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35話 ロード第二王子 その2

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「冗談は顔だけにしてくれ、だと? 兄上……偉そうに言うじゃないか……」


 明らかにロード様の口調は変わっているわね……。この程度で感情を露わにする人に頂点に立ってほしくないというのは分かる気がするけど。というより、ハルト様は相手を怒らせるのが得意よね……? ハルト様って意外といじめっ子な気質があるのかも……。


「偉そうか……自分の意志を持っていない人間に言われること程、滑稽なものはない。本当にお前とは血のつながりがあるのか、怪しくなってくるよ……父上は橋の下でお前を拾ったのではないか?」

「……!!」


 止むことのないハルト様からの言葉の応酬……ロード様はさらに眉間にしわを寄せて行った。


「兄上……本当に言ってくれるじゃないか。まあ、そういう顔をしていられるのも今の内さ。カニエルの奴と組んで、俺が次の国王になってやるからさ。楽しみにしておくといい」

「……?」


 どういうことだろう? ロード様の表情からは悔し紛れの言葉のようにも聞こえるこれど……。王太子にまでなられたハルト様を出し抜いて、自らが国王になる……? ハルト様の護衛の層が厚いことはロード様も重々承知のはずだし、武力的なことではないわよね? そもそもハルト様を襲ったりなんかしたら、打ち首にあってもおかしくないし……。

「ロード、冗談にも程があるぞ? 仮にも王族の人間がそういうことを言うな」

「冗談ではないさ、兄上。この国の法律にはついては詳しいはずだろう? 王太子を失脚させる方法もわかっているはずだ」

「……」


 えっ? そんなことが出来るの……? 私はどういう方法か見当がつかなかった。


「王太子に著しい素行不良があった場合などは、第二王子である俺が次期国王に選ばれる可能性はある。今回の件で言えば、一介の伯爵令嬢を婚約者に選んだことだな。下手をすれば、貴族社会を根底から覆すことになりかねない」

「……」


 それって物は言いようってやつなんじゃないかしら……? カニエル公爵の入れ知恵かしら? ああ、だから貴族連合の発足に繋がるって寸法なのね……。


「ロード……頼むから、せめて自分の意志を見せてくれ……」


 ハルト様はロード様に心底がっかりされているようだった。ロード様の態度にがっかりなのは分かるけど、彼が傀儡とはいえ敵側に付くのは不味い気がする……。私はそんな不安を覚えていた。


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