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9話 早すぎる再会 その1

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 驚いた……婚約破棄をされたその日に、デミル公爵がサルデリア家の屋敷を訪れるなんて。もしかして、謝罪に来たとか? あの態度を見るに、絶対そんなことをしそうには見えないけど……。


 お父様とお母さまは現在は不在。やって来たのはデミル公爵と……これも驚きだけれど、ドロシー・ウィーン侯爵令嬢だった。私と姉さまは二人をもてなし、応接室に案内した。ジスパ王子殿下については、別のところで待機してもらっている。


「ようこそいらっしゃいました、デミル・ウィリー公爵、ドロシー・ウィーン侯爵令嬢」


 シヴィル姉さまは儀礼的ではあるけれど、丁寧な挨拶を二人にした。私はとてもそんなことは出来なかったので、姉さまに合わせて軽く頭を下げる程度に留める。


 どういう用件かは分からないけれど、デミル公爵とは実に早い再会だった。


「ふむ、出迎えに関してはとりあえず、礼を言っておこう」

「ありがとうございます、デミル公爵」


「それで……ご用件の方をお伺いしてもよろしいですか?」


 私に気を遣ってくれているのか、シヴィル姉さまは早速、本題に入った。姉さまも心情的には早く帰ってもらいたいのかもしれない。


「ふむ……用件だがな……」

「用件はあなた、よ」

「ドロシー様? 私ですか……?」


 意外にも口を開いたのはドロシー侯爵令嬢だった。私とデミル公爵は今日、婚約破棄になったばかりなので、二人が付き合っていることはないはずだけど……。もしかしたら、以前から浮気をしていたのかもしれないわね。当たり前のようにデミル公爵の隣に座っているし。


 そして、明らかに私に敵意を向けていた。


「あなたが一体、どういう人物かを見たくてデミル公爵にお願いして、連れて来てもらったの」

「えっ、ということは……」

「そうだ、用件があるのはむしろ、ドロシーの方になるな」


 なるほど……婚約破棄したばかりのデミル公爵訪れた理由も、これではっきりしたわね。同時に、このドロシーという人はとても面倒な性格をしていることも。


 私を見る目つきは嫉妬の炎だったから……。
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