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名探偵? ノア

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 船員の声が周囲に響き渡った瞬間、猛スピードでマシロが駆け寄ってきた。

「ニャーッ! ニャーッ!」

 そして俺の首に抱きつき、恐怖のためか慌てふためいていた。
 無理もない。船が沈没したら嫌いな海に投げ出されるのだからな。
 俺はマシロを安心させるために抱きしめる。

「修復は出来そうか?」
「任せて下さい! 必ず直してみせます!」
「よし! 野郎共行くぞ!」
「「「へい!」」」

 オゼア船長は、先程半魚人と戦っていた船員達を引き連れて階段を降りていく。

 話を聞く限り船の修復出来そうなため、安心した。
 マシロではないが、さすがに海に放り出されるのは勘弁願いたい所だ。

「魔物が現れた時はヒヤヒヤしたよ」
「船を守ってくれてありがとう!」

 俺が戦う所を見ていたのか、乗客達から感謝の声が上がる。
 改めて褒められると照れる。日本人はシャイな人が多いのを知らないのか。
 ともかく俺が出来ることは終わった。後は船員の人達に任せるしかない。
 俺はデッキの端の方で作業が終わるのを待つ。すると周りに人がいなくなったので、ノアが話しかけてきた。

「ユートさんお疲れ様でした」
「ありがとう」
「僕も戦えれば良かったんですけど」
「さすがにここで戦うとまずいことになるからな」
「確かにそうですね」

 戦う犬がいたら見せ物にされるか、魔物だと思われそうだ。

「それと⋯⋯マシロさんは大丈夫でしょうか?」
「大丈夫そうに見える?」
「見えないです」

 ブルブル震えながら俺の首に抱きついたままだ。
 可哀想でからかう気にもなれない。

「もし船が沈没しても、マシロとノアは必ず陸まで連れていくから安心してくれ」
「ほ、本当ですか?」
「ああ。だからそんなに怖がらなくても大丈夫だ」

 俺の言葉を聞くと、マシロは抱きついていた首から離れ始めた。
 しかしまたいつ船が揺れるかわからないので、守るようにマシロを抱っこする。

「ノアは大丈夫なのか?」
「はい。僕は泳げるので大丈夫です」

 犬かきか? それにフェンリルなら犬より余裕で泳ぐことが出来そうだ。

「乗客の皆様! 右舷の修理は完了したので安心して下さい!」

 そして船員から穴を塞いだとの報告を受けたので、マシロは俺の手から離れる。

「ふ、ふん⋯⋯全然怖くなかったです⋯⋯⋯⋯でも感謝してあげます。ありがとう」 

 照れ隠しなのか、それともツンデレなのかわからないけど、マシロは俺達に背を向けてお礼を言ってきた。

「は、早くご飯を食べに行きますよ。もうお腹ペコペコです」
「はいはい」

 俺とノアは腹ペコのマシロに続いて、個室へと向かうのであった。

 俺は個室に戻り、部屋のドアを開ける。
 すると瞬時に違和感に気づいた。

「あっ! 私の焼き魚がないです!」
「僕の骨付き肉が⋯⋯」

 そう。テーブルの上に置いた食べ物がないのだ。いや、正確には焼き魚も骨付き肉もあるが、魚も肉も骨だけになっていた。
 このことから誰かに食べられたことは明白だ。

「ノア! 匂いを嗅いでどこの誰が食べたか突き止めて下さい!」

 マシロが滅茶苦茶怒っている。こんなに怒っている姿は見たことがない。それだけ食べ物の恨みは恐ろしいということか。

「に、匂いですか」  

 そしてノアに無茶振りをしている。さすがに何か犯人の持ち物とかなければ、特定するのは無理だろう。
 だが俺の予想は大きく外れた。

「わかりました。任せて下さい」

 なんとノアはこの状況で犯人がわかるという。さすがは神獣のフェンリルと言った所か。だけどその素晴らしいフェンリルの能力を、食い逃げ犯を捕まえるために使うのは何だかシュールだ。
 そしてノアが骨だけとなった魚と肉の匂いを嗅ぐ。すると目を見開き、高々と宣言をするのだった。

「匂いの判別が出来ました! 犯人は⋯⋯この部屋の中にいます」




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