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予期せぬ再会
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まさか神聖教会養成学校でコトに再会するとは。もしコトの所在がわかっても会うつもりはなかったので俺は突然の出来事に驚きを隠せない。
「コト⋯⋯久しぶりだな。その⋯⋯あの時は⋯⋯」
俺はどうしても15年前にあったことを思い出してしまう。
「ええ⋯⋯あなたのせいでパパは⋯⋯パパは⋯⋯」
この帝都でコトの父親であるおやっさんが俺を施設から拾ってくれた。そして俺はおやっさんから生きるためのあらゆる手段を教わり、これから3人でいつまでも幸せに暮らしていくことを疑わなかった。
しかし暗闇の中冷たい風が吹き雪が舞っていたあの日⋯⋯おやっさんは他国の密偵容疑で城に連れてかれ二度と家に帰って来なかった。
兵士に連行されるおやっさんを見て泣き叫ぶコトの姿を今も俺は鮮明に覚えている。そしてその後俺に向けてきた憎しみを宿した目は今のコトにそっくりだった。
なぜならあの時おやっさんが他国の密偵だと兵士に通報したのは⋯⋯俺だからだ。
「私はこの15年間あなたのことを考えなかった日はなかった! パパに引き取ってもらったくせに恩を仇で返すようなことを⋯⋯そのせいでパパは⋯⋯」
コトの叫ぶような声が辺りに響き渡る⋯⋯このままだと周囲にいる生徒達から注目を浴びてしまう。
今日はトアの学校での様子を聞きに来ただけだからなるべく騒ぎになるようなことをしたくないんだが今のコトは俺が何を言っても聞いてくれなそうだ。
「何? 何の騒ぎ?」
「痴情のもつれ?」
「いや、あの理事長のコネで入った講師が何か騒いでるんだ」
まずい⋯⋯騒ぎを聞きつけてか生徒が集まり始めている。
それにしてもコネ講師とはコトのことを言っているのか?
だが今はそんなことを考える暇はない。とりあえずコトを落ち着かせないと⋯⋯。
「いい? もう二度と私の前に現れないで!」
コトもこの状況を好ましく思っていなかったのか急ぎ足で校舎の中へと入っていく。そして入れ替わりでトアが戻ってきた。
「あれ? パパ何かあったの?」
周りにいる学生達がヒソヒソと話している様子を見てかトアが首を傾げ問いかけてくる。
「コトがいた⋯⋯どうやら神聖教会養成学校の講師をしているみたいだ」
「えっ? コトさんってパパと一緒に暮らしていた?」
「ああ」
まさかコトがこんな所にいたとは⋯⋯確かに神聖魔法を使うことが出来たしここにいてもおかしくはないが。
俺は突然の再会に動揺したが、どんな形であれコトが無事に過ごしていたことに安堵する。
「コトさんってもしかして2年生の先生かな?」
「知ってるのか?」
「ううん⋯⋯私は直接教わったことがないけど⋯⋯」
どうやらトアはコトのことをあまり詳しくは知らないらしい。
「とりあえず今日は理事長先生に会いに来たんだ⋯⋯トア行こうか」
「う、うん⋯⋯でもパパいいの? パパにとって妹みたいな存在だったって⋯⋯積もる話もあるんじゃ⋯⋯」
元々コトの居場所を知ることが目的だったんだ⋯⋯元気にしてることが分かればそれでいい。コトだって家族を裏切った俺には会いたくないだろう。
「大丈夫だ。居場所がわかったからこれからはいつでも会うことが出来るだろ?」
トアに本当のことを知られたくない俺は本心とは違う言葉を口にするのであった。
コトと別れた後俺はトアの案内で理事長室の前にいる。
「トアは教室に行くね」
「がんばれよ」
そしてトアは授業があるため自分の教室へと戻っていった。
正直な話コトとの再会には驚いたが今日は娘の父親として魔法養成学校に来たんだ。
俺は目を閉じ深呼吸をして心を落ち着かせてから理事長室のドアをノックする。
「失礼します。本日お約束させて頂いたトアの父親ですが⋯⋯」
「どうぞ中へ入って下さい」
俺は女性らしき声が聞こえてきたのでドアを開け理事長室へと入ると部屋の奥にある黒塗りの重厚な机の前に30代前半くらいの綺麗な女性が立っていた。
この方が神聖教会養成学校の理事長か⋯⋯騎士養成学校や魔法養成学校の時も感じたが理事長職は若い人ばかりだな。リリーやゴードンは20代⋯⋯普通こういう役職はある程度経験を積んだ人間が行うものだと思っていた。
「私はルノリアと申します。あなたがユクトさんね⋯⋯会いたかったわ」
理事長と思わしき人がニコッと優しい笑顔で俺を迎えてくれる。会いたかったというのは聖女の称号を持つトアの父親がどんな人物か気になっているという所か。
「初めましてトアの父親のユクトです。いつも娘がお世話になっております」
「そんなにかしこまらなくてもいいですよ。トアさんは成績優秀ですしクラスメートとも仲良くしてますから⋯⋯聖女という称号は持つべき者が持ったと私は考えています」
「そう言って頂けると父親としても嬉しいです」
「これもユクトさんのおかげね」
「いえ⋯⋯私はそんな⋯⋯」
「私の滅多に人を褒めない古い知人もそう言っていたわ」
コトのことだろうか。それとも別の⋯⋯俺は誰なのか気になったのでルノリア理事長に聞いてみる。
「それはどなたでしょうか?」
俺の友人など数えるほどしかいない。そしてトアと俺が娘だと知る人物となると――。
「それは⋯⋯秘密よ。女はミステリアスの方が美しくなれると言うからね」
ルノリアさんは左手の人差し指を口に持ってきて右目をウインクをしながら茶目っ気に言ってきた。
「そう言われてしまうと追及できませんね」
「そうしてくれると助かるわ」
う~ん⋯⋯ルノリアさんの容姿は俺と同じくらいの年齢に見えるが何か濃密な人生経験を送っているような気がする。これは下手に詮索をすると手痛いしっぺ返しを受けるかもしれないから何も言わない方がいいな。
「他に何か聞きたいことはありますか?」
トアの学校生活は問題ないみたいだし他には⋯⋯1つだけあるな。
「コト⋯⋯講師をしているコトさんは理事長のお知り合いでしょうか?」
先程学生がコトのことを理事長のコネでと話していたので俺は気になって聞いてみる。
「ええ⋯⋯彼女のお父さんとは友人で事情があって昨年から預かっているのよ。今は2年生のSクラスを担当してもらっているわ」
えっ? ルノリアさんがおやっさんの友人? もしかしたらルノリアさんって30代に見えて実はおやっさんと同じくらいの年齢なのか? いや年が離れた友人という可能性もあるよな。気になるが女性に年齢を聞くのはちょっとな。
「ふふ⋯⋯ユクトさんは聡明な人ね」
そう言って先程まで優しい雰囲気を醸し出していたルノリアさんの目が怪しく光る。
これは知らぬが花というやつか。
「そうそう⋯⋯そんな話よりこれからトアさんの授業を見学しますか?」
俺としてはルノリアさんとおやっさんのことも気になるけどこれ以上詮索すると自分の身を滅ぼしそうなのでこの提案に頷くことにするのであった。
「コト⋯⋯久しぶりだな。その⋯⋯あの時は⋯⋯」
俺はどうしても15年前にあったことを思い出してしまう。
「ええ⋯⋯あなたのせいでパパは⋯⋯パパは⋯⋯」
この帝都でコトの父親であるおやっさんが俺を施設から拾ってくれた。そして俺はおやっさんから生きるためのあらゆる手段を教わり、これから3人でいつまでも幸せに暮らしていくことを疑わなかった。
しかし暗闇の中冷たい風が吹き雪が舞っていたあの日⋯⋯おやっさんは他国の密偵容疑で城に連れてかれ二度と家に帰って来なかった。
兵士に連行されるおやっさんを見て泣き叫ぶコトの姿を今も俺は鮮明に覚えている。そしてその後俺に向けてきた憎しみを宿した目は今のコトにそっくりだった。
なぜならあの時おやっさんが他国の密偵だと兵士に通報したのは⋯⋯俺だからだ。
「私はこの15年間あなたのことを考えなかった日はなかった! パパに引き取ってもらったくせに恩を仇で返すようなことを⋯⋯そのせいでパパは⋯⋯」
コトの叫ぶような声が辺りに響き渡る⋯⋯このままだと周囲にいる生徒達から注目を浴びてしまう。
今日はトアの学校での様子を聞きに来ただけだからなるべく騒ぎになるようなことをしたくないんだが今のコトは俺が何を言っても聞いてくれなそうだ。
「何? 何の騒ぎ?」
「痴情のもつれ?」
「いや、あの理事長のコネで入った講師が何か騒いでるんだ」
まずい⋯⋯騒ぎを聞きつけてか生徒が集まり始めている。
それにしてもコネ講師とはコトのことを言っているのか?
だが今はそんなことを考える暇はない。とりあえずコトを落ち着かせないと⋯⋯。
「いい? もう二度と私の前に現れないで!」
コトもこの状況を好ましく思っていなかったのか急ぎ足で校舎の中へと入っていく。そして入れ替わりでトアが戻ってきた。
「あれ? パパ何かあったの?」
周りにいる学生達がヒソヒソと話している様子を見てかトアが首を傾げ問いかけてくる。
「コトがいた⋯⋯どうやら神聖教会養成学校の講師をしているみたいだ」
「えっ? コトさんってパパと一緒に暮らしていた?」
「ああ」
まさかコトがこんな所にいたとは⋯⋯確かに神聖魔法を使うことが出来たしここにいてもおかしくはないが。
俺は突然の再会に動揺したが、どんな形であれコトが無事に過ごしていたことに安堵する。
「コトさんってもしかして2年生の先生かな?」
「知ってるのか?」
「ううん⋯⋯私は直接教わったことがないけど⋯⋯」
どうやらトアはコトのことをあまり詳しくは知らないらしい。
「とりあえず今日は理事長先生に会いに来たんだ⋯⋯トア行こうか」
「う、うん⋯⋯でもパパいいの? パパにとって妹みたいな存在だったって⋯⋯積もる話もあるんじゃ⋯⋯」
元々コトの居場所を知ることが目的だったんだ⋯⋯元気にしてることが分かればそれでいい。コトだって家族を裏切った俺には会いたくないだろう。
「大丈夫だ。居場所がわかったからこれからはいつでも会うことが出来るだろ?」
トアに本当のことを知られたくない俺は本心とは違う言葉を口にするのであった。
コトと別れた後俺はトアの案内で理事長室の前にいる。
「トアは教室に行くね」
「がんばれよ」
そしてトアは授業があるため自分の教室へと戻っていった。
正直な話コトとの再会には驚いたが今日は娘の父親として魔法養成学校に来たんだ。
俺は目を閉じ深呼吸をして心を落ち着かせてから理事長室のドアをノックする。
「失礼します。本日お約束させて頂いたトアの父親ですが⋯⋯」
「どうぞ中へ入って下さい」
俺は女性らしき声が聞こえてきたのでドアを開け理事長室へと入ると部屋の奥にある黒塗りの重厚な机の前に30代前半くらいの綺麗な女性が立っていた。
この方が神聖教会養成学校の理事長か⋯⋯騎士養成学校や魔法養成学校の時も感じたが理事長職は若い人ばかりだな。リリーやゴードンは20代⋯⋯普通こういう役職はある程度経験を積んだ人間が行うものだと思っていた。
「私はルノリアと申します。あなたがユクトさんね⋯⋯会いたかったわ」
理事長と思わしき人がニコッと優しい笑顔で俺を迎えてくれる。会いたかったというのは聖女の称号を持つトアの父親がどんな人物か気になっているという所か。
「初めましてトアの父親のユクトです。いつも娘がお世話になっております」
「そんなにかしこまらなくてもいいですよ。トアさんは成績優秀ですしクラスメートとも仲良くしてますから⋯⋯聖女という称号は持つべき者が持ったと私は考えています」
「そう言って頂けると父親としても嬉しいです」
「これもユクトさんのおかげね」
「いえ⋯⋯私はそんな⋯⋯」
「私の滅多に人を褒めない古い知人もそう言っていたわ」
コトのことだろうか。それとも別の⋯⋯俺は誰なのか気になったのでルノリア理事長に聞いてみる。
「それはどなたでしょうか?」
俺の友人など数えるほどしかいない。そしてトアと俺が娘だと知る人物となると――。
「それは⋯⋯秘密よ。女はミステリアスの方が美しくなれると言うからね」
ルノリアさんは左手の人差し指を口に持ってきて右目をウインクをしながら茶目っ気に言ってきた。
「そう言われてしまうと追及できませんね」
「そうしてくれると助かるわ」
う~ん⋯⋯ルノリアさんの容姿は俺と同じくらいの年齢に見えるが何か濃密な人生経験を送っているような気がする。これは下手に詮索をすると手痛いしっぺ返しを受けるかもしれないから何も言わない方がいいな。
「他に何か聞きたいことはありますか?」
トアの学校生活は問題ないみたいだし他には⋯⋯1つだけあるな。
「コト⋯⋯講師をしているコトさんは理事長のお知り合いでしょうか?」
先程学生がコトのことを理事長のコネでと話していたので俺は気になって聞いてみる。
「ええ⋯⋯彼女のお父さんとは友人で事情があって昨年から預かっているのよ。今は2年生のSクラスを担当してもらっているわ」
えっ? ルノリアさんがおやっさんの友人? もしかしたらルノリアさんって30代に見えて実はおやっさんと同じくらいの年齢なのか? いや年が離れた友人という可能性もあるよな。気になるが女性に年齢を聞くのはちょっとな。
「ふふ⋯⋯ユクトさんは聡明な人ね」
そう言って先程まで優しい雰囲気を醸し出していたルノリアさんの目が怪しく光る。
これは知らぬが花というやつか。
「そうそう⋯⋯そんな話よりこれからトアさんの授業を見学しますか?」
俺としてはルノリアさんとおやっさんのことも気になるけどこれ以上詮索すると自分の身を滅ぼしそうなのでこの提案に頷くことにするのであった。
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