上 下
27 / 46

27話 舞踏会への出席 その3

しおりを挟む
 ハルト様と臨んだ舞踏会への出席……私は緊張しながら、その舞台に立ったわけだけれど。なんだか、妙に視線を感じるわね。ドレスとかはメルレーンによって新調してもらったけど、特別露出が多いとかそういうのはない。


 でも、なんというか……男性からの視線以外にも、女性陣の視線も強く感じる。これは……ハルト様の隣を歩くのが、たかだか伯爵令嬢だからっていう妬み。


「……なんなの、あの人? ハルト王子殿下の隣を歩いているわよ?」

「知らないの? 彼女がハルト様の婚約者の……」

「え~~? だってあの人って、私たちと同じ伯爵令嬢でしょ? なんで彼女だけ……」


 明らかに歓迎されていないって言うか……ここまで敵意を向けられるのも久しぶりね。でもでも、ハルト様の為にも、こんなことくらいで動揺するわけにはいかないわ。

 私は軽く頬を叩いて、自らを鼓舞してみせた。それから、私はハルト様を見た。


「シエル、あまり気にすることはないさ。彼らが直接、君に危害を加えることは不可能だし」

「え、ええ……それは理解しているのですが……」


 気配は感じないけれど、メルレーンを始めとした何人かの護衛の皆さんが待機しているはず。多分、その護衛対象には私も含まれているのよね。えへへ、ちょっとだけ嬉しいかも。


「それから……君を見ている視線は、必ずしも反感だけではないさ」


「……」



 主に男性からの視線は、確かに女性陣のそれとは異なっていた。純粋に私の格好などを誉めてくれている様子が伺える。


「彼女がハルト王太子殿下の……ふむ、身分はともかく、外見的には釣りあっておりますな」

「なかなかの美貌だ。あの美貌だけでも爵位を上げてもいいかもしれん」

「なにをおっしゃいますか、グノー公爵閣下。ふははははは」


 美貌だけで爵位上げてくれるって本当に? なんだか、ますます自信に繋がるっていうか……今のは確か、グノー公爵様よね。流石に舞踏会に出席している面子のレベルが伺えるわ。


「シエルのおかげで、グノー公爵は味方に付けられそうだ。メルレーンさん、手筈を頼む」

「畏まりました、王太子殿下」


「えっ?」


 そう言って、どこからともなく現れたメルレーンは、早速グノー公爵の元へと移動していた。もしかして説得して懐柔する気なのかしら……? メルレーンってば、凄過ぎない? というより、ハルト様の護衛の人たちが凄いのよね。多分、メルレーンだけが特別というわけじゃないと思うし。


「さて、私達は舞踏会を楽しもうか。シエル、肩の力は抜けて来たかい?」

「は、はい……少し抜けてきました……」

「ならよかった」


 まだまだ不安な部分はあるけれど、確かに肩の力はさっきよりも抜けているわね。私はハルト様に言われた役目を思い出す。超然としていれば良い……その言葉を胸に私は舞踏会を楽しもうと誓った。
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

もう、振り回されるのは終わりです!

こもろう
恋愛
新しい恋人のフランシスを連れた婚約者のエルドレッド王子から、婚約破棄を大々的に告げられる侯爵令嬢のアリシア。 「もう、振り回されるのはうんざりです!」 そう叫んでしまったアリシアの真実とその後の話。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

【完結】貧乏男爵家のガリ勉令嬢が幸せをつかむまでー平凡顔ですが勉強だけは負けませんー

華抹茶
恋愛
家は貧乏な男爵家の長女、ベティーナ・アルタマンは可愛い弟の学費を捻出するために良いところへ就職しなければならない。そのためには学院をいい成績で卒業することが必須なため、がむしゃらに勉強へ打ち込んできた。 学院始まって最初の試験で1位を取ったことで、入学試験1位、今回の試験で2位へ落ちたコンラート・ブランディスと関わるようになる。容姿端麗、頭脳明晰、家は上級貴族の侯爵家。ご令嬢がこぞって結婚したい大人気のモテ男。そんな人からライバル宣言されてしまって―― ライバルから恋心を抱いていく2人のお話です。12話で完結。(12月31日に完結します) ※以前投稿した、長文短編を加筆修正し分割した物になります。 ※R5.2月 コンラート視点の話を追加しました。(全5話)

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

処理中です...