54 / 127
ユートVSギアベル(1)
しおりを挟む
俺はハメードを追いかけるが、背後からギアベルが追いかけて来る。
少なくともギアベルは大使の方々に手を出すつもりはないようだな。
それならこのままハメードを追いかけて、広い場所に出たらギアベルと決着をつけるとしよう。
「待ちやがれ!」
「そのセリフはハメードに言ってくれ」
「誰が止まるものか! 私はこのまま逃げおおせてみせる!」
ハメードは関所を出て帝国側へと走り出す。サルトリアの街に逃げ込まれたら厄介だ。
しかしそうはさせない。
「ノア!」
関所の城壁で待機しているノアに向かって声をかける。
「任せて下さい! 氷拘束魔法」
ノアが魔法を唱えると地面が凍りつき、ハメードの動きを封じる。
「なんだこれは! 動けん!」
ハメードの下半身は凍りついているため、逃げることが出来ない。
ふう⋯⋯万が一を考えてノア達を配置していて良かった。
逃げるなら帝国側に行く可能性が高いと考えていたからな。
ちなみに城壁にはノアだけではなく、マシロとリズもいる。ノアが逃がした場合はマシロの攻撃魔法で止める予定だったので、ハメードはある意味痛い思いをせずに良かったと言えるだろう。
「ユート様」
城壁の上からリズが手を振ってきたため、俺も手を振り返す。
作戦が成功して良かったけど、まだ終わりではない。むしろ俺に取ってはこれからが本番だ。
「ユート! 観念しろ!」
背後から殺気を纏ったギアベルが迫ってきた。
「俺はギアベルと戦うつもりはない。ハメードは連れていかせてもらうぞ」
「ユートが現れた今、俺に取ってはハメードなどどうでもいい」
どうでもいいのか? そうなるとギアベルは今回の話とは無関係ということになるのか?
「俺はただムーンガーデン王国が手に入るから立ち会ってほしいと言われただけだ」
「王国が手に入るって、普通おかしいと思わないのか?」
「俺は何か実績が欲しかっただけだ。だが今は実績よりお前を倒すことの方が俺に取って最優先事項だ」
「俺には戦う理由はない」
「お前にはなくても俺にはあるんだよ!」
正直ギアベルの我が儘に付き合ってられない。お前の最優先事項は俺かも知れないけど俺の最優先事項はハメードを捕らえることだ。
だけどギアベルをこのままにしとく訳にもいかない。
「ハメードとの関係について、ムーンガーデン王国で起きたクーデターに、どこまで関与してるか教えてもらうぞ」
「お前ごときに話すことなどない。もし俺の話が聞きたいというなら力ずくで言わせてみろ」
やはりこうなってしまったか。ギアベルが素直に話すとは思えなかった。
こうなったらお前の望み通り、力ずくで口を割らせてやるよ。
「ユート!」
ギアベルと戦う決意をした時、レッケさんが関所から現れた。
「レッケさんハメードをお願いします」
「おう⋯⋯って! 凍ってる!」
「大使の方々は大丈夫ですか?」
「今は部屋に待機してもらってる。兵士達が守っているから大丈夫だ」
それなら後はギアベルを倒すだけだ。
「リズ、決闘の立会人になってくれないか?」
「わ、私がですか? わかりました。今そちらに行きますので、よろしくお願いします」
よろしくお願いします? どういうことだ? だけどその答えはすぐにわかった。
なんとリズは突然城壁から飛び降りてしまったのだ。
このまま地面に着地したらリズは怪我をしてしまう。
俺は落ちてきたリズをお姫様抱っこで受け止める。
「ありがとうございます」
「無茶をする。次からは事前に教えてくれると助かる」
「承知しました」
本当に頼むぞ。だけど絶対に受け止めてくれると、信じきった表情をしていたことは嬉しかった。そのため、強くは言えない。
「女といちゃついているとは余裕じゃないか? もし俺が勝ったらその女をもらってやろうか?」
「お前には死んでもリズは渡さない」
「そのセリフは俺を倒してから言うんだな」
こうしてギアベルと再会したユートは、バルトフェル帝国とムーンガーデン王国の国境にて、決闘を行うのであった。
少なくともギアベルは大使の方々に手を出すつもりはないようだな。
それならこのままハメードを追いかけて、広い場所に出たらギアベルと決着をつけるとしよう。
「待ちやがれ!」
「そのセリフはハメードに言ってくれ」
「誰が止まるものか! 私はこのまま逃げおおせてみせる!」
ハメードは関所を出て帝国側へと走り出す。サルトリアの街に逃げ込まれたら厄介だ。
しかしそうはさせない。
「ノア!」
関所の城壁で待機しているノアに向かって声をかける。
「任せて下さい! 氷拘束魔法」
ノアが魔法を唱えると地面が凍りつき、ハメードの動きを封じる。
「なんだこれは! 動けん!」
ハメードの下半身は凍りついているため、逃げることが出来ない。
ふう⋯⋯万が一を考えてノア達を配置していて良かった。
逃げるなら帝国側に行く可能性が高いと考えていたからな。
ちなみに城壁にはノアだけではなく、マシロとリズもいる。ノアが逃がした場合はマシロの攻撃魔法で止める予定だったので、ハメードはある意味痛い思いをせずに良かったと言えるだろう。
「ユート様」
城壁の上からリズが手を振ってきたため、俺も手を振り返す。
作戦が成功して良かったけど、まだ終わりではない。むしろ俺に取ってはこれからが本番だ。
「ユート! 観念しろ!」
背後から殺気を纏ったギアベルが迫ってきた。
「俺はギアベルと戦うつもりはない。ハメードは連れていかせてもらうぞ」
「ユートが現れた今、俺に取ってはハメードなどどうでもいい」
どうでもいいのか? そうなるとギアベルは今回の話とは無関係ということになるのか?
「俺はただムーンガーデン王国が手に入るから立ち会ってほしいと言われただけだ」
「王国が手に入るって、普通おかしいと思わないのか?」
「俺は何か実績が欲しかっただけだ。だが今は実績よりお前を倒すことの方が俺に取って最優先事項だ」
「俺には戦う理由はない」
「お前にはなくても俺にはあるんだよ!」
正直ギアベルの我が儘に付き合ってられない。お前の最優先事項は俺かも知れないけど俺の最優先事項はハメードを捕らえることだ。
だけどギアベルをこのままにしとく訳にもいかない。
「ハメードとの関係について、ムーンガーデン王国で起きたクーデターに、どこまで関与してるか教えてもらうぞ」
「お前ごときに話すことなどない。もし俺の話が聞きたいというなら力ずくで言わせてみろ」
やはりこうなってしまったか。ギアベルが素直に話すとは思えなかった。
こうなったらお前の望み通り、力ずくで口を割らせてやるよ。
「ユート!」
ギアベルと戦う決意をした時、レッケさんが関所から現れた。
「レッケさんハメードをお願いします」
「おう⋯⋯って! 凍ってる!」
「大使の方々は大丈夫ですか?」
「今は部屋に待機してもらってる。兵士達が守っているから大丈夫だ」
それなら後はギアベルを倒すだけだ。
「リズ、決闘の立会人になってくれないか?」
「わ、私がですか? わかりました。今そちらに行きますので、よろしくお願いします」
よろしくお願いします? どういうことだ? だけどその答えはすぐにわかった。
なんとリズは突然城壁から飛び降りてしまったのだ。
このまま地面に着地したらリズは怪我をしてしまう。
俺は落ちてきたリズをお姫様抱っこで受け止める。
「ありがとうございます」
「無茶をする。次からは事前に教えてくれると助かる」
「承知しました」
本当に頼むぞ。だけど絶対に受け止めてくれると、信じきった表情をしていたことは嬉しかった。そのため、強くは言えない。
「女といちゃついているとは余裕じゃないか? もし俺が勝ったらその女をもらってやろうか?」
「お前には死んでもリズは渡さない」
「そのセリフは俺を倒してから言うんだな」
こうしてギアベルと再会したユートは、バルトフェル帝国とムーンガーデン王国の国境にて、決闘を行うのであった。
470
お気に入りに追加
2,182
あなたにおすすめの小説
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
種から始める生産チート~なんでも実る世界樹を手に入れたけど、ホントに何でも実ったんですが!?(旧題:世界樹の王)
十一屋 翠
ファンタジー
とある冒険で大怪我を負った冒険者セイルは、パーティ引退を強制されてしまう。
そんな彼に残されたのは、ダンジョンで見つけたたった一つの木の実だけ。
だがこれこそが、ありとあらゆるものを生み出す世界樹の種だったのだ。
世界樹から現れた幼き聖霊はセイルを自らの主と認めると、この世のあらゆるものを実らせ、彼に様々な恩恵を与えるのだった。
お腹が空けばお肉を実らせ、生活の為にと家具を生み、更に敵が襲ってきたら大量の仲間まで!?
これは世界樹に愛された男が、文字通り全てを手に入れる幸せな物語。
この作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
「魔物肉は食べられますか?」異世界リタイアは神様のお情けです。勝手に召喚され馬鹿にされて追放されたのでスローライフを無双する。
太も歩けば右から落ちる(仮)
ファンタジー
その日、和泉春人は、現実世界で早期リタイアを達成した。しかし、八百屋の店内で勇者召喚の儀式に巻き込まれ異世界に転移させられてしまう。
鑑定により、春人は魔法属性が無で称号が無職だと判明し、勇者としての才能も全てが快適な生活に関わるものだった。「お前の生活特化笑える。これは勇者の召喚なんだぞっ。」最弱のステータスやスキルを、勇者達や召喚した国の重鎮達に笑われる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴォ
春人は勝手に召喚されながら、軽蔑されるという理不尽に怒り、王に暴言を吐き国から追放された。異世界に嫌気がさした春人は魔王を倒さずスローライフや異世界グルメを満喫する事になる。
一方、乙女ゲームの世界では、皇后陛下が魔女だという噂により、同じ派閥にいる悪役令嬢グレース レガリオが婚約を破棄された。
華麗なる10人の王子達との甘くて危険な生活を悪役令嬢としてヒロインに奪わせない。
※春人が神様から貰った才能は特別なものです。現実世界で達成した早期リタイアを異世界で出来るように考えてあります。
春人の天賦の才
料理 節約 豊穣 遊戯 素材 生活
春人の初期スキル
【 全言語理解 】 【 料理 】 【 節約 】【 豊穣 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】 【 快適生活スキル獲得 】
ストーリーが進み、春人が獲得するスキルなど
【 剥ぎ取り職人 】【 剣技 】【 冒険 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】【 快適生活獲得 】 【 浄化 】【 鑑定 】【 無の境地 】【 瀕死回復Ⅰ 】【 体神 】【 堅神 】【 神心 】【 神威魔法獲得 】【 回路Ⅰ 】【 自動発動 】【 薬剤調合 】【 転職 】【 罠作成 】【 拠点登録 】【 帰還 】 【 美味しくな~れ 】【 割引チケット 】【 野菜の種 】【 アイテムボックス 】【 キャンセル 】【 防御結界 】【 応急処置 】【 完全修繕 】【 安眠 】【 無菌領域 】【 SP消費カット 】【 被ダメージカット 】
≪ 生成・製造スキル ≫
【 風呂トイレ生成 】【 調味料生成 】【 道具生成 】【 調理器具生成 】【 住居生成 】【 遊具生成 】【 テイルム製造 】【 アルモル製造 】【 ツール製造 】【 食品加工 】
≪ 召喚スキル ≫
【 使用人召喚 】【 蒐集家召喚 】【 スマホ召喚 】【 遊戯ガチャ召喚 】
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる