上 下
44 / 127

反逆者達の末路

しおりを挟む
「リスティヒとグラザムのことだ。あの二人は何がやりたかったと思う? レジスタンスやユートの活躍で国を取り戻すことが出来たが、高額な税収をかけ、王族や一部の貴族が好き勝手していたら、いずれクーデターが起き、国が滅びるのは間違いないだろう。だが牢獄にいる二人に話を聞いても、何も言わないのだよ」

 確かに国王陛下の仰る通りだ。まさかあそこまでやっておいて政権を維持出来るとは思っていないだろう。さすがにそこまでバカではないはずだ。
 だけどあの二人を見ていると、そんなバカなこともやりかねない気もする。
 だけどそう言えば、逃げたグラザムに追いついた時、おかしなことを言ってたな。あれは確か⋯⋯

「グラザムが気になることを言ってました。元よりこの国は滅びる運命だったのだと」
「なんだと! その言葉を額面通りに受け取ると、グラザムは国が滅びるのを予言していたと言う訳か」

 そんな予言をした所でどうするつもりなんだ? 仮にも王子だったグラザムがその滅亡を受け入れるとは到底考えられない。国が滅亡したら王子という地位もなくなるのだから。
 いや、待てよ。もし最初から王子という地位に固執してなかったらどうだ? 
 そう考えると思い当たることがある。

「少しお聞きしたいことがあるのですが、リスティヒやグラザムは他国の方と頻繁に会ったりしていましたか?」
「それについては私が答えよう」

 レッケさんが前に出る。

「レジスタンスとして活動していた際に奴らの動向を探っていたが、帝国の者と何度か会っていたのを目撃している。ただ何のために会っていたのかはわからずじまいだったが」
「そうですか。ありがとうございます」

 帝国と会っていたか。
 でも俺が見た限りだと、グラザムは王子の地位を欲しがっているように見えたからなあ。
 やっぱりよくわからない。これは本人に聞いてみるしかないんじゃないか。

「何かわかったのか?」
「いえ、さっぱりわかりません。もしよろしければ直接聞いても構いませんか?」
「さっきも言ったように二人は何も喋らないようだ。それでもいいならユートの好きにするがよい」
「ありがとうございます」
「レッケ、ユートを牢獄まで案内してくれ」
「はっ! 承知しました!」
「私も行きます」

 俺とリズはレッケさんの後に続いて、城の地下にあるという牢獄へと向かう。
 五分程歩いていると一つの扉の前に到着し、そこには二人の兵士がいた。

「これはレッケ騎士団長、それと⋯⋯リズリット様!?」

 兵士はリズの姿に気づくと、突然背筋を伸ばし始めた。

「このような場所に何のご用でしょうか」
「リスティヒとグラザムに会いにきたのだ。通るぞ」
「「はっ! どうぞお通り下さい!」」

 兵士二人が扉を開ける。すると中は薄暗く、下層へ向かう階段が見えた。

「リズ、手を」
「はい。ありがとうございます」

 ドレス姿のリズでは暗い中、階段を降りるのは辛いだろう。もし転んだりしたら大変だ。俺はリズの手を取り、階段を降りていく。
 するとレッケさんがチラチラと笑みを浮かべながら、こちらに視線を送ってきた。

「何ですか? そんな後ろばっかみていると転びますよ」
「いや、ユートは優しいなと思って見ていただけだ」
「そうですね。ユート様はとてもお優しいです」

 たぶん俺がリズの手を取ったから、レッケさんはこちらに視線を向けてきたんだ。何だか親戚のおじさんに冷やかされているようで嫌だな。
 そしてリズはたぶん、そんなことわかってないんだろうな。

「リズはドレスを着ているから歩きにくいだろ。暗いし気をつけて」
「はい。それとユート様⋯⋯どうですかこのドレスは?」

 リズのドレスは真っ白だったため、この暗い空間でもハッキリと見ることが出来た。

「リズに似合っていて、とても可愛いよ」
「本当ですか? ありがとうございます」

 白ってまるで純心なリズを表しているようで、お世辞抜きに似合っていると思う。リズも褒められて嬉そうだし何よりだ。
 しかし前を行くレッケさんが、ニンマリと笑みを浮かべていて腹が立つ。こっちを見ないでほしい。

「そういえばレッケさん。俺がフレスヴェルグを倒したことを国王陛下に言いましたね?」

 秘密だって約束したのに。

「主君に報告しない訳にはいかないからな。他の者には伝えるつもりはない」
「そうですか。これ以上は本当に言わないで下さいよ」
「承知した」

 そしてレッケさんの視線を無視しながら地下に到着すると、一つの牢獄の前にたどり着いた。

「誰だ。何度来てもお前達に喋ることなどないぞ」
「くそっ! ここから出せ! 高貴なる私を牢獄に閉じ込めるとは許されぬことだぞ!」

 どうやらリスティヒは落ち着いているが、息子のグラザムは見苦しく喚いているようだ。

「貴様はリズリットとレッケ⋯⋯そして⋯⋯」
「ちちち、父上! こいつだ! こいつがフレスヴェルグを一撃で倒した化物だ!」
「化物とは失礼だな。どうだ? 牢獄の居心地は?」
「良いわけないだろ!」

 挑発にもグラザムは喚いているけど、リスティヒは冷静だな。もしかして生きてここから出ることを諦めているのか? それとも⋯⋯

「こんな小僧のせいで負けるとはな。まさかとは思うが国王救出より先に城を奪還する作戦もこの小僧が考えたのか?」
「そうだと言ったらどうする?」
「私の野望を打ち砕いた奴が目の前にいて、腸が煮え繰り返る思いだ」

 冷静だったリスティヒから殺気を感じる。どうやら本当に腹が立っているようだ。

「それじゃあ今度はこっちから質問させてもらう。グラザムが元よりこの国は滅びる運命だと言っていたけどあれはどういう意味だ」

 俺が質問するとリスティヒは僅かに苛立ちを見せた。余計なことを口にしたグラザムに怒りを感じているといった所か。

「知らんな」
「グラザムは?」
「わ、私も何のことかわからない。そもそもそのようなことを口にした覚えはないが」
  
 一瞬グラザムが動揺したのがわかった。やはり何か隠していると言った所か。

「どうしても喋る気はないの?」
「くどいぞ。私は何も知らん」
「そんなことより早くここから出せ!」

 どうやら普通に聞いただけでは話してもらえないようだ。
 それなら⋯⋯

「ユート様、どうされますか?」
「一筋縄では行かなそうだな」
「まあこうなることは想定済みだ」

 話を聞く限り、リスティヒは口が固そうだ。狙うならグラザムの方だな。

「二人共ちょっと下がっててもらえるかな」
「わかりました」
「何をするつもりだ?」
「見ていればわかると思います」

 リズとレッケさんは降りてきた階段の所まで下がらせる。
 そして俺は両手を前に突き出し、魔力を集めるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

種から始める生産チート~なんでも実る世界樹を手に入れたけど、ホントに何でも実ったんですが!?(旧題:世界樹の王)

十一屋 翠
ファンタジー
とある冒険で大怪我を負った冒険者セイルは、パーティ引退を強制されてしまう。 そんな彼に残されたのは、ダンジョンで見つけたたった一つの木の実だけ。 だがこれこそが、ありとあらゆるものを生み出す世界樹の種だったのだ。 世界樹から現れた幼き聖霊はセイルを自らの主と認めると、この世のあらゆるものを実らせ、彼に様々な恩恵を与えるのだった。 お腹が空けばお肉を実らせ、生活の為にと家具を生み、更に敵が襲ってきたら大量の仲間まで!? これは世界樹に愛された男が、文字通り全てを手に入れる幸せな物語。 この作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。 そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。 幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。 だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。 はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。 彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。 いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~

ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」 聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。 その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。 ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。 王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。 「では、そう仰るならそう致しましょう」 だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。 言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、 森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。 これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。

処理中です...