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気遣いが出来る男前編
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「さて、これでよしっと」
翌日、俺は昼休みと放課後の時間を使って調理室でカレーを仕込み、ようやく完成した。
「うん。3つ共味に問題なし。これなら文句は言われることはないだろう」
俺は4つの鍋を見つめ、クラスメート達が来るのを待つ。
「リウト来たよ~、あんたの料理の実力をガツンと見せつけちゃって!」
いやいや、他人事のように言っているが、元はと言えばちひろのせいでこうなったんだろうが。だが癪だけどちひろの言うとおり、せっかく作ったこのカレーで、クラスメート達の舌を唸らせてみせる。
「う~ん⋯⋯良い匂い」
「これは期待できるんじゃない」
俺のカレーは、まずは女子達を香りで虜にすることに成功する。
「確かに匂いは良いけど問題は味じゃね?」
「そうだな。食ってみてそれで判断しないと」
しかし男共はまだ俺の料理の腕に懐疑的な感じだ。
「天城くん、鍋が4つあるんですけどこれは⋯⋯」
神奈さんが疑問に思うのも当然だろう。試食用のカレーなら鍋が1つあれば事足りる。
俺はその疑問を解消してあげるために鍋の蓋を3つ開けていく。
「これって⋯⋯全部同じカレーじゃないのか?」
「まさか俺達運動部の腹を満足させるために、多めにカレーを作ったとか? 中々気が利くじゃねえか」
悟と都筑が見当違いの答えを口に出した。
実は鍋の中のカレーの量は、1/3以下しか入っていない。その理由に気づく人はいないか⋯⋯。
「えっ? ちょっと待って。これって1つずつ匂いが少し違わない? それにルーの色も」
俺のカレーの秘密に気づいたのはちひろだった。
ちひろは俺がわざわざ意味もないのに、3つの鍋を用意するはずがないとわかっていたのか、その秘密に気づく。
「そう⋯⋯ちひろの言うとおりこの鍋のカレーは3つとも味が違う。左から甘口、中辛、辛口となっている」
カレーが嫌いと言う人はほとんどいないが、辛さについては別だ。辛いのが嫌いな人もいれば、甘いのが嫌いな人もいる。新入生歓迎会で来るお客さんも然りだろう。だから俺は全員が食べれるように三種類の味を用意したのだ。
「天城くんすご~い」
「私、辛いカレーが出たらどうしようかと思っちゃった」
「滅茶苦茶気遣いできる人だね」
3つのカレーを作ることで、さらに女子達から賛美の声が上がってくる。
実は天城家もコト姉とユズは辛いカレーが駄目なので、鍋を2つにして作っているのだ。その気遣いがまさかここでも生かされるなんて。
「けどそうなるともう1つの鍋に入っているのは何なの? カレーが入っている鍋とは形が違うけど⋯⋯」
白井さんの言うとおり、他の3つの鍋と違ってもう1つの鍋は土鍋だ。俺は白井さんの疑問を解くために土鍋の蓋を取る。
すると鍋から白い湯気とほのかに甘い香りが調理室に広がった。
「「「土鍋で炊いた御飯⋯⋯だと⋯⋯」」」
男子達が声を揃えて面白いように驚いてくれる。
「私、土鍋の御飯なんて初めて見たよ」
「この御飯でカレーが食べられるの?」
「これは期待できるんじゃない」
やはり香りと言うのは空腹に並ぶほどのスパイスだ。米とカレーの香りのハーモニーにより、クラスメート達の腹の音が今に聞こえてきそうだな。
「リウト、早く食べさてくれ」
腹ペコの野獣達に対して、俺とちひろと神奈さんが1人2口くらいの量で紙皿によそう。
さあどんな結果が出るか。
今までカレーを出して不味いと言われたことはないが、やはり初めて食べてもらう時は緊張してしまう。
そしてクラスの半分ほどよそい終わった頃、突如調理室から声が上がるのだった。
翌日、俺は昼休みと放課後の時間を使って調理室でカレーを仕込み、ようやく完成した。
「うん。3つ共味に問題なし。これなら文句は言われることはないだろう」
俺は4つの鍋を見つめ、クラスメート達が来るのを待つ。
「リウト来たよ~、あんたの料理の実力をガツンと見せつけちゃって!」
いやいや、他人事のように言っているが、元はと言えばちひろのせいでこうなったんだろうが。だが癪だけどちひろの言うとおり、せっかく作ったこのカレーで、クラスメート達の舌を唸らせてみせる。
「う~ん⋯⋯良い匂い」
「これは期待できるんじゃない」
俺のカレーは、まずは女子達を香りで虜にすることに成功する。
「確かに匂いは良いけど問題は味じゃね?」
「そうだな。食ってみてそれで判断しないと」
しかし男共はまだ俺の料理の腕に懐疑的な感じだ。
「天城くん、鍋が4つあるんですけどこれは⋯⋯」
神奈さんが疑問に思うのも当然だろう。試食用のカレーなら鍋が1つあれば事足りる。
俺はその疑問を解消してあげるために鍋の蓋を3つ開けていく。
「これって⋯⋯全部同じカレーじゃないのか?」
「まさか俺達運動部の腹を満足させるために、多めにカレーを作ったとか? 中々気が利くじゃねえか」
悟と都筑が見当違いの答えを口に出した。
実は鍋の中のカレーの量は、1/3以下しか入っていない。その理由に気づく人はいないか⋯⋯。
「えっ? ちょっと待って。これって1つずつ匂いが少し違わない? それにルーの色も」
俺のカレーの秘密に気づいたのはちひろだった。
ちひろは俺がわざわざ意味もないのに、3つの鍋を用意するはずがないとわかっていたのか、その秘密に気づく。
「そう⋯⋯ちひろの言うとおりこの鍋のカレーは3つとも味が違う。左から甘口、中辛、辛口となっている」
カレーが嫌いと言う人はほとんどいないが、辛さについては別だ。辛いのが嫌いな人もいれば、甘いのが嫌いな人もいる。新入生歓迎会で来るお客さんも然りだろう。だから俺は全員が食べれるように三種類の味を用意したのだ。
「天城くんすご~い」
「私、辛いカレーが出たらどうしようかと思っちゃった」
「滅茶苦茶気遣いできる人だね」
3つのカレーを作ることで、さらに女子達から賛美の声が上がってくる。
実は天城家もコト姉とユズは辛いカレーが駄目なので、鍋を2つにして作っているのだ。その気遣いがまさかここでも生かされるなんて。
「けどそうなるともう1つの鍋に入っているのは何なの? カレーが入っている鍋とは形が違うけど⋯⋯」
白井さんの言うとおり、他の3つの鍋と違ってもう1つの鍋は土鍋だ。俺は白井さんの疑問を解くために土鍋の蓋を取る。
すると鍋から白い湯気とほのかに甘い香りが調理室に広がった。
「「「土鍋で炊いた御飯⋯⋯だと⋯⋯」」」
男子達が声を揃えて面白いように驚いてくれる。
「私、土鍋の御飯なんて初めて見たよ」
「この御飯でカレーが食べられるの?」
「これは期待できるんじゃない」
やはり香りと言うのは空腹に並ぶほどのスパイスだ。米とカレーの香りのハーモニーにより、クラスメート達の腹の音が今に聞こえてきそうだな。
「リウト、早く食べさてくれ」
腹ペコの野獣達に対して、俺とちひろと神奈さんが1人2口くらいの量で紙皿によそう。
さあどんな結果が出るか。
今までカレーを出して不味いと言われたことはないが、やはり初めて食べてもらう時は緊張してしまう。
そしてクラスの半分ほどよそい終わった頃、突如調理室から声が上がるのだった。
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