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宝物の使い道
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「これはすごい」
量は多くないけど一生遊んで暮らせる額はありそうだな。
ゴブリン達はどこからか集めてきたのだろうか。
「ともかくここに置いといてもしょうがないな」
俺は異空間に財宝を収納する。
これでいつでも財宝を取り出すことが出来る。
「あの⋯⋯」
異空間に財宝を収納し終わった時、背後からフェンリルに話しかけらる。
「あなたの名前を教えてもらってもいいですか?」
「ああ⋯⋯まだ名乗ってなかったね」
ゴブリンを倒すことを優先してしまい、大事なことを言い忘れていたし、聞き忘れていた。
「俺はユート⋯⋯君の名前も教えてもらってもいいかな」
「僕には名前がありません。自分の主と認めた人物に名前をつけてもらうのがフェンリル一族の風習でして」
マシロと似たような理由だな。天界の聖獣や神獣はそういう決まりがあるのかもしれない。
「ぜひ、ユートさんに名前をつけてほしいというか⋯⋯」
「それってこれから俺についてくるってこと?」
「⋯⋯はい。もしユートさんがよければ」
そうなると白虎とフェンリルが俺のパーティーになるのか。
とんでもないことになってきたな。
「別に構わないけど、ただ俺はこの国から出ていかなくちゃならないんだ。それでもいい?」
「は、はい! 大丈夫です!」
フェンリルは嬉しそうに頷く。
そこまで喜ばれたら、断ることは出来ないな。
黒いフェンリルの名前か⋯⋯こういうの苦手だけど俺がつけるしかないんだよな。
「名前は⋯⋯ノアでどうかな?」
「ノアですか⋯⋯はい! とても素敵な名前だと思います」
良かった。どうやら喜んでくれたようだ。
「それじゃあマシロも待っているから、外に出ようか⋯⋯ノア」
「はい」
こうして俺は新しい仲間、ノアを加えて洞窟の外で待つマシロの元へと向かうのであった。
「遅かったですね」
「悪い悪い。でも洞窟の中にいるゴブリンは全て倒したぞ」
俺達を待ち構えていたマシロが、少し不機嫌そうに軽口をたたいてきた。
「それに洞窟の奥ですごい物も見つけたぞ」
「すごい物ですか?」
俺は異空間から洞窟で見つけた金貨や宝石を見せる。
「こんな物、私には価値がありませんね。ユートの好きにして下さい」
「僕も必要ないので、ユートさんが使って下さい」
「そうなの? わかった」
確かに猫と犬がお金を持っていてもしょうがないよな。
だけどこのお金の使い道は既に決まっている。マシロとノアの許可も得られたので、好きに使わせてもらおう。
「あの⋯⋯マシロさん」
「何ですか?」
「僕もユートさんと旅をさせてもらうことになったので、よろしくお願いします」
ノアが深々と頭を下げると、マシロはため息をつく。
「やはりそうなりましたか。お世話係が決めたなら、私はとやかく言うつもりはありません。名前もいただいたのでしょう?」
「はい。ノアと言います」
「私はマシロ。仕方ないからこのパーティーの決まりごとを教えてあげるわ。まずは私には絶対服従であること」
おいおい。この駄猫は何を言い出すんだ。ノアが新入りなのをいいことに自分ルールを押しつけるつもりか?
「自分の命を大切に、仲間を裏切らない」
俺はマシロを止めようとするが、少し良いことを言ったので様子を見ることにする。
「困ったことがあったら仲間に相談する。私はあなたの事情を何となく理解しています。一人で先走らないようにして下さい」
事情? もしかしてそれはノアが地上に来たことと何か関係があるのか? 聞いてみたい気もするけど、知り合ったばかりで色々聞かれてもノアも困るだろう。
「そして一番重要なのが⋯⋯毎日新鮮な魚を私に献上することです。わかりましたか?」
「はい!」
「わかりましたかじゃないよ。ノアも最初と最後に言ったことは気にしないでいいから」
「えっ?」
珍しく良いことを言ったと思ったら、結局は自分の要望をノアに押しつけていただけだった。
「何を言ってるのですか。その二つが一番大切なことですよ。お世話係も毎日私に魚を献上するのです」
「はいはい。それより早く村に戻るとしよう。二人とも行くぞ」
「あっ? 待って下さい。まだ話しは終わっていません」
こうして俺はマシロの無茶な要望を聞きつつ、カバチ村へと戻る。
そして村に戻ると、メイちゃんやメイちゃんのお姉さん、最初に会った中年男性や大勢の村人達に出迎えられた。
「お、おお⋯⋯君か。さっきは助かったよ」
「ゴブリンは倒しました。これでもう安全ですよ」
「そうか⋯⋯ありがとう」
ゴブリンがいなくなったのに何だか皆の表情が暗いな。
何かあったのか?
「ねえねえ村長さん」
メイちゃんが俺達が最初に会った中年男性に話しかける。
村長? あの人が村長さんだったんだ。
「メイ達お引っ越ししなくちゃいけないの?」
「ああ。ユートくんのおかげで死者は出なかったけど村がこの有り様だからね」
周囲を見ると黒煙が立ち上ぼり、ゴブリン達に田畑が荒らされ、家は燃やされたことが見てわかった。
「偽勇者にお金を渡してしまったし、もう村を修復するお金もないんだ」
「そうなの⋯⋯メイ、お家から離れたくないよ」
「このままここにいても、死を待つだけだ。わかってくれ」
メイちゃんは泣き出してしまい、村人達は悲痛の表情を見せている。
「ニャ~」
「ワン」
マシロとノアが俺に向かって、何かを訴えるように鳴いて吠える。
わかってる。俺も最初からそのつもりだったから。
二人の気持ちも俺と同じでとても嬉しい。
「村長さん。村の復興にはこちらを役立てて下さい」
俺は異空間から洞窟で手に入れた財宝を取り出す。
「なっ! 金貨や宝石が⋯⋯どこから出したんだ!」
「これは洞窟の奥で発見した物です。おそらくゴブリンが集めていた物かと」
「こ、これを私達にくれると言うのか」
「はい。後ゴブリンの素材も全て村のために使って下さい」
「いや、だが⋯⋯これらの素材は全てユートくんのものだ。受け取れないよ」
村長さんは俺のことを思ってくれているのか、財宝を受け取ってくれない。実はこれは恩返しでもある。
天界から地上に降りて生活していく上で、この村にはお世話になった。感謝の意味も込めて受け取ってほしい。
「ねえ村長さん、メイ達お引っ越ししなくてもいいの?」
「そ、それは⋯⋯」
村長さんはメイちゃんの問いに困惑している。
村長さんも本当は頷きたいのだろう。だから頷けるように俺が後押しをする。
「そうだよ。メイちゃんはこれからもカバチ村に住めるんだよ」
「本当? 良かったあ。メイ、皆のことが大好きだからここにいれてとっても嬉しい」
泣き顔だったメイちゃんから笑顔が溢れる。
メイちゃんや村の皆を笑顔に出来るなら、このくらい大したことじゃない。
「ユートくん⋯⋯ありがとう。本当にありがとう」
俺は村長さんに両手を握られ、何度もお礼を言われる。
村がゴブリンに襲われて驚いたけど、最悪の事態は回避出来て良かった。
ゴブリン達も倒したし、これで安心して村を離れられる。
「それでは俺はこれで」
まだ陽は明るい。今からなら夜までに次の街へ行けるはずだ。
俺は村人達に背を向けて、北へと歩きだす。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! せめて何かお礼をさせてくれないか」
「いや、お礼なんかいいですよ」
「そういうわけにはいかない! 帝国や冒険者ギルドに今日のことを報告するよ。きっと何か褒賞がもらえると思うからそれまではこの村で⋯⋯」
げっ! それは困る。
ギアベルに村を助けたなんて知られたら、追放された奴が余計ことをするなと怒鳴られるだろうな。
怒鳴られるだけならまだいい。下手をすると皇子の権限で捕らえれるかもしれない。そうなる前に早く帝国を脱出した方がいい。
「今日俺がここにいたことは秘密にして下さい。それでは失礼します」
「あっ! ちょっと!」
「お兄ちゃんありがとう!」
俺は村長やメイちゃん、村人達の声を背に、逃げるように北へと向かうのであった。
量は多くないけど一生遊んで暮らせる額はありそうだな。
ゴブリン達はどこからか集めてきたのだろうか。
「ともかくここに置いといてもしょうがないな」
俺は異空間に財宝を収納する。
これでいつでも財宝を取り出すことが出来る。
「あの⋯⋯」
異空間に財宝を収納し終わった時、背後からフェンリルに話しかけらる。
「あなたの名前を教えてもらってもいいですか?」
「ああ⋯⋯まだ名乗ってなかったね」
ゴブリンを倒すことを優先してしまい、大事なことを言い忘れていたし、聞き忘れていた。
「俺はユート⋯⋯君の名前も教えてもらってもいいかな」
「僕には名前がありません。自分の主と認めた人物に名前をつけてもらうのがフェンリル一族の風習でして」
マシロと似たような理由だな。天界の聖獣や神獣はそういう決まりがあるのかもしれない。
「ぜひ、ユートさんに名前をつけてほしいというか⋯⋯」
「それってこれから俺についてくるってこと?」
「⋯⋯はい。もしユートさんがよければ」
そうなると白虎とフェンリルが俺のパーティーになるのか。
とんでもないことになってきたな。
「別に構わないけど、ただ俺はこの国から出ていかなくちゃならないんだ。それでもいい?」
「は、はい! 大丈夫です!」
フェンリルは嬉しそうに頷く。
そこまで喜ばれたら、断ることは出来ないな。
黒いフェンリルの名前か⋯⋯こういうの苦手だけど俺がつけるしかないんだよな。
「名前は⋯⋯ノアでどうかな?」
「ノアですか⋯⋯はい! とても素敵な名前だと思います」
良かった。どうやら喜んでくれたようだ。
「それじゃあマシロも待っているから、外に出ようか⋯⋯ノア」
「はい」
こうして俺は新しい仲間、ノアを加えて洞窟の外で待つマシロの元へと向かうのであった。
「遅かったですね」
「悪い悪い。でも洞窟の中にいるゴブリンは全て倒したぞ」
俺達を待ち構えていたマシロが、少し不機嫌そうに軽口をたたいてきた。
「それに洞窟の奥ですごい物も見つけたぞ」
「すごい物ですか?」
俺は異空間から洞窟で見つけた金貨や宝石を見せる。
「こんな物、私には価値がありませんね。ユートの好きにして下さい」
「僕も必要ないので、ユートさんが使って下さい」
「そうなの? わかった」
確かに猫と犬がお金を持っていてもしょうがないよな。
だけどこのお金の使い道は既に決まっている。マシロとノアの許可も得られたので、好きに使わせてもらおう。
「あの⋯⋯マシロさん」
「何ですか?」
「僕もユートさんと旅をさせてもらうことになったので、よろしくお願いします」
ノアが深々と頭を下げると、マシロはため息をつく。
「やはりそうなりましたか。お世話係が決めたなら、私はとやかく言うつもりはありません。名前もいただいたのでしょう?」
「はい。ノアと言います」
「私はマシロ。仕方ないからこのパーティーの決まりごとを教えてあげるわ。まずは私には絶対服従であること」
おいおい。この駄猫は何を言い出すんだ。ノアが新入りなのをいいことに自分ルールを押しつけるつもりか?
「自分の命を大切に、仲間を裏切らない」
俺はマシロを止めようとするが、少し良いことを言ったので様子を見ることにする。
「困ったことがあったら仲間に相談する。私はあなたの事情を何となく理解しています。一人で先走らないようにして下さい」
事情? もしかしてそれはノアが地上に来たことと何か関係があるのか? 聞いてみたい気もするけど、知り合ったばかりで色々聞かれてもノアも困るだろう。
「そして一番重要なのが⋯⋯毎日新鮮な魚を私に献上することです。わかりましたか?」
「はい!」
「わかりましたかじゃないよ。ノアも最初と最後に言ったことは気にしないでいいから」
「えっ?」
珍しく良いことを言ったと思ったら、結局は自分の要望をノアに押しつけていただけだった。
「何を言ってるのですか。その二つが一番大切なことですよ。お世話係も毎日私に魚を献上するのです」
「はいはい。それより早く村に戻るとしよう。二人とも行くぞ」
「あっ? 待って下さい。まだ話しは終わっていません」
こうして俺はマシロの無茶な要望を聞きつつ、カバチ村へと戻る。
そして村に戻ると、メイちゃんやメイちゃんのお姉さん、最初に会った中年男性や大勢の村人達に出迎えられた。
「お、おお⋯⋯君か。さっきは助かったよ」
「ゴブリンは倒しました。これでもう安全ですよ」
「そうか⋯⋯ありがとう」
ゴブリンがいなくなったのに何だか皆の表情が暗いな。
何かあったのか?
「ねえねえ村長さん」
メイちゃんが俺達が最初に会った中年男性に話しかける。
村長? あの人が村長さんだったんだ。
「メイ達お引っ越ししなくちゃいけないの?」
「ああ。ユートくんのおかげで死者は出なかったけど村がこの有り様だからね」
周囲を見ると黒煙が立ち上ぼり、ゴブリン達に田畑が荒らされ、家は燃やされたことが見てわかった。
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「そうなの⋯⋯メイ、お家から離れたくないよ」
「このままここにいても、死を待つだけだ。わかってくれ」
メイちゃんは泣き出してしまい、村人達は悲痛の表情を見せている。
「ニャ~」
「ワン」
マシロとノアが俺に向かって、何かを訴えるように鳴いて吠える。
わかってる。俺も最初からそのつもりだったから。
二人の気持ちも俺と同じでとても嬉しい。
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俺は異空間から洞窟で手に入れた財宝を取り出す。
「なっ! 金貨や宝石が⋯⋯どこから出したんだ!」
「これは洞窟の奥で発見した物です。おそらくゴブリンが集めていた物かと」
「こ、これを私達にくれると言うのか」
「はい。後ゴブリンの素材も全て村のために使って下さい」
「いや、だが⋯⋯これらの素材は全てユートくんのものだ。受け取れないよ」
村長さんは俺のことを思ってくれているのか、財宝を受け取ってくれない。実はこれは恩返しでもある。
天界から地上に降りて生活していく上で、この村にはお世話になった。感謝の意味も込めて受け取ってほしい。
「ねえ村長さん、メイ達お引っ越ししなくてもいいの?」
「そ、それは⋯⋯」
村長さんはメイちゃんの問いに困惑している。
村長さんも本当は頷きたいのだろう。だから頷けるように俺が後押しをする。
「そうだよ。メイちゃんはこれからもカバチ村に住めるんだよ」
「本当? 良かったあ。メイ、皆のことが大好きだからここにいれてとっても嬉しい」
泣き顔だったメイちゃんから笑顔が溢れる。
メイちゃんや村の皆を笑顔に出来るなら、このくらい大したことじゃない。
「ユートくん⋯⋯ありがとう。本当にありがとう」
俺は村長さんに両手を握られ、何度もお礼を言われる。
村がゴブリンに襲われて驚いたけど、最悪の事態は回避出来て良かった。
ゴブリン達も倒したし、これで安心して村を離れられる。
「それでは俺はこれで」
まだ陽は明るい。今からなら夜までに次の街へ行けるはずだ。
俺は村人達に背を向けて、北へと歩きだす。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! せめて何かお礼をさせてくれないか」
「いや、お礼なんかいいですよ」
「そういうわけにはいかない! 帝国や冒険者ギルドに今日のことを報告するよ。きっと何か褒賞がもらえると思うからそれまではこの村で⋯⋯」
げっ! それは困る。
ギアベルに村を助けたなんて知られたら、追放された奴が余計ことをするなと怒鳴られるだろうな。
怒鳴られるだけならまだいい。下手をすると皇子の権限で捕らえれるかもしれない。そうなる前に早く帝国を脱出した方がいい。
「今日俺がここにいたことは秘密にして下さい。それでは失礼します」
「あっ! ちょっと!」
「お兄ちゃんありがとう!」
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