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いつも通りの帰り道

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土曜日の放課後

 俺は今、毎週恒例であるゲームの配信を行うため、瑠璃と一緒に学園からの帰路についている。新入生歓迎会の役割は、当日の調理担当なので特にやることもない。そのため放課後は自由に過ごすことが出来ていた。ちなみに当日はウェイトレス風の衣装にすることが決まった。そしてちひろが中心となって衣装を作ることになっていて、神奈さんは接客担当だ。
 本当はメイド服が良いという意見もあったが、Dクラスの本格メイド喫茶と同じコンセプトでは勝てる見込みはないということになり、諦めることとなった。

「先輩先輩、何か私の知らない所で美人お嬢様とパツキンメイドさんと仲良くなったって本当ですか?」
「アリアとソフィアさんのことか? まあ仲良くなったといえばなったけど、1人からは命を狙われているけどな」
「何ですかそれ。でもどうやってあんなURウルトラレアのお二人とエンカウントしたんですか?」
「敵キャラか!」

 まあソフィアさんからすれば俺は敵キャラかもしれないが。
 俺の認識では辰川での出会いが初めてだけど、アリアとはどうもその前に会っているみたいなんだよな。

「辰川で男に絡まれていたところを助けたんだよ」

 だが俺もよくわかっていないことを言ってもしょうがないので、辰川で出会ったことだけを伝えると⋯⋯。

「はあ⋯⋯」

 何故か瑠璃にため息をつかれる。

「普通はそんな簡単にあれだけの美人さんを助けることなんてできません。先輩は相変わらず無自覚系エロゲ主人公ですね。そのうち刺されてもしりませんよ」
「怖いこと言うなよ。それにそんなムフフな展開を1度も経験したことないぞ」

 瑠璃の言うことは本当に洒落にならない。なぜなら先日ソフィアさんに刺されかけたからな。

「何かあったら私の悪意察知のスキルで先輩を護って上げますから⋯⋯だ、だから先輩は私の側にいればいいんです」
「はは、こうみえても親父に鍛えられているから大丈夫だよ」
「そういう時が危ないです。テニス部の部長も言ってるじゃないですか、油断せずに行こうって」
「誰だよテニス部の部長って」

 1週間前に瑠璃と会った時は少し元気がなかったけど、どうやら大丈夫そうだな。やはり瑠璃との会話は楽しいし、もう二度と虐めを受けていた時のような暗い顔にはなってほしくないものだ。

「それと最近ユズユズの様子がおかしい気がするんですけど、先輩は何か知っていますか?」
「どういうことだ?」
「お昼にどこか行ってしまうことが多いし、今回の新入生歓迎会も凄くやる気に満ちているんですよね」
「昼は俺と食べていることが多いけど、新入生歓迎会をやる気になっているならそれは良いことじゃないのか?」
「そうなんですけど、ユズユズが1人で教室にいる時、急に落ち込んだ表情になったかと思えば、すぐに笑顔になるし、終いにはニヤケてヨダレを垂らしそうになっていたんですよ。あのユズユズが」
「確かにそれはやばいな」
「これはいつかアへ顔を晒してしまうんじゃないかと心配で心配で。初めは状態異常系のスキルをかけられたかと思って鑑定しましたが、いつも通り1つだけしか異常は見られませんでした」
「1つだけ? 何なんだそれは?」

 鑑定など出来るわけないのだが、瑠璃が言う、いつもユズがかかっている状態異常スキルが少し気になる。

「それは⋯⋯ブラコンです」
「ブラコンかよ! 状態異常でも何でもないじゃないか!」
「先輩何言ってるんですか! ブラコンを甘く見たらいけませんよ。もしブラコンレベルがMAXになると先輩に近づく女性に嫉妬して、もし彼女でも作ろうものなら、兄さん⋯⋯天国では幸せになろうねって言って刺されますから」
「い、いや⋯⋯そんなことにはならないだろ」

 否定したが以前ユズは、神奈さんやアリアに嫉妬しているように見えた。瑠璃の言うことが正しいならユズはけっこうやばい所まで来ているんじゃないか? いやいや、本気にしてどうする。けどもしユズに血が繋がっていないことがばれたら似たような結末に⋯⋯。

「先輩? どうされました? 少し顔色が悪いですけど⋯⋯」
「いや、何でもない。はは、ユズのブラコンにも困ったものだな」
「けど先輩もシスコンの状態異常が常時かかっているから、お似合いですね」
「そうだな。それとバーサク状態にもなっているから、目の前にいる後輩に何をするかわからないな」
「いやだなあ。さっきのは冗談ですよ」
「バーサク状態の俺に何を言っても無駄だぞ。おとなしく地獄へと落ちるがいい」
「ひぃっ! 先輩に犯される」
「いやちょっと待て! そんなことを大きな声で言うんじゃない」
「ふふ⋯⋯私の口を封じたければキ⋯⋯じゃなくて捕まえてみたらどうですか」
「ほう⋯⋯俺の足から逃れられると思っているのか」
「通常状態だと敵いませんが身体強化のスキルを使えば」

 瑠璃は俺に背を向けて駆け出す⋯⋯が運動神経ゼロの瑠璃は、数秒もたたないうちに俺の手に捕まるのだった。
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