上 下
78 / 142

暴走暴走大暴走

しおりを挟む
「どどど、どいうこと! 何でリウトちゃんが女の子とキスしてるのよ!」
「コ、コト姉! いつからそこに!」

 最悪だ。まさかコト姉にキスされているところを見られるなんて。とにかくこの子からもコト姉に事情を説明してもらおう。たぶん俺が言ってもコト姉は話を聞いてくれなさそうだしな。

「お嬢様~⋯⋯お嬢様~」

 だがこの緊迫した場面で、どこからか誰かが叫ぶ声が聞こえてきた。

「お嬢様?」

 そしてその声は段々とこちらへと近づいてくる。

「ごめんなさいね。私もう行くから」
「えっ? ちょっと!」
「また会いましょう。天城 リウトくん」

 えっ? 俺はこの子に名前を教えていないよな。
 名前についてはコト姉がさっき俺のことを呼んでいたから、それを聞いていたのかもしれないけど、名字については誰も口にしていないはずだ。
 やっぱりこの子は俺のことを⋯⋯。

 女の子は可愛らしくウインクをすると、颯爽とこの場から立ち去ってしまった。

「何だったんだいったい⋯⋯」

 そして女の子がここから離れていってから、すぐにお嬢様と叫んでいた人⋯⋯いや、金髪のメイドさんがこちらに来て、話しかけてきた。

「こちらに薄い茶色の髪、茶色の瞳をした絶世の美少女が来ませんでしたか?」

 見た目からして外国の血が入っているのは間違いないと思うが、その流暢な日本語と、何よりその美しいメイド姿に、思わず絶世の美少女はあなたなのでは? と問いかけそうになる。
 まるで本から出てきたような姿に、俺だけではなく周囲の男達が見惚れていた。

「その子なら向こうに行きましたよ」

 俺はこの時、このメイドさんに魅了されていたのか、考えもなしに素直に女の子の行き先を答える。

「ありがとうございました。それでは失礼いたします」

 メイドさんは両手を前で組み、美しい所作で頭を下げると猛スピードでこの場から立ち去っていく。

 まさか経った数分の間に、とんでもない美少女二人と出会うなんて思っても見なかった。それにしても最初に会った茶色の瞳の子は誰なんだ? 俺のことを知っているようだったからもしかしたらまた会えるかもしれないな。
 俺はそのような思いを抱きつつ、この場を後にする。

「コト姉、そろそろ帰ろうか」

 しかしコト姉からの返事はなかったため、視線を送ると何だが俯きワナワナと震えているように見えた。

「コト姉、そろそろ帰ろうかじゃないよ! さっきの茶色の髪の子は誰?  何でリウトちゃんにキ、キ、キ、キスしてるの!」
「いや、俺にも何が何だか⋯⋯」

 何事もなかったかのように羽ヶ鷺へ帰ろうと思ったが、やはり無理だったか。コト姉はこれまで見たことがない程狼狽え、取り乱している。

「それにお姉ちゃんがいるのに金髪のメイドさんに見とれていたでしょ! リウトちゃんの浮気者! こうなったらお姉ちゃんもリウトちゃんにキ、キ、キスするんだから!」

 こうして男二人に絡まれた美少女を助けたのはいいが、その様子をコト姉に見られていたため、この後俺は、嫉妬に狂う姉を止めるのに大変な労力を使うはめになったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスの双子と家族になりました。~俺のタメにハーレム作るとか言ってるんだがどうすればいい?~

いーじーしっくす
恋愛
ハーレムなんて物語の中の事。自分なんかには関係ないと思っていた──。 橋本悠聖は普通のちょっとポジティブな陰キャ。彼女は欲しいけど自ら動くことはなかった。だがある日、一人の美少女からの告白で今まで自分が想定した人生とは大きくかわっていく事になった。 悠聖に告白してきた美少女である【中村雪花】。彼女がした告白は嘘のもので、父親の再婚を止めるために付き合っているフリをしているだけの約束…の、はずだった。だが、だんだん彼に心惹かれて付き合ってるフリだけじゃ我慢できなくなっていく。 互いに近づく二人の心の距離。更には過去に接点のあった雪花の双子の姉である【中村紗雪】の急接近。冷たかったハズの実の妹の【奈々】の危険な誘惑。幼い頃に結婚の約束をした従姉妹でもある【睦月】も強引に迫り、デパートで助けた銀髪の少女【エレナ】までもが好意を示し始める。 そんな彼女達の歪んだ共通点はただ1つ。 手段を問わず彼を幸せにすること。 その為だけに彼女達は周りの事など気にせずに自分の全てをかけてぶつかっていく! 選べなければ全員受け入れちゃえばいいじゃない! 真のハーレムストーリー開幕! この作品はカクヨム等でも公開しております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。

電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。 ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。 しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。 薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。 やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。

悩んでいる娘を励ましたら、チアリーダーたちに愛されはじめた

上谷レイジ
恋愛
「他人は他人、自分は自分」を信条として生きている清水優汰は、幼なじみに振り回される日々を過ごしていた。 そんな時、クラスメートの頼みでチアリーディング部の高橋奈津美を励ましたことがきっかけとなり、優汰の毎日は今まで縁がなかったチアリーダーたちに愛される日々へと変わっていく。 ※執筆協力、独自設定考案など:九戸政景様  高橋奈津美のキャラクターデザイン原案:アカツキ様(twitterID:aktk511) ※小説家になろう、ノベルアップ+、ハーメルン、カクヨムでも公開しています。

高校では誰とも関わらず平穏に過ごしたい陰キャぼっち、美少女たちのせいで実はハイスペックなことが発覚して成りあがってしまう

電脳ピエロ
恋愛
中学時代の経験から、五十嵐 純二は高校では誰とも関わらず陰キャぼっちとして学校生活を送りたいと思っていた。 そのため入学試験でも実力を隠し、最底辺としてスタートした高校生活。 しかし純二の周りには彼の実力隠しを疑う同級生の美少女や、真の実力を知る謎の美人教師など、平穏を脅かす存在が現れ始め……。 「俺は絶対に平穏な高校生活を守り抜く」 そんな純二の願いも虚しく、彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて純二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 実力を隠して平穏に過ごしたい実はハイスペックな陰キャぼっち VS 彼の真の実力を暴きたい美少女たち。 彼らの心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

処理中です...