを知らないのか! まあ知っていたら逆に困るけど。
 そして首、肩、腕、胸部、腹部、脚と、この10数分の間に肌が出ている所でコト姉に触れられていない場所は顔だけになってしまった。

「終わったよ~それじゃあ次はお姉ちゃんの身体に塗って~」

 コト姉はそう言うと先程のちひろのようにさっさと水着をはだけ、うつ伏せに寝てしまう。

「ちょ、ちょっと待って! 女の子に日焼け止めを塗るなんて出来ないよ」

 ちひろとコト姉では訳が違う。コト姉に日焼け止めなんて塗ったら、コト姉を異性として感じてしまうじゃないか。それだけは何としても避けたい。それでなくても最近コト姉やユズには女を感じてしまっているのだから。

「お姉ちゃんを女の子扱いしてくれるんだ。嬉しいな~」
「うっ! ま、まあ姉弟とはいえ女の子は女の子だろ?」
「さっきお姉ちゃんがリウトちゃんの身体に日焼け止めを? お姉ちゃんも同じようにやってもらう権利があると思うけど」
「そ、それは⋯⋯」

 コト姉が正論を武器に俺を追い詰めてくる。

「それとお姉ちゃんとリウトちゃんはだよね? 姉弟なら日焼け止めを塗ることも一緒に寝ることもキスをすることもおかしくないよね?」
「さりげなくおかしいことを入れないで下さい」

 どこの世界に一緒に寝てキスをする姉弟がいるんだ。

「そんな間違った世界の知識より、早くお姉ちゃんの身体に日焼け止めを塗ってくれないと肌が大変なことになっちゃうよ~」

 確かにこのままではコト姉の白い柔肌が太陽の光により赤くなってしまうのは間違いないだろう。

「くっ! わかったよ! 塗るからじっとしていてくれ」

 コト姉の策略に落ちた俺は日焼け止めの缶を手に取り、その白い肌に手を伸ばすのであった。
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