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ユクト激昂する

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 ユクトside

 俺は拐われたセレナを追って洞窟の中へと侵入を試みる。
 幸いなことに壁にはランプの魔道具が設置されており暗闇に困ることはなかったが、その分こちらの姿も見えてしまうため注意が必要だ。

「一度中の様子を探るか⋯⋯」

 俺は集中して洞窟内にいる者の気配を探ると10人いることが判明した。
 セレナと誘拐犯三人、後の六人は拐われた人と誘拐犯の仲間だろうか。
 何にせよここからは慎重に動かなければならない⋯⋯下手をすると誘拐犯が拐った人達を人質に取る可能性があるからだ。

 そして俺は誘拐犯に見つからぬよう辺りを注意しながら洞窟内を歩いていると壁際に倒れている人を発見する。

「こ、これは⋯⋯」

 俺が視認したもの⋯⋯それはセレナと年が同じくらいの少女だった。少女は既に事切れていて身体中にアザや切り傷が見られた。なぜ身体中の傷跡がわかったかというと少女は一糸纏わぬ姿だったからだ。

 俺は異空間から白いシーツを取り出し少女にかける。

 この状態を見れば少女に何があったか一目瞭然であり俺の中の血が一気に冷たくなるのを感じた。少女の年齢がセレナに近いこともあり、もし自分の娘がこのような目にあったら⋯⋯そう考えると俺は自然と剣を抜き、脇目も振らず誘拐犯の元へと向かう。
 そして洞窟を進んで行くと広めの空洞になっている場所があり、5人の男達が何やら談笑をしていた。

「それにしてもかしら達昨日から戻ってきませんね」
「どうせ略奪した村で愉しんでいるんだろ?」
「マジか! こっちにもおこぼれくれねえかなあ」

 この誘拐犯達の会話が耳に入ると俺の中にあるどす黒い感情が沸き上がってくるのを感じる。
 こいつらは生きている価値もない⋯⋯最後の談笑を楽しむといい。

 俺はこの部屋に拐われた人達がいないことを確認すると一気に飛び出し、1番近くにいた誘拐犯の首を背後から斬り落とすと切断面から血が噴水のように噴き出す。

 まずは1人。

 俺はさらにそのまま返す刀でもう1人の首を斬り落とした。

 2人。

 そしてこの時になって残りの3人がようやく俺のことに気づく。

「誰だてめ⋯⋯」

 次は耳障りな声を出している貴様だ。
 俺は誘拐犯が言葉を言い終わるまえに剣を横一閃になぎ払うと胴体と首が2つに分かれる。

「ふざけるな!」

 そして誘拐犯の1人が短剣を取り出し俺の胸を狙って突き刺してくる。

「遅い」

 俺は短剣をバッグステップでかわし、誘拐犯が前のめりになった所に上段から剣を振り下ろし首を刈り取る。

「ひぃぃぃっ!」

 そして残るは1人⋯⋯だが残りの1人は仲間達が首をはねられる様を見て戦意喪失し地面に座り込んでいる。

「ん? お前は⋯⋯」

 この男は囮作戦をしていた時、セレナに声をかけてきた商人だ。
 なるほどな⋯⋯あの時セレナを品定めしていたということか⋯⋯そしてこいつらにの目にセレナが叶ったというわけだな。

「た、助けてくれ! 私がこの娘達を拐ったわけじゃない!」

 商人は状況が不利と感じたのか土下座をして命乞いをしてくる。

「それなら貴様は何者だ? 何故ここにいる?」
「わ、私は商人だ⋯⋯こ、ここには⋯⋯」
「商人? 奴隷商人だろ?」
「うっ⋯⋯」

 カマをかけて見たがやはり図星だったようだ。ただの商人がこのような所にいるはずがない。

「どこの奴隷商人だ? グリード領か?」

 俺は奴隷商人の目を真っ直ぐ見据えるが、あるのは恐れの反応のみだった。

「帝都か?」
「くっ⋯⋯」

 奴隷商人が俺から目を逸らす。
 解りやすい男だ⋯⋯尋問する手間が省ける。

「仲間は何人いる? 拐われた人達は奥にいる5人で全部か?」
「な、仲間は後10人程いるが昨日ノボチ村に行ったっきり帰ってきてない」

 昨日ノボチ村に行った⋯⋯だと⋯⋯。それはもしかしてあの盗賊達のことを言っているのか? 奴隷商人が口にした人数とほぼ一致するから間違いなさそうだ。これはあの時奴らを倒しておいて正解だったな。

「拐った娘達はここにいるだけだ」
「おかしいな⋯⋯俺が聞いた情報だと行方不明になった娘達はもっといたはずだが」

 これは嘘だ⋯⋯俺はそんな情報を聞いたことないがこの奴隷商人が信用できないため再度カマをかける。

「そ、それは⋯⋯」
「すぐにバレるような嘘をつくな! 次は⋯⋯ない!」

 そして俺は剣を横一閃に振り、奴隷商人の首を薄皮一枚斬ると剣に血がしたたり落ちる。

「わ、わかった! 言う、言いますから!」

 やはり拷問になれていない者だと脅しが効くようだ。奴隷商人は涙を流して許しを乞うてきている。

「ふ、2日前に3人帝都に送った! だからもうここにはいない!」  

 遅かったか。

 おそらく人目につかないよう馬車で送ったのだろう。そうなるともう帝都に到着している可能性が高い。
 後は憲兵に任せるしかないか⋯⋯。
 俺はとりあえず剣を鞘におさめる。
 すると奴隷商人は安心したのか、安堵のため息をつきそして訳がわからないことを口にし始めた。

「私は悪くない私は関係ない」

 奴隷商人は頭をかかえ、ぶつぶつと独り言を繰り返している様を見て俺の中にある殺意が更に高まる。

「貴様ふざけるなよ! 洞窟の入口近くにいた娘を見てもそんなことが言えるのか!」
「あ、あれは私がやったわけではない。と、盗賊のリーダーが⋯⋯私はその後おこぼれで⋯⋯」

 私は悪くない、やったわけではないと言っていたが、今の言葉を聞いて関係ないと思う奴は誰もいないだろう。こいつの言っていること支離滅裂だ。
 俺はこの奴隷商人に対してさらに怒りが込み上げてくる。

「あの娘に暴行しておいて⋯⋯拐われた子達を売り飛ばそうとして関係ない⋯⋯だと⋯⋯よくそんなことが言えるな」
「私だってやりたくてやったわけじゃ⋯⋯」
「もういい⋯⋯貴様の言い訳を聞いていると吐き気がする」
「えっ?」

 俺は拳を握り奴隷商人の顎に向かって拳を放つ。すると奴隷商人は糸が切れたようにその場に倒れ動かなくなる。
 本当は始末してやりたい所だが拐われて帝都に言った子達の情報を引き出すためにも生かしておくしかない。

 こうして俺は誘拐犯達を始末した後、セレナ達を助けるため奥の部屋に視線を向けると突然扉が開き、銀髪の女性が顔を見せた。
 そしてこの後の銀髪の女性の行動に俺は驚きを隠せないのであった。
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