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36話 継承権 その1

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 ひょんなことから、ロード第二王子と遭遇した私とハルト様……。ロード王子とはあの後、すぐに別れることになった。なんでも、彼の護衛が大急ぎで呼び出しに来たから……。


 ハルト様だけでなく、ロード第二王子にも当然のように護衛は付いているのよね。なんだか、無駄な経費な気もするけれど……ああ、ダメね、こんなこと思ってはいけないわ。でも、ハルト様と血が繋がっているのは信じられないけれど……。


「シエル、君が考えていることは大体わかる……しかし、あれでも私の血を分けた兄弟なんだ。その……王家に失望しないでもらえるだろうか……?」


 あ、私の表情から考えを読まれてしまったみたい。狼狽えながら話しているハルト様がなんだか可愛らしかった。本来なら、不敬罪になりかねない発言だけれど、婚約者だし多少は許されるわよね?


「ふふ、今のハルト様なんだか可愛いです」

「おいおい……勘弁してほしいな」

「ふふふ」

「ははは……」


 ハルト様と私はお互いの顔を見つめ合いながら、笑っていた。遠いところからしか見ないけれど、現在の国王陛下が優秀なことは知っている。ロード第二王子にはがっかりしたけれど、ハルト様のことも知っている私としては、それだけで、王家の人々に疑念を抱くわけがなかった。

 あっ、そういえば第三王子のリクイド様もいらっしゃるわよね、確か。この際だから、私はハルト様に聞いてみることにした。


「あの、ハルト様。質問をしても良いでしょうか?」

「どうした、シエル?」


 ハルト様は優しい表情で、私の質問に応えてくれるみたい。


「第三王子のリクイド様もいらっしゃいますよね? あの方は王位継承権に含まれなかったんですか?」

「ああ、リクイドか……。あいつはシエルよりも歳下だからな」


 なるほど、だから王位継承権には参加してないってことなのね。


「しかし、私が言うのもなんだが、リクイドはロードに比べると非常に良く出来た弟だ。もしも、カニエル公爵が立てる人物がリクイドだったならと思うと……」


「……」


 なんだか、私は怖気が走ってしまった……リクイド様がカニエル公爵の切り札だったら、王太子であるハルト様も厳しいのかしら……? あのカニエル公爵がその程度の考えに至らないとは考え辛いけれど……。今までのカニエル公爵を見る限り、本気で貴族連合を発足しようとしているみたいだし……。


 私は敢えて口にはしなかったけれど、一抹の不安が心の中を駆け巡ったことは事実となっていた……。
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