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30話 反省しない者達 その1

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「偶には息抜きとして外出をしないと……やっぱりね」

「引き籠ってても身体に悪いですもん」


 私が見たところ、二人からは反省の色が感じられない。事実はどうか知らないけれど、おそらくはこの舞踏会への出席くらいは謹慎の範囲内という考えなんでしょうね……。ハルト様もあまりのことに声が出なくなったのか、ひたすら頭を掻いていらっしゃった……。


「……」

「……あれ?」


 私はその時、メリアーナ夫人と目があった……私は最初、親バカなあの人が連れて来たんじゃないかって思っていたけれど……。メリアーナ夫人は私と目が合うなり、深々と一礼してみせる。



「……」


 息子を連れて来てしまって申し訳ない……なんだか、そういう風に言っているように感じられた。……まあ、確かに……あのプライドの塊のような夫人がハルト様と先日約束したばかりで、いきなりそれを反故にするというのは不自然だけれど……。

 もしかしたら、今回の件はメリアーナ夫人は関係ないのかしら……?


「ハルト王太子殿下……私達は王太子の罰を忠実に守っていますよ?」


 勝ち誇ったようなシグマの態度と言葉に、ハルト様は顔をしかめていた。正直な話、ハルト様にこんな顔をさせるのはよっぽどだと思う。だって、ハルト様って基本的にはとてもお優しいし……ああ、なんだか顔が赤くなってきたわ。


 私はメルレーンに視線を合わせてみた。彼女も、状況は把握できていないようで、私に軽く会釈をしてくる。どういうこと? メリアーナ夫人以外でこんなことが出来るのは……シグマやアンナの意志とは無関係に……。


「なるほど……カニエル公爵か……」

「ハルト様……」


 私とハルト様はほぼ同じタイミングで、今回の犯人を割り当てていた。確かに、カニエル公爵の差し金であれば、納得は行くというもの……前の話し合いの時でも、カニエル公爵は終始、睨みを利かせていたんだし。公爵という立場を利用して、メリアーナ夫人たちを懐柔しているのかしら?


 そうなると、カニエル公爵の目的は何……?


「ふぉふぉふぉ、これはハルト王太子殿下……それに、シエル令嬢まで……」


 タイミングを見計らったように、カニエル公爵が私とハルト様に近付いて来ていた。びっくりするくらいの笑顔で、逆に怪しさすら吹き飛んでしまいそうな……いえ、怪しさは満点なんだけれど……。

 でも、このカニエル公爵の態度でハッキリしたこともあるわね。シグマの母親である、メリアーナ夫人は全く話しの通らない人ではなかったということ。カニエル公爵に上手く利用されていたってことかしら? そうなると、彼の計画は当初から言われていた貴族連合の発足……?
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