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娘達の成長と決意
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ラニとの鍛練が始まり10日が過ぎた。
重力魔法が常にかけられている状態なので初めは日常生活も辛そうだったが、今では剣を振るうことも走ることもできるようになっていた。
ラニはこの村で殺されそうになった。だから鍛練をがんばるのはわかるが、この10日間のラニの奮励は異常だ。今は俺が初め考えた訓練メニュー以上の内容をこなしている。
ここまでラニを駆り立てるものはなにか⋯⋯指導する身として1度聞いてみた方がいいのかもしれない。
そんな中、昼食の休憩をしている時、セレナがラニに対して話しかけていた。
「ラニお姉さんはなぜそんなに頑張れるのですか?」
俺が⋯⋯いや誰もが気になったことをセレナが口にする。
良いことなのか悪いことなのかわからないけど大人になると相手の心情を考えて聞きたいことが聞けなくなる。本当は俺が聞くべきことだった⋯⋯。
「そ、それは⋯⋯」
ラニは言葉に詰まり、瞳にも迷いが見れる。
本当のことを言ってくれるかどうか⋯⋯ラニには色々秘密がありそうだからな。
「⋯⋯殺されそうになったから次は自分だけでも何とかできるように⋯⋯」
それはたぶん本当のことだろう。だがラニの伏し目がちな様子が気になる。
「私も死ぬのは嫌です」
「ボクも殺されるのは嫌だな」
「トアもパパとお姉ちゃん達とお別れしたくないよぉ」
娘達はラニの言葉を信じ、悲しい表情をして今にも涙を流しそうだ。本当に死んだ時のことを想像したのかもしれない。
「セレナちゃん、ミリアちゃん、トアちゃん⋯⋯」
ラニは泣きそうになっている娘達の前に跪きそして抱きしめる。
「本当はもう1つあるの⋯⋯」
ラニは抱きしめていた手を離し、娘達と向き合う。
娘達の素直な想いがラニの心に響いたのか先程とは違い目に迷いがなくなっていた。
「私には弟がいて。大切な人を⋯⋯弟を護れる力がほしいって思ったの」
ラニはここで男達の襲撃を受けた時、深傷を負っているのにもかかわらず娘達を護るために姿を現したことから、自分より他の人のために命をかけられる子だと思っていた。だから今言った言葉は正しいのだろう。
それにしても弟まで命を狙われる可能性があるのか。俺も以前ソルシュバイン帝国に住んでいたことがあるが今はどんな状況になっているんだ。誰か重鎮でも亡くなって権力争いでも始まっているのだろうか。
俺がそんな物騒なことを考えている時、ラニの言葉を聞いた娘達の様子が少しおかしかった。
「大切な人を⋯⋯護る」
「ボクの大切な⋯⋯」
「護れる力⋯⋯」
娘達は何かを考えているのか今まで見たことがない程真剣な顔をしている。
そして娘達は顔を合わせ頷くと俺の方へと向かってきた。
「パパお願いがあります」
セレナが普段より大人びた表情で目を合わせてくる。
「ボク達もラニ姉みたいに鍛えてほしい」
決意の目をしたミリアがいつもとは違う様子で語りかけてくる。
「それはどうしてだ?」
強くなりたいと思う背景には理由があるはずだ。娘達に限ってそれはないとは思うが邪な理由だったら力を持たせるわけにはいかないし、強くなる想いが強ければ強いほど成長することができる。
「私はラニお姉さんの命を狙っていた方々に対してミリアとトアを護ることができませんでした」
「ボクはセレナ姉の後ろに怯えているだけで⋯⋯何も出来ずセレナ姉とトアを失うのは嫌なんだ。それにパパみたい魔道具を作ってテニばあやテラじいが楽を出来るようにしたいな」
「トアは怪我をした人を治せるようにしたいの。そうすればラニお姉ちゃんを治療することが出来たし、パパやお姉ちゃん達が傷ついたら治してあげれるから」
3人とも家族を他の人を助けるために力がほしいと言っている。
大抵の者は自分が生きていくためであったり、復讐のために強くなりたいというのが大半だが、娘達は本当に良い子に育った。
力があるがために人を傷つけることがあるかもしれないけどそれは今後じっくりと教えていけばいいし、今は娘達の決意に水を差すようなことを言いたくない。
「強くなるということは大変だぞ」
「覚悟の上です」
「ボク、がんばるよ」
「トアもがんばるぅ」
娘達の決意は硬いようだ。
俺としては娘達には平穏な人生を歩んでほしかったが、自分で考えた道なら親としてサポートしてやりたい。
「わかった。だが俺の訓練は厳しいぞ」
「「「パパありがとう」」」
娘達は感謝の言葉を口にしながら満面の笑みを浮かべて俺の胸に飛び込んできた。
俺は初めて娘達から自分のやりたいことを聞いた。
どうやらラニの言葉が娘達の心に響いたようだ。
年の近い子であるラニと交流を持つことで娘達に何か変化があると思っていたがこういう成長が見れるのは父親として嬉しくもあるが寂しくもあるな。いずれ娘達は父親である俺から巣だっていく。
鍛練をしても将来は身体を使わない職に就くかもしれないが、どんな未来に繋がっていくかわからないので、いざやりたいことが見つかった時、その道に続く糧になればいいなと思う。
こうして俺は娘達の未来のため指導することを決意するのであった。
重力魔法が常にかけられている状態なので初めは日常生活も辛そうだったが、今では剣を振るうことも走ることもできるようになっていた。
ラニはこの村で殺されそうになった。だから鍛練をがんばるのはわかるが、この10日間のラニの奮励は異常だ。今は俺が初め考えた訓練メニュー以上の内容をこなしている。
ここまでラニを駆り立てるものはなにか⋯⋯指導する身として1度聞いてみた方がいいのかもしれない。
そんな中、昼食の休憩をしている時、セレナがラニに対して話しかけていた。
「ラニお姉さんはなぜそんなに頑張れるのですか?」
俺が⋯⋯いや誰もが気になったことをセレナが口にする。
良いことなのか悪いことなのかわからないけど大人になると相手の心情を考えて聞きたいことが聞けなくなる。本当は俺が聞くべきことだった⋯⋯。
「そ、それは⋯⋯」
ラニは言葉に詰まり、瞳にも迷いが見れる。
本当のことを言ってくれるかどうか⋯⋯ラニには色々秘密がありそうだからな。
「⋯⋯殺されそうになったから次は自分だけでも何とかできるように⋯⋯」
それはたぶん本当のことだろう。だがラニの伏し目がちな様子が気になる。
「私も死ぬのは嫌です」
「ボクも殺されるのは嫌だな」
「トアもパパとお姉ちゃん達とお別れしたくないよぉ」
娘達はラニの言葉を信じ、悲しい表情をして今にも涙を流しそうだ。本当に死んだ時のことを想像したのかもしれない。
「セレナちゃん、ミリアちゃん、トアちゃん⋯⋯」
ラニは泣きそうになっている娘達の前に跪きそして抱きしめる。
「本当はもう1つあるの⋯⋯」
ラニは抱きしめていた手を離し、娘達と向き合う。
娘達の素直な想いがラニの心に響いたのか先程とは違い目に迷いがなくなっていた。
「私には弟がいて。大切な人を⋯⋯弟を護れる力がほしいって思ったの」
ラニはここで男達の襲撃を受けた時、深傷を負っているのにもかかわらず娘達を護るために姿を現したことから、自分より他の人のために命をかけられる子だと思っていた。だから今言った言葉は正しいのだろう。
それにしても弟まで命を狙われる可能性があるのか。俺も以前ソルシュバイン帝国に住んでいたことがあるが今はどんな状況になっているんだ。誰か重鎮でも亡くなって権力争いでも始まっているのだろうか。
俺がそんな物騒なことを考えている時、ラニの言葉を聞いた娘達の様子が少しおかしかった。
「大切な人を⋯⋯護る」
「ボクの大切な⋯⋯」
「護れる力⋯⋯」
娘達は何かを考えているのか今まで見たことがない程真剣な顔をしている。
そして娘達は顔を合わせ頷くと俺の方へと向かってきた。
「パパお願いがあります」
セレナが普段より大人びた表情で目を合わせてくる。
「ボク達もラニ姉みたいに鍛えてほしい」
決意の目をしたミリアがいつもとは違う様子で語りかけてくる。
「それはどうしてだ?」
強くなりたいと思う背景には理由があるはずだ。娘達に限ってそれはないとは思うが邪な理由だったら力を持たせるわけにはいかないし、強くなる想いが強ければ強いほど成長することができる。
「私はラニお姉さんの命を狙っていた方々に対してミリアとトアを護ることができませんでした」
「ボクはセレナ姉の後ろに怯えているだけで⋯⋯何も出来ずセレナ姉とトアを失うのは嫌なんだ。それにパパみたい魔道具を作ってテニばあやテラじいが楽を出来るようにしたいな」
「トアは怪我をした人を治せるようにしたいの。そうすればラニお姉ちゃんを治療することが出来たし、パパやお姉ちゃん達が傷ついたら治してあげれるから」
3人とも家族を他の人を助けるために力がほしいと言っている。
大抵の者は自分が生きていくためであったり、復讐のために強くなりたいというのが大半だが、娘達は本当に良い子に育った。
力があるがために人を傷つけることがあるかもしれないけどそれは今後じっくりと教えていけばいいし、今は娘達の決意に水を差すようなことを言いたくない。
「強くなるということは大変だぞ」
「覚悟の上です」
「ボク、がんばるよ」
「トアもがんばるぅ」
娘達の決意は硬いようだ。
俺としては娘達には平穏な人生を歩んでほしかったが、自分で考えた道なら親としてサポートしてやりたい。
「わかった。だが俺の訓練は厳しいぞ」
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娘達は感謝の言葉を口にしながら満面の笑みを浮かべて俺の胸に飛び込んできた。
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